異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

毒雨の都3

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 クロトたちは近くを探索し、全極の島と同じような、断絶空間を発見。

 そこから、外側の世界へ行けるはずだ。


 とはいえ、今はまだ時期尚早。

 平気でドラゴンが飛んでいる場所に行くのは、危険過ぎる。


 クロトとエメラは一先ず外縁部まで戻り、断絶の立方体を起動。

 一休みすることにしたのだった。




 ベッドの上に横になる二人。

 クロトはエメラの体調を心配する。


「エメラ、ごめんね。また痛い思いをさせて。」


 クロトが言っているのは、致命傷を負った時の事だろう。

 エメラは首を横に振って、謝る必要は無いと伝える。


「でも、あまり何度も致命傷を負わせるのは・・・。」

「ん・・・。元々、クロト、が・・・私、を・・・助けて、くれた・・・から。」


 序盤、エメラの背後に紫の主が出現した。

 あれは間違いなく想定外で、完治の白玉が間に合うとは思えない。

 クロトが割り込んで助けなければ、エメラは死んでいただろう。


「だから、死にかける・・・痛み、くらい・・・平気、だよ・・・?」


 エメラはそう告げると、クロトにキスをした。

 クロトは少し驚きつつも、それを受け入れる。


「・・・ふぅ、いつになく積極的だね、エメラ?」


 信頼の館のことを鑑みても、やけに積極的なエメラ。

 クロトは喜びながらも、一体どうしたのか、とエメラに尋ねた。


「ん・・・。あの時、の、クロト・・・格好、良すぎた・・・から・・・。」


 自分のリスクを顧みず飛び込んだクロトの姿。

 それはもう、エメラの目には格好良く映ったようだ。


 そして、そのせいで気分が昂っている、ということらしい。


「それ、に・・・クロト、が・・・死ぬかも、と・・・考え、たら・・・。」


 戦闘中には、そんな様子は欠片も見せなかったエメラ。

 だが、動けないクロトが敵に狙われた時は、心臓が止まるかと思ったそうだ。

 クロトと敵の間に割り込んだのは、咄嗟の判断に過ぎない。


 決して、エメラが悪い訳では無いが、捨て置けないことに変わりはない。


 今まで、どんなときも死なないと思っていたクロトの死が間近に迫った。

 そのことも、エメラを積極的にさせる原因のようだ。


「そっか・・・心配を掛けたね。」

「んっ・・・んあ・・・。ん・・・クロト、もっと・・・ちょうだい・・・?」


 エメラはそう口にした後、待ちきれないとばかりに、自分からキスをした。

 そしてクロトは、エメラの肢体に手を這わせながら、服を脱がせていった。




 その後、珍しいことに、クロトは終始受け身であったとかなんとか。


 積極的なエメラに興奮していたクロト。

 だが、エメラはその上を行くほどに興奮していたということだろう。


 二人の行為においては、かつてないほどに乱れた時間となった。










 翌日、断絶空間を解除して、外へ出た。


 念のため警戒していたが、紫の主は現れない。

 やはり、外縁部に現れないというのは間違いなさそうである。


 そのまま毒雨の都を脱出した二人。


 そこで後回しにしていた解体をして、紫結晶を入手。

 主の祝福と到達者の魂も手に入った。

 これらは獲得経験値上昇の装備に使えるので、大変ありがたい。


 また、都の中では、深紫鉱石というものが手に入った。

 確か、剣の進化に必要だったな、と思い出して喜ぶ。


 クロトは全てをアイテムボックスに仕舞い、エメラと共に毒雨の都を去った。









「さて、これで目的も達成できたし、次は何をしようかな・・・?」

「ん・・・。材料、集め・・・?」

「それも良いけど、そればっかりというのも、ね?」


 急ぐ必要も無いので、旅が終わった後はゆっくり休もうと考えているクロト。


(マリアを揶揄って遊ぶ・・・?それとも、リュノアと空で戯れるか・・・。)


 色々とやりたいことを考えていると、エメラから声が掛かった。


「ん・・・。のんびり、したい・・・けど、創世の資格・・・取りに行く。」

「創世の資格を?エメラのレベルって・・・。」

「ん・・・。99になった、から・・・今の、内に・・・手に、入れる。」


 そう、エメラのレベルは紫の主の討伐で99に上昇。

 あと一つで上限になってしまう。

 創世の資格を予め手に入れておくのが、良い選択と言える。


 とはいえ、レベル99から100になるのが、また遠かったりするのだが。


「そっか。僕も付き合おうか?」

「私、一人で・・・行く、から・・・大丈夫。」

「ん、分かった。孤高の道の試練は毎回変わるから、くれぐれも気を付けてね?」

「ん・・・。クロト、を・・・悲しませ、は・・・したく、無い、から・・・。」


 エメラにとっては、自分が死ぬより、クロトが悲しむ方が怖いらしい。


 クロトは思わず、エメラを抱き締めてしまったのだった。

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