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あとがき その1

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 『何の役にも立ちません』を読んでくださって、まことにありがとうございます。

 本作は2年ほど前に一度アップしたものですが、思うところありいったん非公開にし、2024年4月8日、やはり思うところあって再アップしました。

 38年前の4月8日きょう、将来を嘱望された18歳の人気アイドルが、自ら命を絶つというショッキングな出来事がありました。
 彼女と同世代だった私たちは、その清楚で愛らしいルックスに憧れたり、「普通だよね。その辺にいそうな子」と辛口で評したり、可憐な歌声に耳を傾けたり、スタンスはいろいろでした。
 彼女の死後は、無責任にその心中を想像して語り合ったりもしました。

「やっぱ失恋が原因なのかな?」
「完璧主義の優等生が追い詰められたんでしょ。でも死ななくてもねえ」
「人気絶頂で死んじゃうなんて、誰も忘れられなくなるじゃん」

 人はいつかは死ぬけれど、自ら命を絶つことは、できる限りすべきではないことです。
「ダメ絶対!」と言い切れないのは、何だかんだでそれ以外の結論はあり得ないという状況も、きっとこの世にはあるのだろうと想像できるからです。
 そういえば、2019年のアニメ『バビロン』で、いつき開化かいか(CV置鮎おきあゆ龍太郎りょうたろうさん)の「自殺法」の正当性についての演説を聞いていて、うっかり納得しかけたことがありました。

 それはそれとして、彼女はやはりできれば死ぬべきではありませんでした。
 友達でも親戚でもない、一生会うこともないであろう一般人パンピーJKたちに好き勝手想像され、批判や中傷をされるというエンディングになってしまうのですから。

 作中の芽衣子も、具体的には書かなかったものの、「ジサツ」の3文字が頭をよぎったかもしれませんが、幸いそこには至りませんでした。
 彼女(たち)の行為は、決して褒められたことではありませんが、赤の他人から死ぬまで責められるようなことかというと、それもまた違います。
 自分の愚行を反省しつつ、残りの人生を粛々と生きていくしかないのでしょう。

 なお、「自殺」の字面が目障りだとお感じになる方もいると思いますが、個人的には「自死」という言葉の方が嫌いなので、あえて「自殺」という言葉をチョイスしております。

 私は「自死」は「自殺」という言葉を忌避した結果の近年の言い換えだと誤解していたのです。
 いや、その言い換え自体が最近の傾向なのは間違いないでしょうが、自死という言葉自体は16世紀にはもう使われていた記録があるそうです。

 イメージだけで物を言いがちといえば、例えば自殺した人の胸のうちを勝手に想像するのもそうっちゃそうですね…。

 本作のヒントとなった出来事が、1人の少女がビルから飛び降りた日と妙にひもづいてしまっているため、あえて4月8日という日に再アップという格好になりました。
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