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第三章 農民が動かす物語
農家か、商人か
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「いったい何があったんだろう?」
朝ご飯を食べたあと、家の代表者としてお父さんだけが村長の家に行っていた。
こういう時はお母さんも行くはずなんだけど、何故かご飯を食べてすぐ洗い物を始めていた。
そして何時も楽しく会話しながら摂る朝食の際、何故か今日に限ってはお父さんとお母さんから重い空気が流れていたので僕もミリィも静かにご飯を食べていた。
今は農作業も終えているから魔法の練習に行こうと思ってたんだけど、村人を集めるのは村で何かあった時に限る。
その為外に散歩やソフィに会いに行ったりすることもせず、今は居間でユンの毛を梳いていた。
「ワフゥ」
「ここがいいの?」
「ワン」
そんな風にユンに梳く所を聞いたりしながら台所にいるお母さんの方を見ると、ハッとしたように僕から顔を背けた。
お母さんは先程からたまにこちらを見ては何故か悲しそうな顔ばかりをしている。
一体何なのか気になるけど、恐らく今お父さんが村長の所に行っていることと関係があると思うから聞くことはやめておくことにした。
今話さないということは、それだけの理由があるはずだから。
それから暫くしてユンにもたれながらコンを抱いて撫でていると家の戸が開いた。
「た、ただいま」
「お帰りお父さん。そんなに息切らしてどうしたの?」
帰ってきたばかりのお父さんは走ってきたみたいで肩で息をしていた。
しかし息を整えることすらせずに僕の目の前に立った。
「ロイ、大事な話がある」
一言、これまでに見たことない真剣なお父さんの表情に僕はユンから離れて姿勢を正す。
そしてお父さんは僕の前にゆっくりと座った。
「今週末に俺の親父達……つまりロイからしたら爺さん婆さんになる奴が来る」
「え?」
その予想外の内容に、何の話をしようとしてるのか全くわからなくなる。
まず村長の所に集まったこととの関係が全く見えないことと、生まれてからただの一度も会ったことのない祖父母が何故今来るのか。
「ロイ、お前に話した事は無かったが、俺がクルク村に来る前の名前は『ゼン・バートン』でな、元バートン商会会長の一人息子で跡継ぎ候補だった」
「え、バートンってもしかして、この国1番の商会の……候補だったって、もしかして……」
他の人に跡継ぎをとられたの、と言おうとしたらお父さんが首を横に振る。
「そうじゃない、俺は俺の意志であの家を出たんだ」
お父さんはそう言うと一度深く息をして、何か覚悟を決めたようにこう言った。
「それでだロイ、今あの家には跡継ぎが居ない。たぶん商会の若いのを後継ぎにしようとしてただろうけどな、あいつらはお前の事を知って後継ぎにするつもりだろう」
「え、えええええ!?」
もう、頭はパンク寸前だった。
お父さんが実は有名なバートン家の後継ぎ候補だったこと、その父さんの居なくなって後継ぎがいない事、そして僕がその穴に入れられそうな事。
こんな事を一気に聞かされてすぐ納得出来るほど僕の頭は良くなかった。
「あいつらは既に協会の上層部にでも高い酒とツマミでも持って行って、今年の従魔召喚の儀の結果を聞いてるだろうな。たぶんそこで混沌竜を召喚した子供の場所か名前を聞いただろうな」
「えええ?」
そんなことを簡単に教えちゃっていいものなのかな?
「それだけだと俺の息子だとはわかんないだろうが、揚げパンの開発者として名前と場所を聞けばどっかで混沌竜の主と繋がるだろうし、この村にくる販売員を集めてロイについて知っている事と聞けば俺の息子であることは簡単に知れるだろう」
ガシャン!
