農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト

文字の大きさ
64 / 125
第三章 農民が動かす物語

油の商売

しおりを挟む
「え、ええ!?え、でも払う必要って無いんじゃ……」
 あまりにも予想外なその内容に僕は慌てる。
「そんな遠慮せんでいい!俺らはお前が一割でいいという優しさに感動して決めたことなんだ!」
「え、でもそれは……」
 単なるドジで出来たから申し訳ない気持ちがあったから何だけど。



「それに君も知っているだろう、油の不法投棄で滅んだ国の事を」



 それは聞いたことがある。
 というより大陸中で油の不法投棄を決して行わないよう戒めとして広まっているものなので、僕もソフィも学校で習った事である。



 それは今から300年程前の話
 今は人国のエイメ帝国とセイクルーネ王国という2国に取り込まれた国、クリート王国で起きた事件だ。

 油は人国に限らずどの国でも適切な処理をしてから廃棄しなければならないとなっている。
 主に使用済み油を回収して廃棄するのは商人の仕事であり、また適切な処理をするのは魔法協会の人である。

 それはクリート王国の都市で起った。

 大きくまた水捌けの悪いクリート王国の都市の地下には、都市全体に張り巡らされた地下水道があった。
 クリート王国では揚げ物が人気であり、どの家でも週に一度は揚げ物をする程であった。
 そんな国の油を処理する商会は1つで、競争相手が居なかった。
 そのため商会は国から定められた油処理の料金を吊り上げて儲けようと企んだ。

 結果、揚げ物を止められない都市の人達は処理料金が高くなった油を地下に不法投棄するようになった。

 これだけならただ水が汚れてしまうだけで済むのだが、ここは魔力のある世界。
 不法投棄された油は周囲にある魔力を取り込んで『ジェル』と呼ばれる魔物になる。
 有名なのは雨水に魔力が取り込まれて出来る『アクアジェル』という魔物で、その討伐難易度はかなり低い。
 油が魔力を取り込んで出来る魔物は『油ジェル』と呼ばれ、通常討伐難易度が低い魔物である。
 しかし、油ジェルは場所と量によっては討伐難易度がB又はAランクにまで跳ね上がる危険な魔物である。
 危険とされているのは湿気の無い森、深い洞窟、そして人の密集した都市である。

 通常油ジェルは火をつければ燃えて消えてしまう魔物であるので平原などであればただ燃やしてしまえばいい。
 しかし乾燥した森に大繁殖していれば大火災になりかねず、また洞窟で燃えれば息苦しくなって死んでしまうのだ。
 過去に洞窟の奥深くで山ほどの油を不法投棄した商会があり、それがジェル化したものを迂闊に燃やしてしまった際にその洞窟に居た他の魔物や冒険者が窒息死してしまうという悲惨な事件が起きたこともある。



 しかし、この国で起った事件はそんなものでは無かった。



 ある日その都市では珍しく三日三晩も大雨が降り続いた。
 水捌けの悪いその都市では雨水は地下水道を通って近くの川へと排水する。
 その為大雨が降った翌日に川へ流れ込む水量はとても多くなる。

 しかし、大雨が止んだ翌日に川へと流れ込む水量は晴れた日の水量と変わらなかったのだ。
 その為地下水道に繋がる点検口から調査隊がゴミが詰まっているのかと中に入ろうとしたのだ。



 そうして地下水道への蓋を開けた時、それは始まったのだ。



 都市中央付近の点検口を開けた時、そこから夥しい量の薄黄色の液体が天高く吹き上がる。
 それと同時に都市中の点検口等の穴という穴からそれは吹き出した。
 それは瞬く間に都市全体を覆い尽くして吹き上がるのが止むと、そこには巨大な油ジェルが存在していたという。

 そしてその巨大な油ジェルは突然発火し、都市が全て燃え尽きてしまうまで延々と燃え続けた炎は都市を崩壊させ、政治を行う国王やその他お偉いさんに国民のほぼ全員が炎に飲まれ、また煙で息ができずに死んでしまったのだ。

 後に『キング油ジェル』と呼ばれることになるその魔物は、その場に居たAランク冒険者に核を貫かれて死んだという。



 そんなことを習ったなと思い出す。
「だからな、油関連でこれだけの利益が出せるのがそもそも誰も考えて無かったんだ」
「そうでしたね」
 確かにその事件以降、揚げ物で商売する店は殆ど無くなったのだ。
「この国でも同じ悲劇が起きぬよう、レシピの配布と共に油の処理に関しては厳重注意をしておる所だ。コロンよ、油用鍋の販売の際にはその注意喚起をするよう全店舗に伝えておいては貰えないか?」
 メルクさんもその事はちゃんと考えていたようだ。
「はい。商人達にも注意喚起をするよう伝えておきます」
「うむ、頼んだぞ。それと今回のことで油の需要が増える筈だから、油の処理の値段を全体的に下げる検討をしているのだが、コロンは商人がどのような反応をするか予想でよいので教えてはくれぬか?」
「それは商人も国が滅んだら商売どころじゃ無いですから、全体的に下げる事をオススメすると。今は小タルで銅貨3枚の所を1枚に、中を5から3枚、大で10から5枚にするのが良いと」
「ふむ、ではこれからはその額で引き取りを行うよう伝えてくれ。他の村でも油の需要が増えた地域にはその額で引き取るよう配慮しよう」
 メルクさんとコロンさんの間でトントンと話が進んでいく。



 それから少ししてコロンさんは仕事の為にルルトへと帰ることになった。
「お前さんのおかげで久々に忙しいんだ、ありがとな」
「お仕事頑張ってください」
「勿論だ!もしルルトに来る事あれば俺の店に寄ってけよな、サービスしてやるぞ」
「行くことがあれば是非」
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...