農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト

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第四章 分岐点

イツキの力

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「まー俺の力はめっちゃわかりにくいんだけどな!」
 とイツキさんが笑う。
「俺は魔法使いでな、魔法使いってのはその手の内を晒すのはあんま良くねぇんだが俺はSランクだからな。名前と一緒に手の内なんてあっちこっちで広まっちまって秘密もへったくれもねぇから言っちまうわ!」

「俺の得意魔法は『重力操作』だ!基本的に闇魔法特化なんだがその中でもちょい特殊な重力の属性に偏ってるせいで他は生活程度にしか使えねぇんだけど、その分強力だぜ?」

 そう、イツキさんは言った。
 僕はそれを聞いて2つ納得したことがあった。
 それは僕が悪い人に襲われそうになった時に「潰れろ」と言った彼の前で地面に倒れた男達は重力で抑えつけられていたのだと。
 それとメイさんから聞いたイツキさんの二つ名『漆黒の王』の由来、あれも万を越える魔物が平伏す……ではなく重力で押し潰していた、という理由なのだと。

 そして今頃思い出したけど、万を越える魔物の群れともなれば中には強力な力を持つ個体がチラホラ混ざっているらしい。
 これはどの国でも習う事だけど、魔物は本来決して一定数以上には増えない。それは動物にも同じ事がいえるけど、魔物が1万匹以上の群れを成す時は必ずAランクかSランク相当の魔物が統率している事が殆どで、場合によっては高ランクの魔物が何匹も群れを成す事もあるのだそう。
 それをたった1人で押さえ込むというのは一体どれ程の力を持っているのか、つい先日魔法の練習を始めたばかりの僕には想像もつかなかった。


「力を見せる前にちょっとだけ重力体験した方がわかりやすいからな、希望者は手を上げろ!やるっつっても精々3倍程度だから安全は保証する」


 そうイツキさんが言うので、僕も含めて村人の半数程が一度体験してみることになった。

「それじゃいくぜ!加重1.2倍!」

 イツキさんが叫んだ途端、若干体が重くなった。

「一気に負荷を掛けると惨事が起きかねないから徐々に強くする!耐えられないと思ったらすぐに膝をつけばその時点で止めるからな!加重1.5倍から2倍へ10秒毎に0.1倍ずつシフト!」

 そしてまた体が重くなり、徐々に重さが増して行って立っているのが少しばかり辛くなる。
 この時点で何人かが膝をついて魔法から解放されていた。

「同じ速度で3倍へシフト!」

 また少しずつ重さが増してきて、僕は30秒程経った時点で膝をついた。 
「す、凄い」
 あれでほんの数倍って事はもっともっと強くすれば簡単に生き物の体なんて潰せるという事を体で理解して、その凄さに興奮と同時にちょっとだけ背筋が寒くなった。
 イツキさんがそんな人ではないとわかってはいるけれど、その気になればきっとコンを除けば誰も太刀打ち出来ないんだろうと思うとちょっとだけ怖くなる。

「ま、こんなもんだ」

 僕が膝をついてから少し、最後まで立っていた人も終わった途端ヘナヘナと座りこんだ。
 今終わって唯一立っているのはCランク冒険者のベアルさんだけだった。

「はー、これが重力か。確かにこれならば取り押さえたり潰したりするのも出来そうだが……応用は難しくないか?」
「いやいや、まー確かに難しくはあるが勿論これだけってことはねーよ。とはいえその辺りは流石に飯の種だからこれ以上は話せない」
「いや、勉強になった。ありがとう」

 そういってベアルさんはイツキさんに頭を下げる。

「俺が好きでやってんだから頭なんて下げなくていいっての」
 イツキさんがそう言いつつそっぽを向くとメイさんが笑う。
「ほんとイツキは恥ずかしがり屋だよねー」
「だっ誰が恥ずかしがりだ!」
「顔赤くして言っても説得力無いわよ」
「こんの……はー、もういい。それじゃ最後にメイ、いつものやれば?」
「ええ、言われずとも」



「ふふ、とっても強い痛みに10秒耐えられたらこの私が1時間抱き締めて頭を撫でてあげるわ。勿論外傷も後遺症も残さないと約束しますので、是非という方は居ますか?」


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