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第三章 農民が動かす物語
コンの思い出
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《コンside》
「誰に、か……」
ロイが我に昔の話をして夜になり、既に村の自警団以外は寝静まった頃、我は部屋の窓を開けて空を眺める。
これはまだロイにも話したことは無いが、我は睡眠を取る必要が無いため毎夜とは行かぬが大抵の夜はこうして窓枠に捕まり空を眺めている。
「なあ『超越者』よ、我はようやく出会えたぞ。お主が言っていた存在に」
そして今はもうこの世に居ない、最強の英雄と言われた『スウェーレン・セーゼント』に語りかける。
「お主とは違い普通の少年だが、お主と同じく……いや、お主以上に我を特別視しない、最高の主人に出会う事が出来たぞ」
かつての我の唯一の友で、風変わりな英雄セーゼント。
「よう混沌竜、遊びに来たぜ」
「混沌竜よ退屈してるか?」
「や、混沌竜お久!」
「混沌竜、料理って知ってるか?」
「話をしに来てやったぜ混沌竜」
今でも思い返せば鮮明に聞こえてくる奴の声。
世界中の全ての生物、竜の里の皆でさえ何時も我を特別視する中、たった一人だけ何時も馴れ馴れしい言葉使いで我の元に現れたあの男。
あやつは旅の合間にたまに我の住処に立ち寄っては話をして去っていく、そんな奴だった。
肩には何時も『飛兎』と言う、耳が大きく発達して空を飛ぶ事が出来る兎を乗せて自由気ままな一人旅をしていた男で、いつもその飛兎にはどうしても勝てないとボヤいていたことも思い出す。
「はは、今の我を知ればあやつは何と言うだろうか」
案外驚いたり……いや、あやつなら笑って我の頭を(撫でてるつもりで)軽くはたきながら「そりゃあ良かったなぁ」なんて言ってそうだ。
「セーゼントよ、我は今凄く充実しておるぞ。お主が言った埃臭い住処、今ではその言葉の意味も理解出来る。確かにあのような場所に篭っておったままではこのような素晴らしい日々を体験出来ず、それこそ埃に塗れて埋もれてしまいそうだな」
あやつは我の住処にやって来て、開口一番「埃臭い所だな、もっと風通しの良いとこに住まねぇのか?」などと言いおったからな。
我がロイの従魔となり生活を共にするまでの間、何百年も我の住処をバカにされたのかと思っておったが今では違うとわかる。
きっとあの時言いたかった事は「こんな所に篭ってないで、たまには外に出ろ」という事だったのだろう。
もしかしたらそれは我の考え過ぎで、本当に言葉通りの意味だったのかも知れぬが、既に亡き今となっては確認する事も出来ぬ。
「我は今、心からお主に感謝しておるぞセーゼントよ。あの時お主が教えてくれた事で我は主人の手助けが出来ておるのだ。……お主は本当に何処まで我のことを理解しておったのだ、何時も飄々としておったから今になってもわからぬわ」
我は空に輝く星々を眺め、友であったセーゼントへの感謝を捧げる。
と、そこで急に背後から「ゴソゴソ」と音が聞こえて来た。
「ん、んー……何してるの、コン?」
窓から少しではあるが風が入って来ていたからか、ロイが起きてしまったようだ。
「む、起こしてしまったか?」
「ううん、ちょっと喉乾いちゃって。それよりも、コンはそんな所でどうしたの?」
我のせいでは無かったのかと、少しだけホッとする。
「少し目が冴えてしまってな、夜空を眺めておったのだ」
「ふぅん、僕にもちょっと見せて」
「うむ」
我は窓枠の中央に陣取っていたので左により、ロイが覗けるスペースを作る。
「今日は良く晴れてて星が綺麗だね」
「うむ、見事な星空だ」
今日の空は何時もより多くの星が瞬いているように見えた。
それも、気のせいか先程までより更に輝いているように感じられる。
「それはきっと、二人で見ているからじゃないかな?」
「む、もしかして口に出しておったか?」
「うん、さっきよりも綺麗だって言ってたよ」
何時もであればそのようなミスはしないのだが……先程までセーゼントの事を思い返していたからかも知れぬな。
「そうか、二人で眺めると星はより綺麗に見えるものなのだな」
「そうだよ。そうだ、今度同い年の皆も誘って星を見たら、もっと綺麗に見えるかな」
「そうかも知れぬな……ロイよ、喉が渇いたのであろう?水を飲みに行くといい」
「うん、そうする」
ロイは頷くと、喉を潤しに1階へと降りていく。
「今の少年を見たかセーゼントよ、あれが我の主人だ。誰に対しても優しく、我のことを特別視しない、本当に素晴らしい主人なのだ」
我はそう呟いて、自然と顔に笑みが浮かぶ。
それから少しして戻ってきたロイは窓を閉め、再び布団に潜る。
「ねぇコン、こっち来て」
「どうした?」
「何となく、コンを抱きしめたくなって」
「ふむ、今の時期に我を抱くと暑かろう?」
「いいの。だってコン、ちょっと寂しそうだったんだもん」
「む、そのような事は無いぞ」
「んー、じゃあ気のせいだったのかな?でも、何となく抱きしめたくなったのはほんとだから、ほら」
「まあそういうことなら仕方ないな」
