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第二章 混沌竜の契約者
小狼
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5年前の春のある日の事である。
「やっぱり朝は気持ちいいな~」
学校が休みのこの日、僕は朝早くから散歩をしていた。
この頃はまだ朝の作業がかなり少ないので手早く終わらせて、午前中は村全体を散歩することが日課になっていた。
そして今日は何となく村の南側からまわろうと思い、背の低い柵に沿って歩いていた。
そんな時、何処かから何かが聞こえた気がした。
「何だろう?」
そして辺りを少し見渡して何もない事を確認した僕は、再び散歩を再開しようとした。
「クゥーン……」
「え、何処?」
今度は何かの鳴き声だとわかる声が聞こえ、僕は注意深く耳を澄ましながら辺りを見渡して、少し離れた所に何か見つけて駆け寄った。
「え、何これ……」
その柵の向こう側にあったのは、白い毛並みが真っ赤な鮮血で染められた小狼だった。
「クゥーン……」
その弱々しい声で鳴く小狼に着く血は明らかに狩りなどによる返り血ではなく、その小狼から流れた血であった。
「え、ど、どうしたらいいの!?」
僕はその有りえない光景に混乱した。
まずここに子供とはいえ狼が居る事実、その小狼が大怪我を負っていること。
そして、助けようにも南の森の動物には手を出すな、という村の掟。
その村の掟は攻撃することは勿論、また助ける事もどんな事態になるかわからないため禁止されている。
「助けてあげたいけど、でも……」
まだたった10歳の僕がどうやって助けるのか。
「クゥーン」
どうすべきか悩んでいる僕の耳に小狼の鳴き声が聞こえる。
「それに、南の森の動物は手を出したらダメって……」
「クゥーン……」
「それに、もし助けても誰かにバレたら……」
「ク、クゥーン……」
そう考え……僕は自分の両頬を思いっきり叩く。
「そんなこと、後で考えたらいい!」
今、目の前には明らかに重症の小狼が居て、気付いてるのは僕だけ。
他の人に教えたら殺されるかも知れないから、助けられるのも僕だけ。
こうして悩んでいる間にも明らかに弱っているのだ、早くしないと手遅れになる。
「でも、一体どうしたらいいんだろう」
助ける、そう決めても助ける方法が無ければ結局助けられない。
「あ、あそこなら何とか!」
そして僕はあることを思い出し、小狼を怪我してる部分に気を付けて抱き上げたら急いで西に向けて走り出した。
村の西の方に走る僕は本来ならあそこから走って1時間はかかるはずだったが、この時は無我夢中で走っていて何故か20分ほどで着くことが出来た。
そこにはコルク川と言う川が流れている場所で、その周囲にはたくさんの草が生えていた。
「えっと、薬草はどれだったかな……」
その山程の草の中から怪我に使う薬草を探し出す。
薬草、正式には『生命草』と呼ばれる草で、その草は葉の中にたくさんの水を溜め込んでいて、その水の中に魔力を流すと治癒を促す薬効成分が含まれており、本来は乾燥させた生命草を細かい粉にして成分を濃縮させてから必要最低限の水に溶かして魔力を流す事で『ポーション』と呼ばれる薬にするのだ。
しかし、今から薬草を摘んで乾燥させて粉にしていたら小狼が助からない。
僕は村でこれまで見てきた薬草を思い出し、たくさんの薬草を見つけてその中から幾つか摘んで小狼の元に戻る。
「ちょっと染みるけど我慢してね」
薬草の葉は摘んだ断面から中の水分を絞りだす事が出来る。
なのでその断面を小狼の怪我に向け、葉を雑巾を絞るようにして薬効を含んだ水をかける。
「キャウウゥゥン」
やはり傷が深いせいでかなりの痛みがしたようだ。
「確か魔力を流すのはこう……」
