異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

その侵入者は、かつての友であり現在の敵

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「この段階でそれに気づくとは・・・流石ね。」

「「っ!?」」


 突然気配もなく神界に現れた存在に、アクアとクラリエルは驚愕した。

 二人が声のした先を見ると、そこには銀色のローブを身に着けた人物が居た。

 フードで顔は見えないが、声から予想するに女性だと思われる。


 だが、二人がその女性を見ている間、クロトは別の方向を見ていた。

 そして、その方向に天剣を一本飛ばすと・・・


 キィィンッ!!


「「「なっ!?」」」


 その行動と結果に驚愕したのは、銀ローブも含めた三人。

 アクアとクラリエルは五人目の存在が居たことに驚いた。


 一方の銀ローブは、姿を現した黒ローブを察知されていたことに驚いていた。

 なおかつ、黒ローブが回避ではなく迎撃を選んだことにも驚愕していた。


「はぁ・・・完全に不意を打ったつもりなんだけどな・・・?」

「微妙にズレたを向いていたというのに、それもブラフだった訳ね・・・。」


 クロトのため息交じりの声に、銀ローブはクロトの仕掛けたカラクリを見破った。

 つまり、黒ローブの居場所を正確には見抜けてない、と黒ローブに思わせること。

 それが黒ローブの回避行動を遅らせる原因となり、迎撃に判断を切り替えさせた。


 銀ローブが緊張を滲ませる中で、クロトも緊張を滲ませていた。


(今のは全力の一撃だったんだけど・・・余裕で迎撃か。僕より数段強いね。)


 そう、今の攻防で、クロトは黒ローブの実力をある程度見抜いていた。

 また、銀ローブが格上であることも反応速度から理解した。


(もっとも、神界に侵入している以上、そんなことは分かっていたことだけね。)


 正体不明かつ、実力未知数の相手。

 その目的どころか敵か味方かさえ分からない現状。

 アクアとクラリエルは思考を重ね、一つの事実を確認していた。


「クロトさん、黒ローブの方は、私の感知に反応しません。」

「こちらもです。神界に侵入しているというのに、まるで気配を感じ取れません。」


 アクアの青い瞳はクロトの隠密者であっても見抜くことが可能。

 能動的に行使する必要があるとはいえ、最高級の感知能力である。

 それなのに感知できないばかりか、姿を現しても感知できないままなのは異常だ。


「なるほどね・・・。」


 クロトは何かを理解したようにそう呟いた。

 アクアとクラリエルはクロトが何を理解したのかは分からない。

 だが、視線で「最適行動を取るように」と伝えているのを察知した。


 それはつまり、戦闘になることも考慮せよ、ということだ。

 二人は身構えて、銀ローブと黒ローブを見据えた。


「さて、君たちの目的は・・・システムへの介入。
 もっと言うと、全能神顕現の流出または強奪、でいいのかな?」

「ええ、そうよ?でも、どうして分かったのかしらね?」


 銀ローブは隠しても無駄と判断して正直に答えた。

 同時に、どうして気づかれたのかと尋ねた。


「どうしてと言われても。丁度その話をしていた時に侵入してくるなんて、ね?」

「・・・そう。」

「何故そんな、何かを諦めたように脱力するのでございますか・・・?」

「何故か、敵意も薄い・・・いえ、殆どありませんし。」


 銀ローブから哀愁が漂ってくることに、クラリエルが疑問を呈した。

 アクアも、交戦の意欲はあるのに、敵意が薄いことが気になっていた。


 しかし、クロトは既に、その理由に思い至っていた。

 それはつまり・・・互いのことをよく知っている知人だからである、と。


「何か、呆れさせたみたいで悪いね・・・・・・アリスさん。」

「えっ・・・?」

「・・・?」

「っ、やはり気づかれた・・・。相変わらずの出鱈目さよね・・・。」


 クロトの言葉に、アクアは呆然とし、クラリエルは首を傾げた。

 クラリエルは知己が無かったが故の反応。

 アクアは、直接会ったことは少ないが、話はよく聞いていたが故の反応。


 そして銀ローブ・・・冒険者ギルドドレファト支部、元ギルドマスター。

 クロトと交流の深かったアリスは、クロトの出鱈目さを再認識した故の反応だ。


 アリスは銀のフードを取って、何とも言えない表情で言葉を紡いだ。


「・・・久しぶりね、クロト君。また会えて嬉しいわ。」


 それに対して、クロトも微妙な表情で答えを紡いだ。


「お久しぶりです、アリスさん。僕も嬉しいですよ。敵同士でさえなければ、ね。」


 ここで初めて、クロトが敵だと述べたことで、その場は一気に緊張に包まれた。

 だが、直ぐに戦闘が始まるというわけでも無さそうだ。

 そもそも、黒ローブは一言も発さないままで、動く気配さえ無い。


 クロトはそんな状況の中で、アリスと初めて会った時の事を思い出していた。

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