51 / 51
昼休みのアイマスク
カエデの行動力
しおりを挟む同じクラスのキリ君は、背が高くて鼻筋がきれいでかっこいい。
というか、実は私の推しキャラにそっくりだ。
『セーシュン!星見ヶ丘学園全力投球部』っていう、学園ものの恋愛シミュレーションゲーム(いわゆる乙女ゲー)の攻略対象の一人、立花葵くん(高2)。
クールでつかみどころのない変人キャラだけど、きんつばが大好物だったり、年の離れた妹のために絵本の読み聞かせをしたり、意外性の固まりでもあって、ストーリーが進めば進むほど好きになっていって、今や数少ないキャラグッズを通販とかオークションとかで買っているほどだ。
もちろん見た目が似てるからって、キリ君と葵君を同一視してるわけじゃないけど、つかみどころがないっていう意味では近いような気がする。
というか、あんまりクラスの子と仲よく話している様子がなくて、休み時間の教室では寝ているか本を読んでいるかなので、「よく分からないから、気になる子」なのだ。
特に昼休み。いつも教室にいないけど、一体どこで何してるんだろう?
◇◇◇
それは本当、たまたまだった。
私がお弁当を食べる前に手を洗いにいって、教室に戻ろうとしたら、キリ君が出ていくところですれ違った。
手には白くて小さいレジ袋っぽいものを持っているから、あれはお昼じゃないかな。
(お昼どこで食べる気…?)
何となく気になって後をつけたら、屋上に出る階段を登っていって、踊り場で腰を下ろした。
よく見えないけど、ガザガサという音がわずかに聞こえるから、あそこでお昼を食べているのだろう。
私はいったん教室に戻って、お弁当を持ってキリ君のところに…と少し考えたけど、お昼は一人で食べたいから、ああいうふうにしているのかもしれない。
でも、食べている間も気になって、一緒に食べていたアユミちゃんたちの話も全然入ってこなくて、「おーい、聞いてる?」とか確認されちゃったほどだ。
食べ終わっておしゃべりを続けたけど、まだ昼休みは15分くらい残っていたけれど、教室にキリ君の姿はない。
まだあそこにいるなら…食べた後なら、ちょっと話しかけたりできないかな…?
私は「ちょっとトイレ」とか言って教室を出て、キリ君がお弁当を食べていると思われる場所に向かった。
階段を登っていくと、アイマスクをして、腕組みをして寝ているキリ君がいた。
細くて背が高いから、脚も長い。右の脚を左の脚の上に置いて、少しうなだれている。
私が近づいても起きる様子はないから、本当に寝ていたり…して。
繊細な細いあごは、そんな体勢で寝ていても二重になったりしない。さすがは葵――じゃなかった、キリ君だ。
アイマスクを使うあたり、昼休みはいつもこんなふうに過ごしているのかな。
ミステリアスな彼の秘密を知ったみたいで、ちょっと気分がアガった。
私はしばらくキリ君の前に立って、彼(とその周り)を見つめた。
こんな体勢で寝ていたら、ズボンのおしりがテカっちゃいそうとか、今日のお昼はメロンパンとサンドイッチだったのか、とか。
しゃがんで、顔を近づけたら、さすがに気配で分かる?
びっくりして起きちゃったりして…ふふ。
ちょっとしたイタズラ心から、ぐぐっと身を乗り出して、気づいたら彼の唇に触れていた――手とか指じゃなくて、自分の唇で。
うわ、あの、その…あーっ!
私はキリ君が気づく前に、その場を走って去った。
いや、さすがにキスとかされたら気づくよね?
カノジョでもないのに、私ったら何してんの?調子乗り過ぎ!
◇◇◇
掃除当番、キリ君と違う場所で助かった。
まともに顔、見られないよ。
彼に謝りたいけど、その勇気も出ない。
そして何より、私、まだ彼に恋したとかじゃなくない?
「推しに似ていたので、ずっと気になっていました」
「気になって後をつけました」
「いたずらのつもりでついキスしちゃいました」
こんな告白、できるかっつーの!
【『昼休みのアイマスク』了】
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
これは豪華な短編集ですね。傑作勢揃い。
いっそジャンルを恋愛にした方がより読者数とお気に入りを稼げた気もしますが、それをしないところがあなたの凄さなんでしょうね。
いつもありがとうございます。
何年か前、ハーレクインっぽい作品が人気の女性向けサイトで場違いな話を連発し、「チラ裏に書いとけツマンネ」と言われたことを未だに引きずっているヘタレです。
年齢の割に人生経験少ないくせに、自分の実体験に寄せたことばかり書いて「これいちおう恋愛要素あるけどぉ…どうかな?」くらいなスタンスでやっている方が性に合うようです。
できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思う反面、前述のようなことを言われがちなこともあり、マイペースさせていただいております。