ただそんなことを気にしている余裕はない。
薬草そのものだけでは効果を発揮しないため、僕は自分のとても少ない魔力を流して治癒を開始する。
「う……頭がクラクラする……」
魔力とは活動するためのエネルギー源である。
魔力が減るということは自分の活力そのものを使うのと同じ。
「でも、まだまだ!」
このまま休みたいと思う自分に活を入れ、再び薬草を摘んで小狼にかけて魔力を流して治癒をする。
僕はこれをひたすらに続けた。
魔力を使えば使う程激しい疲労に眠気が襲い掛かる。
僕はそれを無視してひたすらに治癒を続ける。
治癒を始めてからどれくらい経ったのか、空を見ると太陽が丁度天辺に達していた。
「お腹空いたよね、魚取ってくるよ」
魔力の使い過ぎで今にも倒れそうになりながら、小狼のために川に行く。
そして僕は長ズボンを履いていたので脱いで先っぽを括る。
そのズボンを川の中に沈めて腰の所が大きく開くように石を積む。
「ほら、魚さんこっちだよ」
その後僕は川に入って魚をズボンに誘導し、1時間掛けてようやく1匹を入れることに成功した。
「よし」
そしてすぐにズボンを川から引き上げて小狼の所に持って行く。
「ほら、これ食べて」
僕自身もたくさん動いて魔力を限界まで使ってお腹が空いているけど、それより治癒をした小狼はたくさん体力を使っているはずだ。
薬草を使った治癒は体の再生を早めるためにエネルギー消費が激しく、ポーションを飲む時はちゃんとご飯も一緒に摂らないといけないのだ。
「クーン」
小狼は心配そうに僕の方を見たけどすぐに魚を食べ始めた。
この時必死に治癒をしていて傷の具合を確認していなかったのだが、小狼が立ち上がってご飯を食べはじめたので確認すると、まだ怪我はあったものの出血は止まり、またかなり浅くなっていたためもう治癒をする必要は無さそうだった。
「良かった、助かった……」
僕はそこでようやく安心し、緊張が切れたことで川近くの草原の中ぐっすりと眠ってしまった。
「やっぱり朝は気持ちいいな~」
学校が休みのこの日、僕は朝早くから散歩をしていた。
この頃はまだ朝の作業がかなり少ないので手早く終わらせて、午前中は村全体を散歩することが日課になっていた。
そして今日は何となく村の南側からまわろうと思い、背の低い柵に沿って歩いていた。
そんな時、何処かから何かが聞こえた気がした。
「何だろう?」
そして辺りを少し見渡して何もない事を確認した僕は、再び散歩を再開しようとした。
「クゥーン……」
「え、何処?」
今度は何かの鳴き声だとわかる声が聞こえ、僕は注意深く耳を澄ましながら辺りを見渡して、少し離れた所に何か見つけて駆け寄った。
「え、何これ……」
その柵の向こう側にあったのは、白い毛並みが真っ赤な鮮血で染められた小狼だった。
「クゥーン……」
その弱々しい声で鳴く小狼に着く血は明らかに狩りなどによる返り血ではなく、その小狼から流れた血であった。
「え、ど、どうしたらいいの!?」
僕はその有りえない光景に混乱した。
まずここに子供とはいえ狼が居る事実、その小狼が大怪我を負っていること。
そして、助けようにも南の森の動物には手を出すな、という村の掟。
その村の掟は攻撃することは勿論、また助ける事もどんな事態になるかわからないため禁止されている。
「助けてあげたいけど、でも……」
まだたった10歳の僕がどうやって助けるのか。
「クゥーン」
どうすべきか悩んでいる僕の耳に小狼の鳴き声が聞こえる。
「それに、南の森の動物は手を出したらダメって……」
「クゥーン……」
「それに、もし助けても誰かにバレたら……」
「ク、クゥーン……」
そう考え……僕は自分の両頬を思いっきり叩く。
「そんなこと、後で考えたらいい!」
今、目の前には明らかに重症の小狼が居て、気付いてるのは僕だけ。
