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第21章 再び…
待ち合わせ
しおりを挟む約束の前日、私は念のためと千奈美に電話をしたが、なぜか着信拒否になっていた。
彼女と会ったのが4日前の火曜日。
その4日で状況が変わったにせよ、着信拒否をするほどの事態は想像ができない。
とはいえ、彼女とのつながりはこのケー番だけで、どこに住んでいるかも分からない。
どちらかといえば郊外にあるKamiyaを待ち合わせ場所に指定しても、特に異議も出ずに来てもらったのだから、少なくとも市内の子ではあると思う。
あれこれと状況を想像したり、仮定したりしても、何も答えが出てこないが、私は約束の日曜日、「彼」にいつものように3,000円で追い出された。
とりあえずは約束の場所に行くしかない。
◇◇◇
日曜日だが、まだ混み出す時間ではなかった。
神谷君はまたショーケースの向こうで接客していた。
「やあ、いらっしゃいませ」
「この間はありがとう。助かったわ」
「いいんだよ。君の役に立てたならうれしい」
高校時代より少しだけシャイな感じが抜けた、でも変わらない笑顔でそう言ってもらえて、自分が「夫が浮気相手を自宅に連れ込むために追い出されたみじめな妻」であることを忘れそうになる。
「今日は何にしますか?」
「ええと…ガトーショコラと紅茶をお願いします」
「かしこまりました」
◇◇◇
ケーキと紅茶のサーブも神谷君がしてくれた。
「お待たせいたしました」と置かれたティーソーサーの片隅に、小さなメモ片があったので開いてみると、こう書いてある。
「もしこれから予定がないなら、オレの部屋で待っていてほしい。
鍵はこの間のところにある。
ちょっと気になることがあって、君と話したいんだ。
待ち合わせや予定があるなら、このメモは気にしないで捨てて」
私は千奈美が現れるのを1時間だけ待って、そこで諦めた。
この後来たとき私がいなければ、私のスマホに電話をくれるだろう――と思う。着信拒否するほどだから、まるっきりの無視という可能性の方が高いだろうけれど。
幸い精算も神谷君が対応してくれたので、「あの――お邪魔します」と端的に伝えたら、うなずいて「オレも30分以内に行くから」と返された。
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