急に台所からそんな皿を割る音が響いたから驚いて見ると、お母さんが急に走って裏口から出て行った。
「え、お母さ……」
「ロイ、ここに居なさい」
僕がそれに驚いて腰を浮かすと、お父さんから厳しい声で静止された。
「え、でも……」
「いいから、俺が後で行く。それより先に話を聞きなさい」
「う、うん」
何でお母さんが急にあんな行動をしたのかわからないままだけど、お父さんはきっとその理由も知った上での判断だろうと思って父さんを見る。
「この家を出てバートン家の後継ぎになるか、それともこの村で農家として生きていくか決めなさい。これからの一生を決める事になる大切な事だ、絶対感情だけで決めるんじゃないぞ」
お父さんはそう言うと立ち上がる。
「母さんの様子を見てくるから、ロイは自分の事だけを考えていなさい。昼飯は俺達の分も作っておいてくれると助かる」
「う、うんわかった」
「それじゃ頼んだぞ」
そしてお父さんはすぐに裏口から出て行った。
僕はまだ頭が混乱したままだったけど、ひとまず割れたお皿を片付けるために台所へ向った。
「ねぇコン、僕はどうしたらいいのかなぁ」
「それはロイ自身が決めること。我はロイの選択に従うのみだ」
「うん……」
「我はロイがどのような選択をしようとも付いて行くのでな、安心するとよい」
「ワンワン!」
「ユンも『付いてく』と言っておるぞ」
「うん!二人ともありがと」
朝ご飯を食べたあと、家の代表者としてお父さんだけが村長の家に行っていた。
こういう時はお母さんも行くはずなんだけど、何故かご飯を食べてすぐ洗い物を始めていた。
そして何時も楽しく会話しながら摂る朝食の際、何故か今日に限ってはお父さんとお母さんから重い空気が流れていたので僕もミリィも静かにご飯を食べていた。
今は農作業も終えているから魔法の練習に行こうと思ってたんだけど、村人を集めるのは村で何かあった時に限る。
その為外に散歩やソフィに会いに行ったりすることもせず、今は居間でユンの毛を梳いていた。
「ワフゥ」
「ここがいいの?」
「ワン」
そんな風にユンに梳く所を聞いたりしながら台所にいるお母さんの方を見ると、ハッとしたように僕から顔を背けた。
お母さんは先程からたまにこちらを見ては何故か悲しそうな顔ばかりをしている。
一体何なのか気になるけど、恐らく今お父さんが村長の所に行っていることと関係があると思うから聞くことはやめておくことにした。
今話さないということは、それだけの理由があるはずだから。
それから暫くしてユンにもたれながらコンを抱いて撫でていると家の戸が開いた。
「た、ただいま」
「お帰りお父さん。そんなに息切らしてどうしたの?」
帰ってきたばかりのお父さんは走ってきたみたいで肩で息をしていた。
しかし息を整えることすらせずに僕の目の前に立った。
「ロイ、大事な話がある」
一言、これまでに見たことない真剣なお父さんの表情に僕はユンから離れて姿勢を正す。
そしてお父さんは僕の前にゆっくりと座った。
「今週末に俺の親父達……つまりロイからしたら爺さん婆さんになる奴が来る」
「え?」
その予想外の内容に、何の話をしようとしてるのか全くわからなくなる。
まず村長の所に集まったこととの関係が全く見えないことと、生まれてからただの一度も会ったことのない祖父母が何故今来るのか。
「ロイ、お前に話した事は無かったが、俺がクルク村に来る前の名前は『ゼン・バートン』でな、元バートン商会会長の一人息子で跡継ぎ候補だった」
「え、バートンってもしかして、この国1番の商会の……候補だったって、もしかして……」
他の人に跡継ぎをとられたの、と言おうとしたらお父さんが首を横に振る。
「そうじゃない、俺は俺の意志であの家を出たんだ」
お父さんはそう言うと一度深く息をして、何か覚悟を決めたようにこう言った。
「それでだロイ、今あの家には跡継ぎが居ない。たぶん商会の若いのを後継ぎにしようとしてただろうけどな、あいつらはお前の事を知って後継ぎにするつもりだろう」
「え、えええええ!?」
もう、頭はパンク寸前だった。
お父さんが実は有名なバートン家の後継ぎ候補だったこと、その父さんの居なくなって後継ぎがいない事、そして僕がその穴に入れられそうな事。
こんな事を一気に聞かされてすぐ納得出来るほど僕の頭は良くなかった。
「あいつらは既に協会の上層部にでも高い酒とツマミでも持って行って、今年の従魔召喚の儀の結果を聞いてるだろうな。たぶんそこで混沌竜を召喚した子供の場所か名前を聞いただろうな」
「えええ?」
そんなことを簡単に教えちゃっていいものなのかな?
「それだけだと俺の息子だとはわかんないだろうが、揚げパンの開発者として名前と場所を聞けばどっかで混沌竜の主と繋がるだろうし、この村にくる販売員を集めてロイについて知っている事と聞けば俺の息子であることは簡単に知れるだろう」
ガシャン!
急に台所からそんな皿を割る音が響いたから驚いて見ると、お母さんが急に走って裏口から出て行った。
「え、お母さ……」
「ロイ、ここに居なさい」
僕がそれに驚いて腰を浮かすと、お父さんから厳しい声で静止された。
「え、でも……」
「いいから、俺が後で行く。それより先に話を聞きなさい」
「う、うん」
何でお母さんが急にあんな行動をしたのかわからないままだけど、お父さんはきっとその理由も知った上での判断だろうと思って父さんを見る。
「この家を出てバートン家の後継ぎになるか、それともこの村で農家として生きていくか決めなさい。これからの一生を決める事になる大切な事だ、絶対感情だけで決めるんじゃないぞ」
お父さんはそう言うと立ち上がる。
「母さんの様子を見てくるから、ロイは自分の事だけを考えていなさい。昼飯は俺達の分も作っておいてくれると助かる」
「う、うんわかった」
「それじゃ頼んだぞ」
そしてお父さんはすぐに裏口から出て行った。
僕はまだ頭が混乱したままだったけど、ひとまず割れたお皿を片付けるために台所へ向った。
「ねぇコン、僕はどうしたらいいのかなぁ」
「それはロイ自身が決めること。我はロイの選択に従うのみだ」
「うん……」
「我はロイがどのような選択をしようとも付いて行くのでな、安心するとよい」
「ワンワン!」
「ユンも『付いてく』と言っておるぞ」
「うん!二人ともありがと」
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