高嶺のスミレはオケアノスのたなごころ

若島まつ

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25 おさな友達 - un ami d'enfance -

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 イオネがソニアに伴われて食堂へ向かうと、既に隙なく身なりを整えたアルヴィーゼがコーヒーを傍らに朝食の白パンを口に運んでいた。
 顔が熱くなるのを無視して向かいに座り、朝の挨拶をして自分もソニアの淹れてくれた紅茶に手を伸ばした。
 目を合わせられないのは、昨夜の口づけのせいだ。強引に奪われるだけならまだしも、自分からも腕を伸ばして、甘い陶酔感のうちにアルヴィーゼを抱きしめてしまった。
 酒のせいにすれば簡単に処理できることだ。しかし、今も身体の奥に触れ合った熱が残り、例えば今同じことが起きてもすんなり受け入れてしまいそうなほどに淫蕩な火種が燻っている。手首に赤く残った痕跡が、その時の感覚を生々しく覚えている。
 それなのに、アルヴィーゼひとりが涼しげな顔でコーヒーを飲んでいるのは、なんだか癪だ。

 朝食の後は、いつの間にかソニアが持参していたやや格式高いドレスを身につけてアルヴィーゼの商談に引っ張り出されることになった。商談と言っても、既にアルヴィーゼはトーレの領主エリオス・クレテと話をつけ、港の使用料として納める金額から自前の船団が使用できる停泊所、事務拠点となる建物まで決まっている。
 あとは、先客たちとの間に不利益が起きないよう、互いに決め事と権利を確認するだけの作業だ。
 かつての領主令嬢だったイオネが公爵の「相談役」としてその場にいることで、彼らのアルヴィーゼに対する態度が変わる。海洋交易大国ルメオ共和国に於いては新参者のルドヴァン公爵にとって、令嬢イオネ・アリアーヌ・クレテはトーレでの自分の立場を優位にすることのできる強力な手札なのだ。
 この日のイオネは、特にすることはない。ただルメオの豪商や古い家系の有力な名士たちと直近の貿易船の流れやよく流れてくる交易品の傾向などについて話している内容を、興味深く――時折相手を質問攻めにしながら――傾聴しているだけだ。
 彼らの話を聞いて、分かったことがある。
 父が死んでからトーレの景気はしばらく落ち込んでいたが、この五年で回復を見せ、今年は父イシドールが領主だった頃の好景気にすっかり戻って好転しているというのだ。
 五年前といえば、同性愛者の伯父が自分の選んだ貴族の女性を妻に迎えた頃だ。一度は性的指向から廃嫡の憂き目に遭った伯父も、クレテ家の人間として意地を見せているのかもしれない。
「ところで、アリアネお嬢さま」
 と、この日三番目の商談相手である老舗の大旦那がどこかカエルに似た笑顔を向けた。
 ルメオの人間は、その方言でイオネの公称をそう発音する。どちらかといえばアリアネと呼ばれる方が馴染みがあったが、近頃はそうでもない。正しい発音を知っている人間が身近にいるせいだ。その事実に気付くと、イオネの胸の内に小さな動揺が生まれた。
「高名は聞き及んでいますぞ。ユルクス大学で教鞭を執られているとか。さすがはクレテ家のお嬢さまでいらっしゃる。大学もクレテ家のお嬢さまを教授に迎えられて鼻が高いことでしょう。お嬢さまの生徒はみなよい結婚に恵まれること間違いありませんな」
 無論、この大旦那に悪気はない。ただ、イオネが何をもって自分への侮辱と取るか知らないだけだ。
 そしてイオネは、悪意の有無にかかわらず自分にとって侮辱的な発言をにこにこと聞き流せる質ではない。
 ぐうの音も出ないほど論駁してやろうと口を開いた時、アルヴィーゼが冷ややかな笑い声を上げた。
「アリアーヌ教授がユルクス大学で教授職を得たのは、それに見合う才覚があるからだ。今の口ぶりでは、わたしの相談役が家名のおかげで教授になれたと侮ったように聞こえるぞ」
 イオネは思わず目を見開いて隣のアルヴィーゼを見た。
 話し方こそ穏やかだが、氷のように冷たい目には相手に反論を一切赦さない鋭さがある。
 アルヴィーゼこそ初対面でイオネを侮辱した大悪人のくせに、同じ罪を犯した他人に対してこれほど悪辣な態度が取れるとは、いっそ清々しいほどに性格が悪い。
「滅相もない!」
 カエルの大旦那は肉付きのよい顔を蒼白にした。このトーレにあって、イオネの機嫌を損ねてはクレテ家との関係が拗れかねないと怯えているのだろう。そうなれば、この地における商売に影響が出る。
「無論、承知している。貴殿ほどの人物でも、言葉の選び方を誤ることはある。そうだろう」
 アルヴィーゼは貴人らしく鷹揚に言った。この瞬間に、二人の立場は明確になった。きっとこの先、カエルの大旦那がアルヴィーゼ・コルネールと対等になれることはないだろう。
「どうか気を悪くなさらないでください、お嬢さま…いえ、教授」
 イオネはだんだんこの男が可哀相になってきた。まさに蛇に睨まれたカエルだ。
「ご理解くださったのなら結構よ。それから、わたしが教えるのは良い妻になる方法ではなく、言語学です。きっと自慢の生徒たちがあなたのような貿易商の役に立つ日が来るでしょうから、その時はわたしを思い出して」
 イオネは萎縮する大旦那に向かって権高に顎を上げた。
(息ぴったりだな…)
 部屋の隅に控えるドミニクが内心でそう思ったことを、当人たちは知らない。

