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第9章 「気持ちが悪いやつだな」と言われ、「お前が言うなよ」と返した。【千弦と聡二】
「幸い子供は成長するものだからな」【聡二】
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落し物をした、――拾ふことあれば落すことあり、善哉々々。
種田山頭火『其中日記』 三月廿六日
今回は聡二の幼馴染・清春が登場します。
◇◇◇
俺は小学校5年生のとき、父親が士業で開業するに当たり、父の実家である今の家に引っ越したのだが、それまでは東京にいた。
そのとき最も親しくしていたのは、猪川清春という同い年の男子だ。
現在は星雲学園中等部で硬式テニス部に所属している。俺は彼を「ハル」と呼んでいる。
家は割合近かったものの、小学校区が微妙に違っていたため、テニススクールで知り合い、プライベートでも遊ぶようになったのだ。
同じ学校にも友人はもちろんいたが、興味の対象が最も近く、何かとウマが合うのは断然ハルだったから、テニスのレッスンの後や予定のない休日は、ああだこうだとよく話をした。
テニスの実力は――大柄で持久力があり、ビッグサーブを武器とする彼は、俺の一番のライバルといっておこう。
実のところ、今いる英明のテニス部は、他校から「化け物ぞろい」と言われる強豪校なので、ハルと互角、さらにはそれ以上とも言える選手もいるのだが。小学校時代はダブルスを組み、大会でメダルやトロフィーをもらった実績もある。引っ越しがなければ、俺も星雲学園を受験する予定だったから、ハルとのコンビは継続していたかもしれない。
◇◇◇
ハルと俺は、今はLINEなどのチャットツールで主に連絡を取り、時には会って話すこともあるし、事情が許せばお互いの家に泊まることもある。
そんな中、何だかんだで女子の話になることもあるが、「興味がないことはないが、今はもっとほかにやりたいことがある」で一致していた――俺が千弦さんと出会うまでは。
部活や勉強があるからそんな暇はない、ではない。女子と付き合うより部活や勉強の方を「好きこのんで」優先していたので、誤解しないように(言い訳臭いかな?)。
ハルは実はとても冗談好きの愉快な男なのだが、でかい図体と無表情に見える顔で損している。
俺が「実は好きな人ができた」と言ったときも、せいぜい授業の時間割の入れ替えを告げられた程度の反応だった。
「年上の女性で…」といったときも、「そうか。高校生か?それとも大学生?」と質問した程度だった。
俺の姉が四つ上の大学生なので、そういうツテもありだろうと思って聞いたのだろう。
また、英明も星雲学園もエスカレーターの一貫校のため、年長者と接触する機会は意外と多い。
「いや、実は19歳年上なんだ。話すとちょっと長くなるんだが、学校の後輩のお母さんだ」
こう説明したとき、初めて「えっ」と小さく驚嘆の声が出た。
それでも他の者に比べると、やはり反応は薄いかもしれない。
「まさか、その人と付き合っているのか?」
「今アプローチ中だ。まだ子供扱いを感じることも多いが、幸い子供は成長するものだからな」
「なるほどな。お前が好きになるほどの女性がどんな人か、会ってみたい」
「そうか……」
種田山頭火『其中日記』 三月廿六日
今回は聡二の幼馴染・清春が登場します。
◇◇◇
俺は小学校5年生のとき、父親が士業で開業するに当たり、父の実家である今の家に引っ越したのだが、それまでは東京にいた。
そのとき最も親しくしていたのは、猪川清春という同い年の男子だ。
現在は星雲学園中等部で硬式テニス部に所属している。俺は彼を「ハル」と呼んでいる。
家は割合近かったものの、小学校区が微妙に違っていたため、テニススクールで知り合い、プライベートでも遊ぶようになったのだ。
同じ学校にも友人はもちろんいたが、興味の対象が最も近く、何かとウマが合うのは断然ハルだったから、テニスのレッスンの後や予定のない休日は、ああだこうだとよく話をした。
テニスの実力は――大柄で持久力があり、ビッグサーブを武器とする彼は、俺の一番のライバルといっておこう。
実のところ、今いる英明のテニス部は、他校から「化け物ぞろい」と言われる強豪校なので、ハルと互角、さらにはそれ以上とも言える選手もいるのだが。小学校時代はダブルスを組み、大会でメダルやトロフィーをもらった実績もある。引っ越しがなければ、俺も星雲学園を受験する予定だったから、ハルとのコンビは継続していたかもしれない。
◇◇◇
ハルと俺は、今はLINEなどのチャットツールで主に連絡を取り、時には会って話すこともあるし、事情が許せばお互いの家に泊まることもある。
そんな中、何だかんだで女子の話になることもあるが、「興味がないことはないが、今はもっとほかにやりたいことがある」で一致していた――俺が千弦さんと出会うまでは。
部活や勉強があるからそんな暇はない、ではない。女子と付き合うより部活や勉強の方を「好きこのんで」優先していたので、誤解しないように(言い訳臭いかな?)。
ハルは実はとても冗談好きの愉快な男なのだが、でかい図体と無表情に見える顔で損している。
俺が「実は好きな人ができた」と言ったときも、せいぜい授業の時間割の入れ替えを告げられた程度の反応だった。
「年上の女性で…」といったときも、「そうか。高校生か?それとも大学生?」と質問した程度だった。
俺の姉が四つ上の大学生なので、そういうツテもありだろうと思って聞いたのだろう。
また、英明も星雲学園もエスカレーターの一貫校のため、年長者と接触する機会は意外と多い。
「いや、実は19歳年上なんだ。話すとちょっと長くなるんだが、学校の後輩のお母さんだ」
こう説明したとき、初めて「えっ」と小さく驚嘆の声が出た。
それでも他の者に比べると、やはり反応は薄いかもしれない。
「まさか、その人と付き合っているのか?」
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「そうか……」
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