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エクストリーム出社 ※性描写あり

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「君…僕が少し甘い顔を見せると、すぐ調子乗るよね?」
「いったい何の話ですか?」
「とぼけないで。君は男なしじゃいられないんだよね?
 僕も悪かったね。ここのところ抱いてやれなくて…」
「や…あ…」

 夫は私をリビングの壁際に追い詰めた。
 かみつくようにキスをした後、ソファまで引きずって押し倒した。
 どこも見ていないような胡乱な目で私を見据え、上に覆いかぶさる。

 娘たちは既に登校していて不在だ。
 彼もそろそろ出勤の時間だが、ズボンと下着だけ脱ぎ、片方の手で私の乳首を、もう片方の手で股間をまさぐり、前戯もそこそこに挿入してきた。
 私の下着は少しずらすだけで脱がせはない。
 ただでさえ全くその気のない私には苦痛だし、下着も傷むので、本当は勘弁してほしい。

「本当にインランだな。こうしてほしかったんだろう?え?」
「あ、あん…」
 ピストン運動に揺さぶられ、声も揺れる。
 指の感触も挿入も虫唾が走るほど不愉快だが、私の反応が悪いと攻めが執拗になるので、私は「夫の出勤前に求めるドすけべ奥様」を演じなければならない。
「ほら、もっと啼けよ!ほらほら!」
「あ、あ…」
「隣の家に聞こえるくらいエロい声出せよ!ほらほら、もっと!」

 うんざりしながらも、ああ、そういうことかと、(彼のおかげで)勘が研ぎ澄まされている私はピンと来た。

***

 お隣には大学生の息子さんがいる。快活で感じのいい青年で、自分から挨拶してくるのだが、それが夫のお気に召さなかったようだ。その彼に聞こえるような声を出せ、という意味らしい。

 彼はあらゆることで私の浮気を疑う。

 娘の学校のPTAで活動している男性パパさん。学校の近くにお住まいで自営業なので協力的らしく、人柄も評判がいい。
 上の娘がそれについて「パパも学校に来てくれればいいのに」と言っただけだが、「君はその男と何かあるのか?」と言われる。

 夫の部下の男性が私をきれいだと褒めれば、「会社の若い者に色目を使った」とみなされる。

 自分の留守中に届け物があれば、「配達の男が家に来た」と変換される。ここまで行くとAVアダルトビデオか何かの見過ぎか、何かの病気としか思えない。

***

「遅れ…ます…よ…」
「大丈夫…だ…キミ一人イカせられないと…思ってるの?」

 あまり聞きたくもない話だろうが、私は彼との営みで“達した”ことはない。
 彼が口ばかりで長持ちしないのをいいことに、膣を自力でぴくぴく動かしているだけなのだ。
 こういうことができる女性は結構いると思うが、彼はそんなことはプロの女性じゃないと無理だと思っていて、私が2、3回ピクピクさせるだけで、「イった」と勝手に判断してくれるだけだ。

 彼は結婚後、私が知っているだけで4人の女性と関係を持っている。ほかにも軽いつまみぐい程度あるだろう。一体普段はどんな女性がお相手なんだろうと呆れる。

「これ…僕の…エクストリーム出社だよ…
 サーフボードじゃなく…女房に乗ってから…出勤する…んだ」
「あなたったら…」
 はい、サイテーのオヤジギャグ来ました!
 セックス中のウイットに富んだジョークも彼の得意とするところだ。

 彼は私の中にぴゅっと無遠慮に吐き出し、身支度を整え、ほぼ無言で家を出た。

 私はただほうけ、しばらくソファに横たわっていた。
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