 この夜は、イオネにとっては平穏そのものだった。期せずして一人きりの時間を得ることができたからだ。
 商談から戻ったアルヴィーゼは、宿へ戻るなり渡された手紙を見て小さく悪態をつき、今夜は遅くなると言って供も連れず出て行った。反応を見る限りあまり良い知らせではなさそうだったことが少々気掛かりだが、それはイオネの関わるべきことではない。
 イオネは寝室の大きな窓を開け放って港から吹く心地よい風を頬に受け、髪をペンでくるくるとまとめて、机に向かった。
 この部屋にあるのは、優雅に紅茶と菓子を楽しむための小さなティーテーブルだが、翻訳作業にはそれほど差し支えない。
 なんだか妙な感じだ。
 ここのところアルヴィーゼと夕食を共にし、寝室に戻るまで一緒にいることが長くなっていたせいで、今まで当然のように過ごしていた一人の時間が非日常的なものになりつつある。
 今夜の食事は共にできなくなったと告げられた時、別段残念に思うことはなかったものの、「予想外だ」と感じた自分がなんだかひどく恥ずかしく思えた。
(関係ないわ)
 と、イオネは気を取り直して論文へ意識を向けた。住む場所を見つけるまでの一時的な習慣に、不必要に馴染みすぎている。
 ブロスキ教授に頼まれた天文学論文の翻訳は、概ね順調だ。
 元の論文と一緒に前任者であるカスピオの訳文を記した紙片が部分的に紛れていたが、ひどいものだった。初歩的な誤訳が多く、文法上の規則を無視していて、とても専門家が書いたとは思えない。吐き気がして読むなり破り捨てたほどだ。あのボンクラは文章でさえイオネを不快にさせる。
 紙の上にペンを走らせていると、ふと手首の赤い痕が視界に入った。
 そこに触れたアルヴィーゼの唇の感触を身体が勝手に思い出し、探るような深い口づけの時の、アルヴィーゼの肌の匂いが鼻の奥に蘇る。
 途端に鳩尾が痛くなり、同時に脚の間がじくりと湿った。イオネはペンを置いた。
「ばかみたいだわ」
 たった今関心を持つべきではないと思ったばかりではないか。
 それなのに、肌の上に感覚が蘇る。まるで永遠に枯れない種子を体内に植え付けられ、それが徐々に根を伸ばしているみたいだ。