他の人に教えたら殺されるかも知れないから、助けられるのも僕だけ。
こうして悩んでいる間にも明らかに弱っているのだ、早くしないと手遅れになる。
「でも、一体どうしたらいいんだろう」
助ける、そう決めても助ける方法が無ければ結局助けられない。
「あ、あそこなら何とか!」
そして僕はあることを思い出し、小狼を怪我してる部分に気を付けて抱き上げたら急いで西に向けて走り出した。
村の西の方に走る僕は本来ならあそこから走って1時間はかかるはずだったが、この時は無我夢中で走っていて何故か20分ほどで着くことが出来た。
そこにはコルク川と言う川が流れている場所で、その周囲にはたくさんの草が生えていた。
「えっと、薬草はどれだったかな……」
その山程の草の中から怪我に使う薬草を探し出す。
薬草、正式には『生命草』と呼ばれる草で、その草は葉の中にたくさんの水を溜め込んでいて、その水の中に魔力を流すと治癒を促す薬効成分が含まれており、本来は乾燥させた生命草を細かい粉にして成分を濃縮させてから必要最低限の水に溶かして魔力を流す事で『ポーション』と呼ばれる薬にするのだ。
しかし、今から薬草を摘んで乾燥させて粉にしていたら小狼が助からない。
僕は村でこれまで見てきた薬草を思い出し、たくさんの薬草を見つけてその中から幾つか摘んで小狼の元に戻る。
「ちょっと染みるけど我慢してね」
薬草の葉は摘んだ断面から中の水分を絞りだす事が出来る。
なのでその断面を小狼の怪我に向け、葉を雑巾を絞るようにして薬効を含んだ水をかける。
「キャウウゥゥン」
やはり傷が深いせいでかなりの痛みがしたようだ。
「確か魔力を流すのはこう……」
ただそんなことを気にしている余裕はない。
薬草そのものだけでは効果を発揮しないため、僕は自分のとても少ない魔力を流して治癒を開始する。
「う……頭がクラクラする……」
魔力とは活動するためのエネルギー源である。
魔力が減るということは自分の活力そのものを使うのと同じ。
「でも、まだまだ!」
このまま休みたいと思う自分に活を入れ、再び薬草を摘んで小狼にかけて魔力を流して治癒をする。
僕はこれをひたすらに続けた。
魔力を使えば使う程激しい疲労に眠気が襲い掛かる。
僕はそれを無視してひたすらに治癒を続ける。
治癒を始めてからどれくらい経ったのか、空を見ると太陽が丁度天辺に達していた。
「お腹空いたよね、魚取ってくるよ」
魔力の使い過ぎで今にも倒れそうになりながら、小狼のために川に行く。
そして僕は長ズボンを履いていたので脱いで先っぽを括る。
そのズボンを川の中に沈めて腰の所が大きく開くように石を積む。
「ほら、魚さんこっちだよ」
その後僕は川に入って魚をズボンに誘導し、1時間掛けてようやく1匹を入れることに成功した。
「よし」
そしてすぐにズボンを川から引き上げて小狼の所に持って行く。
「ほら、これ食べて」
僕自身もたくさん動いて魔力を限界まで使ってお腹が空いているけど、それより治癒をした小狼はたくさん体力を使っているはずだ。
薬草を使った治癒は体の再生を早めるためにエネルギー消費が激しく、ポーションを飲む時はちゃんとご飯も一緒に摂らないといけないのだ。
「クーン」
小狼は心配そうに僕の方を見たけどすぐに魚を食べ始めた。
この時必死に治癒をしていて傷の具合を確認していなかったのだが、小狼が立ち上がってご飯を食べはじめたので確認すると、まだ怪我はあったものの出血は止まり、またかなり浅くなっていたためもう治癒をする必要は無さそうだった。
「良かった、助かった……」
僕はそこでようやく安心し、緊張が切れたことで川近くの草原の中ぐっすりと眠ってしまった。
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