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【後日談】何を見ても何かを思い出す
初デート
しおりを挟む2012年元日。
部活の仲間で初詣に行こうという話は以前からしていたけれど、急遽レイが不参加になって、4人で行って、みんなで神社の近くの公園でたこ焼きを食べた。
全員「今年こそはいい年になってほしい」って思っているから、少しだけお祈りが長かった気がする。
2011年は、われらF県民にとっては、悪い意味で特別過ぎる年だったからね。
帰り道日高君に、「明日、一緒に初売りに行こうよ」って誘われた。
「初売り?どこか行きたいところあるの?」
日高君は4月に転校してきたので、こっちで迎える初めてのお正月だし、かなり楽しみだったみたい。
「店いっぱいあって、食うとこあって、ついでに遊べるところもあるといいな」
「じゃ、ラ・フェートかな。うちあたりからなら自転車で30分で行けるよ。ゲーセンとかカラオケもあるし」
「あ、行ったことはある。そうか、店多いから面白そうだな、確かに」
そこでまた私は、去年の3月11日にみんなで「ラ・フェート」に行ったことを思い出していた。
日高君が引っ越してくる少し前。
あそこでみんな仲良く震度6弱を味わったんだった。
そしてレイが――って、この何でもレイと絡める癖、早く何とかしなくちゃ。
「まつりー、どうかしたか?」
私はぼーっとしていたみたいで、日高君が私の目の前に手をかざして上下に振った。
「あ、ごめん。何でもないよ」
「ならいいけど。あ、自転車って言ってたけど、寒いししんどいだろ?兄貴に車出してもらうよ」
「え、悪いよ」
「いや、兄貴もまつりに会いたがってたから、顔見世も兼ねてんだ。遠慮せず頼れ」
「うん…」
◇◇◇
日高君は多分、デートに誘ったつもりなんだと思う。なら、少しはおしゃれをすべきなのかな?
そういうことにやたら勘のいいお姉ちゃん(しかも日高君が大のお気に入り)が、「ああいうタイプは実はザ・女の子みたいなスタイルに弱いと思うね」とか言って、自分の洋服も持ち出してコーディネートしてくれた。お勧めは温かなピンクのふわふわニットにチェックのミニスカート、カラータイツ、スケート靴みたいなブーティー――って、あんまり身に着けたことのないものばかりだ。
メイクもしてあげるって言われたけど、それは断った。
うまく言えないけど、メイクした顔を見られるのがちょっと恥ずかしいと思ったから。
日高君のお兄さんは6歳年上で、洋服屋さんで働いているらしい。
日高君に劣らずフレンドリーな人で、器用にハンドルをさばきながら、ずうっとしゃべりっ放しだった。
物静かなお父さん、明るくて愉快なお母さんと、この快活な兄弟。日高家は随分にぎやかそうだな――と思いながら、やっぱり頭の片隅で「3軒隣の斉木家」のことを考えてしまう。
お母さんとお別れして、明日香さんも進学のために家を出て…って、だからやめようよ、そういうの。
私はそういう考えを振り払うように、無意識にかぶりを振っていたみたいで、日高君に、「どうかしたか?」って聞かれた。
「え――あ、何でもないよ」
「そうか。ならいいけど」
日高君のお兄さんには、4時に迎えにきてもらう約束をした。
「そういえば、お兄さんが働いているお店は初売りないの?」
「三が日は休みなんだってさ。だから車出してもらえたんだ」
「なるほどね」
◇◇◇
お姉ちゃんのコーデは日高君には大好評で、携帯で写真を撮られまくった。
「そんなに写真ばっかり撮ってどうするの?」って言ったら、「そりゃ、前住んでたところの友達にかわいい彼女を自慢すんだよ」って。
「日高君みたいなタイプは、女の子っぽい服が好きそうだって、お姉ちゃんが洋服いろいろ貸してくれたんだ」
「ご明察だ。読まれてるねえ」
日高君にはこういう話も自分からぺろっとできる。
そういえば、レイとは長い付き合いで、お互いのいろんな情報を共有していたつもりだったけれど、聞かれなきゃ話さないようなことや、何となく言うのをためらうことも結構あったな、なんて今になって思い出す。この差って何なんだろう。
「ま、俺はまつりがどんな服装で来ても写真撮りまくったし、友達に自慢したと思うけどね」
「ははは…」
お昼は少し早目にフードコートでラーメンを食べた。
何せすごい人出だから、フードコートも慢性的に混んでいたっぽいけど、それでも多分、少しはましだったと思う。
「まつりって意外と食うの速いんだな」
食べ終わってお目当ての店に行く途中、日高君が意外そうに言った。
「あ~…。混み合ってきたから、さっさと席立った方がいいかなって思って」
「理由がお前らしいな。ちりれんげに麺1本ずつ取って、ふうふう言いながら食べるのをちょっと想像してたけど」
「…幻滅した?」
「まさか。むしろそんな食い方されたら、マズそうだし嫌だよ」
「ひょっとして、前のカノジョってそういう人だった?」
特に何も考えずにそう尋ねたら、
「そういうセリフは、もっと焼きもちっぽく言ってほしいね」
だって。そういうものなのか…。
「まつりと同じで、豪快にずるずる食ってたよ」
「へえ」
「…だからさ、もっとこう…ま、いいや」
前カノさんってどんな人だったんだろうって少し想像はしたけれど、嫉妬というより単なる興味だった。
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