「何だか今のコンはちょっと意地っ張りだね……ふああぁぁ……それじゃあおやすみ、コン」
「うむ、おやすみだ」
「誰に、か……」
ロイが我に昔の話をして夜になり、既に村の自警団以外は寝静まった頃、我は部屋の窓を開けて空を眺める。
これはまだロイにも話したことは無いが、我は睡眠を取る必要が無いため毎夜とは行かぬが大抵の夜はこうして窓枠に捕まり空を眺めている。
「なあ『超越者』よ、我はようやく出会えたぞ。お主が言っていた存在に」
そして今はもうこの世に居ない、最強の英雄と言われた『スウェーレン・セーゼント』に語りかける。
「お主とは違い普通の少年だが、お主と同じく……いや、お主以上に我を特別視しない、最高の主人に出会う事が出来たぞ」
かつての我の唯一の友で、風変わりな英雄セーゼント。
「よう混沌竜、遊びに来たぜ」
「混沌竜よ退屈してるか?」
「や、混沌竜お久!」
「混沌竜、料理って知ってるか?」
「話をしに来てやったぜ混沌竜」
今でも思い返せば鮮明に聞こえてくる奴の声。
世界中の全ての生物、竜の里の皆でさえ何時も我を特別視する中、たった一人だけ何時も馴れ馴れしい言葉使いで我の元に現れたあの男。
あやつは旅の合間にたまに我の住処に立ち寄っては話をして去っていく、そんな奴だった。
肩には何時も『飛兎』と言う、耳が大きく発達して空を飛ぶ事が出来る兎を乗せて自由気ままな一人旅をしていた男で、いつもその飛兎にはどうしても勝てないとボヤいていたことも思い出す。
「はは、今の我を知ればあやつは何と言うだろうか」
案外驚いたり……いや、あやつなら笑って我の頭を(撫でてるつもりで)軽くはたきながら「そりゃあ良かったなぁ」なんて言ってそうだ。
「セーゼントよ、我は今凄く充実しておるぞ。お主が言った埃臭い住処、今ではその言葉の意味も理解出来る。確かにあのような場所に篭っておったままではこのような素晴らしい日々を体験出来ず、それこそ埃に塗れて埋もれてしまいそうだな」
あやつは我の住処にやって来て、開口一番「埃臭い所だな、もっと風通しの良いとこに住まねぇのか?」などと言いおったからな。
我がロイの従魔となり生活を共にするまでの間、何百年も我の住処をバカにされたのかと思っておったが今では違うとわかる。
きっとあの時言いたかった事は「こんな所に篭ってないで、たまには外に出ろ」という事だったのだろう。
もしかしたらそれは我の考え過ぎで、本当に言葉通りの意味だったのかも知れぬが、既に亡き今となっては確認する事も出来ぬ。
「我は今、心からお主に感謝しておるぞセーゼントよ。あの時お主が教えてくれた事で我は主人の手助けが出来ておるのだ。……お主は本当に何処まで我のことを理解しておったのだ、何時も飄々としておったから今になってもわからぬわ」
我は空に輝く星々を眺め、友であったセーゼントへの感謝を捧げる。
と、そこで急に背後から「ゴソゴソ」と音が聞こえて来た。
「ん、んー……何してるの、コン?」
窓から少しではあるが風が入って来ていたからか、ロイが起きてしまったようだ。
「む、起こしてしまったか?」
「ううん、ちょっと喉乾いちゃって。それよりも、コンはそんな所でどうしたの?」
我のせいでは無かったのかと、少しだけホッとする。
「少し目が冴えてしまってな、夜空を眺めておったのだ」
「ふぅん、僕にもちょっと見せて」
「うむ」
我は窓枠の中央に陣取っていたので左により、ロイが覗けるスペースを作る。
「今日は良く晴れてて星が綺麗だね」
「うむ、見事な星空だ」
今日の空は何時もより多くの星が瞬いているように見えた。
それも、気のせいか先程までより更に輝いているように感じられる。
「それはきっと、二人で見ているからじゃないかな?」
「む、もしかして口に出しておったか?」
「うん、さっきよりも綺麗だって言ってたよ」
何時もであればそのようなミスはしないのだが……先程までセーゼントの事を思い返していたからかも知れぬな。
「そうか、二人で眺めると星はより綺麗に見えるものなのだな」
「そうだよ。そうだ、今度同い年の皆も誘って星を見たら、もっと綺麗に見えるかな」
「そうかも知れぬな……ロイよ、喉が渇いたのであろう?水を飲みに行くといい」
「うん、そうする」
ロイは頷くと、喉を潤しに1階へと降りていく。
「今の少年を見たかセーゼントよ、あれが我の主人だ。誰に対しても優しく、我のことを特別視しない、本当に素晴らしい主人なのだ」
我はそう呟いて、自然と顔に笑みが浮かぶ。
それから少しして戻ってきたロイは窓を閉め、再び布団に潜る。
「ねぇコン、こっち来て」
「どうした?」
「何となく、コンを抱きしめたくなって」
「ふむ、今の時期に我を抱くと暑かろう?」
「いいの。だってコン、ちょっと寂しそうだったんだもん」
「む、そのような事は無いぞ」
「んー、じゃあ気のせいだったのかな?でも、何となく抱きしめたくなったのはほんとだから、ほら」
「まあそういうことなら仕方ないな」
「何だか今のコンはちょっと意地っ張りだね……ふああぁぁ……それじゃあおやすみ、コン」
「うむ、おやすみだ」
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