短編集『サイテー彼氏』

あおみなみ

文字の大きさ
22 / 78
在五忌<Zaigoki> カンバン ニ イツワリ アリ

おさななじみ その1

しおりを挟む
本作は、記念日サイトで5月28日が在原業平の忌日「在五忌」だと知り、業平といえば『伊勢物語』という単純な連想ゲームの結果生まれた、雑なパロディというかパスティーシュ青春恋愛小説です。
(つまり昨年の5月28日初出です)

主に参考にしたのは第二十三段「筒井筒 つつゐづつ」。

意味ありげなタイトルほど面倒な話ではないので、お気軽にどうぞ。

***


筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに


◇◇◇

 竹美たけみは隣の家に住む、俺と同い年の女の子だ。
 どっちかというと小柄でかわいい系で、性格が素直っていうか従順っていうか、何ならちょっとオバカで、昔から人を疑うことを知らなかった。

 たまたまお隣さんにそんな子がいても、部屋は2階(俺)と1階(竹美)。
 だから屋根伝いに行き来することもなかったし、もちろん、親同士が相談して家と家の間に勉強部屋を建ててくれることもない(まあこんなことは普通ない)。
 お互いに何か用事があれば、お互いの家の玄関から堂々と入り、「あらあら、ゆうくん(俺のこと)。ちょうど豚汁いっぱいつくったから、食べていきなさいな」とか、「竹美ちゃんいらっしゃい。ヤツなら部屋にいるわよ」とか言って通してくれるし、お互い高校生になって、正式につき合うようになっても、そんな関係は変わらなかった。

 何となく2人で過ごしたくて、どちらかの親きょうだいたちが留守のときに部屋に誘い合うこともあったけれど、お互いの家でエロい気持ちになることは難しい。
 謎の抑止力が働くっていうか、精神的に監視されているっていうか、そんな感じ?
 それでもキスしたり、体に触れたりすることはあったけれど、まあその程度。
 俺と竹美はほぼ清い関係のまま1年過ごした。
 お互いのことは、生まれたときから知っていたので、「つき合って1年目の記念日」について、竹美からあれしようこれしようって提案されても、何だかピンと来なかった。

 しかも俺は、そんな記念日デートのことをすっかり忘れて出かけてしまったのだった――全く別の女のトコに。
 魔が差すにしても、差すタイミングを考えてほしいもんだな、「魔」とやら。

 竹美はすっぽかしたことについて、俺を一言も責めなかった。「もともと私が勝手に決めたことだったし」とか、「有君、があったのに言いづらかったんだよね?」とか何とか。

 人を疑わないにもほどがある。
 こんないい子を俺は裏切ってしまったんだ。

◇◇◇

 竹美との清過ぎる関係に違和感を覚え(というか、大分タマってて)、その頃、同じクラスの保田やすだって巨乳の女子に、ちょっといい感じで誘われて、ついふらっとヤっちまった。
 保田は美人ってほどではないけど、大人っぽくて雰囲気があって、頭の回転が速い。
 つまり竹美とは正反対のタイプだった。

 初めてシたのは保田の部屋だった。「初めて」の俺をリードしてくれたし、むちゃ気持ちよかった。
 竹美とのキスみたいに、唇どうしを合わせるだけじゃなくて、舌を入れてきたりするからびっくりした。

 夜、竹美に悪いと思いつつ、保田とのを思い出しながら、たけ下半身ムスコすることもあった。
 中学生くらいの頃は、竹美のことを想像してスることもあったけど、そういや俺、あいつが何色のどんな下着を着けているかすら知らないんだな。
 リアルに見たことがある保田の体を思い浮かべる方が楽だし簡単だし、何よりつ。

 未練たらしいスケベ心はあるにはあったけれど、俺はすっぽかしの一件以来、意識的に保田を避けるようになった。
 保田は勘がいいから、それ以降は俺にしつこく絡んでくることはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

『 ゆりかご 』 

設楽理沙
ライト文芸
  - - - - - 非公開予定でしたがもうしばらく公開します。- - - - ◉2025.7.2~……本文を少し見直ししています。 " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。 ―――― 「静かな夜のあとに」― 大人の再生を描く愛の物語 『静寂の夜を越えて、彼女はもう一度、愛を信じた――』 過去の痛み(不倫・別離)を“夜”として象徴し、 そのあとに芽吹く新しい愛を暗示。 [大人の再生と静かな愛] “嵐のような過去を静かに受け入れて、その先にある光を見つめる”  読後に“しっとりとした再生”を感じていただければ――――。 ――――            ・・・・・・・・・・ 芹 あさみ  36歳  専業主婦    娘:  ゆみ  中学2年生 13才 芹 裕輔   39歳  会社経営   息子: 拓哉   小学2年生  8才  早乙女京平  28歳  会社員  (家庭の事情があり、ホストクラブでアルバイト) 浅野エリカ   35歳  看護師 浅野マイケル  40歳  会社員 ❧イラストはAI生成画像自作  

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

処理中です...