農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト

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第二章 混沌竜の契約者

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「君にはこれが扱いやすいと思うよ。長さ的にも太さ的にも、これくらいの方が取り回しがしやすいはず」
「あ、確かに他よりも使いやすいかも!」
「良かった。武器にはその人の体格と手の大きさに指の長さ、動きの癖なんかで持ちやすさが変わるんだ」

 僕は今、イツキさんに案内された杖屋でフールさんにどういう杖が合うのか教えてもらっていた。
 コンがイツキさんと話をする時に先に入って現在3分後である。
 彼は鍛冶屋なので杖については専門外ではあるが、どういう物が取り扱いしやすいかについてはかなりの知識があるらしい。

「店主さん凄く腕がいいですね。無骨に見えますけど、どの辺りを持ってもしっくり来るように作られてて、一般向けに誰でも使いやすい型で長さや細さも違うのを取り揃えてるのは凄いです」
 フールさんは店に置いてある杖を1つ1つ見ながら言う。
「ほほう、若いようじゃがちゃんと見る目はあるようじゃな」
 店主さん、先程店先で騒ぐなと言ったお爺さんが真剣な表情でフールさんを見る。

「それに他の杖屋では手の大きさ別に木の膨らみを変えて作られている物もあるのはなかなか見ること無いですね。オーダーメイドならその辺りを考慮するのは当然ですが、そうでない方の為に作っているのは手間が掛かるでしょう」
「ここに来る者のほとんどが何が違うのかとよく聞かれるのじゃが、よく見ておるな」
「それに先と根本の重心の違うのまで揃えてて、下手な杖屋ならこの既製品がオーダーメイドの仕上がりですよね。木材もかなり良質な物を使ってますし、手間賃も考えると3倍くらいの値を付けても十分過ぎる程の価値があるのではないでしょうか?」
 フールさんが商品を見てそんな評価をしていると、店主さんは凄く笑顔になる。

「ほうほうほうほう、その年でそこまで違いがわかるとは!君は名をなんと言うのだ?」
「フールです」
「フール君か、覚えておこうかの。儂は別に金儲けの為にこの店をやっておる訳ではない。それに金儲けの為なら王都でやるより冒険者の街でやる方が稼げるだろうが、儂はお金は有り余っておるから趣味の範囲でこの店をやっておるのだ」
「そうでしたか」
 満足気に笑う店主さんに尊敬の眼差しを向けるフールさん。
 僕には違いとかがよくわからないけど、そこには同じ物作りをする者同士で通じ合う物があるのだろう。

「それで、今回はそこの少年の杖を買いに来たので良いのかの?」
「あ、はいそうです」
 そう言うとお爺さんは僕とフールさんを交互に見て頷く。



「フール君、儂は君を気に入ったぞ。この子専用の杖を作ってやるから作業風景を見ないかい?」



「え、その、僕そんなオーダーメイドするお金なんて」
 先程王様から渡された銀貨10枚があるけど、元々買う予定なのはもっと安い既製品だったのだ。
「儂は商売の為に営業はしとらん。儂が勝手に作るのだ、金は取らん」
「え、でもそれって……」
「金など気にするな。儂は彼に作業を見せるためにやるからな」
 そう店主さんに言われ、更に作業が見れると目を輝かせているフールさんを見て、僕は頭を下げる。
「あの、それじゃあよろしくお願いします」
「任せとけ」

「ああ、ならば先に要望を言っても構わぬか?」
 と、突然後ろから声が聞こえて振り返る。
「あ、コン!」
 いつの間に戻ったんだろうと思いつつも、要望って何だろうと首を捻る。
「勿論構わぬ。言ってみぃ」



「ならば杖は魔石を組み込んだ物にしてもらいたい。魔石はここにある物を使ってほしい。また可能であれば仕込み刀をお願いしたい」



 コンはそう言うと、闇魔法から6色に輝く魔石1つを取り出した。
「ほう、かなり強力な魔石じゃな。それに仕込み刀とはまた珍しい、何故だ」
「杖で近接戦は危険なのでな、あれば役に立つだろう。刃渡りは短くて構わぬ。獲物を仕留めるのに一々魔法を使っていては魔力を消費する必要も無くなる上、別持ちの剣に持ち替える手間も減る」
「ほうほう、では機構は?」
「魔力を流して先から飛び出す形が良かろう。保持用の魔力はその魔石から取り込めば良い」
「再補填出来るほど強力な魔石か。よかろう、では早速始めるぞ」

 そう言ってお爺さんは魔石を受け取るとお店のカウンターに置き、透明なプルプルと震える物体を召喚した。

「これは、スライムですか?」
 フールさんが召喚された物……魔物の1種であるスライムを見て驚く。
「そうだ。スームよ、型を取りなさい」
 その透明なスライム、スームは店主さんにそう言われると急に体が人と同じくらいに大きくなった。
「君、ちょっと息を止めて楽にしてくれ。すぐに終わる」
 店主さんに言われるまま息を止めると、大きくなったスライムが僕を包み込んだ。
 驚いて目を閉じてジッとしていると、プルプルしたスライムが体中を弄ってから離れていった。
「スームよ、型を」

 その店主さんの言葉に反応したスライムはその形を変えて、僕と全く同じ形に変化した。

「これは……?」
 フールさんは不思議そうにそのスライムを触る。
「体の模型じゃの。全身の型を取ったのでな、これを使って細々とした調整をするのだ」
「スライムってこんな器用なことも出来たんですね……」
 感心した様子のフールさんに、店主さんは自慢気に言う。
「この子は『ピュアスライム』と言う珍しい種でな、ただ純粋な魔力が形を持った者だからそう数多くない。純粋な魔力故に様々な物に影響されるのでな、このように全身を包んだあとその者の形を再現することが出来る」
「ああ、これを本人に見立てて武器の調整をするって事ですか?」
「そういうことだ」
 店主さんはそう言うとフールさんに店の奥の作業場に移動するよう促す。



「では早速作業に取り掛かるが短くとも3日は掛かるのでな、また都合のいい日に来てくれ。最大で3ヶ月は置いておくが、来なければ普通に店先で販売するからの」
「わかりました、お願いします」
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