 翌朝、イオネが朝食を終えても、アルヴィーゼは姿を現さなかった。もう陽が高くなったのに、まだ眠っているとは珍しい。
「明け方にお帰りになったようです」
 と、ソニアがもの珍しそうに教えてくれた。昨夜の用向きが何であったのか、本人の他はドミニクしか知らないらしい。
「それなら、今日は一日好きにさせてもらうわ。公爵には休息が必要なようだし」
 イオネは冷たく言って身繕いを終え、ソニアに髪を編み束ねて整えてもらった後、いかにも教職者らしい地味なドレスでトーレの街へ繰り出して行った。
 仕事の手伝いのために同行したのだから勝手な外出を咎められるかもしれないが、宿に籠もって無益な時間を過ごすつもりはない。抜け出す隙を与える方が悪いのだ。
 潮騒が耳を撫でる港から離れ、トーレの中心地へ続く賑わいの大通りをまっすぐに進んで向かう先は、図書館だ。
 供として付いてきたソニアは、ユルクスよりももっと雑多な人種の行き交うこの港町をひどく興味深そうにきょろきょろと眺めていた。
 大通りはあらゆる商店の山だ。珍しい食料品の他、異国からやってくる布や宝石などを売る店、それらを使って装飾品を作る工房などが立ち並び、たばこ、酒などの嗜好品も多く売られている。狭い路地を入れば、格式高い料理屋が並び、また別の路地には、高級娼館が並ぶ歓楽街がある。
 イオネがついてきてくれたお礼にと、ソニアへ彼女の瞳と同じ色の石があしらわれた髪飾りを買って贈ると、ソニアは泣き出しそうなほど顔をくしゃくしゃにして喜んだ。店主はイオネがかつての領主令嬢だと気付いたようだったが、目尻の皺を深くして親しげな笑みを見せただけで、あれこれと話しかけてくることはなかった。この街で商いをする者はみな、多くの人々が入り乱れる大貿易都市らしいカラリとした気性なのだ。
 イオネが図書館へやって来たのは、論文の参考文献を探すためだけではなかった。
 昨夜は結局悶々として集中できず、それほど仕事が進まないまま寝台に横になってしまった。ふかふかの布団に包まれた暗闇と優しい波の音のなかで、やはりアルヴィーゼの熱を思い出した。
 この屈辱的な状況から脱するには、物理的にあの男の領域から離れるしかなかったのだ。
 何百年も変わらずここにある石造りの壮麗な図書館は、壁中に蔦が這う古めかしい外観の割に、内部は陽光がよく射して明るい。内装も父の代に改めたから、まだ無数に並ぶ本棚や机は十分にきれいな状態だった。よく手入れされているのが見て分かる。
 イオネが天文学とエル・ミエルド語学の本を慣れた様子で棚から引っ張り出して仕事をしている傍らで、ソニアもどこからともなく持ってきた本に夢中になっていた。
 気を利かせて少し離れた席に座ったソニアの手元をイオネがチラリと見ると、ルメオにおける服飾の流行の変遷や、ここ一年で流行したドレスの生地や意匠、髪型などがまとめられた分厚い本があった。
(仕事熱心ね)
 自分の学生の中にソニアがいたらきっと特別に目を掛けてしまうだろう。
 それからどれほど時間が経ったのか、少し休憩を入れようかと顔を上げたときのことだ。
 目の前に見知らぬ上流階級の青年が座ってじっとこちらを見ていることに気が付いた。いつから見られていたのか、見当もつかない。
 が、イオネは真正直に嫌な顔をしただけで、それを黙殺した。今は読書に集中しているソニアに食事の誘いをする方が優先事項だ。ところが――
「あ。やっぱりイオネだよな?」
 と問われて、イオネは青年の顔をじっと覗き込んだ。‘イオネ’という名を気軽に呼ぶ者は、家族かごく親しい者に限られている。
 青年は、ダークブロンドの短い髪に、溌剌としたハシバミ色の瞳を持ち、やや童顔ながらどこか精悍な面立ちをしている。顔の骨格がノンノ・ヴェッキオとよく似ていることに気付いたとき、記憶の中にある十歳の少年の顔が目の前の青年の顔と一致した。
「あなた、シルヴァンね。シルヴァン・フラヴァリ」
 イオネは眉を開いた。
 祖父のように慕うノンノ・ヴェッキオことヴィクトル・フラヴァリ老公の十番目の孫で、幼い頃は度々親たちに伴われて互いの領地を行き来していたから、そのたびに顔を合わせていた。謂わば、幼なじみだ。イオネの少女時代におけるチェスの好敵手でもあった。
 最後に会ったのは、十歳の時だ。シルヴァンの父親が貿易の新事業を始めるべく外国の拠点へ移る際、それについていったきり、会うことはなかった。
「驚いたなぁ。いつトーレに戻ってきたんだ?」
 シルヴァンが人好きのする笑顔を見せた。笑うと犬歯が覗くのも、昔と変わらない。
「仕事で一昨日来たところよ。あなたこそ、どうしてトーレにいるの?お父さまの事業を手伝っているのでしょう」
 二人の間に直接のやり取りはないものの、ノンノ・ヴェッキオを通して互いの近況をなんとなく把握している。
「実は、最近独り立ちしたんだ」
 シルヴァンは得意げに胸を張った。
「と言っても、親父が方々で手に入れた美術品とか歴史的価値の高いものを競売にかけるってだけだけど」
「じゃあ、あなたが競売場の支配人ということ?」
「そうさ。アキオ通りの…ほら、昔劇場があったところ。あそこが廃業するって言うから、去年親父と僕で買い受けて改装したんだ。競売がやっていない時は今まで通り劇場として運営してる。昨日はオペレッタの上演で、今夜は美術品の競売」
「有効活用しているのね。無駄がなくて素晴らしいわ」
 イオネは口元に柔らかな笑みを浮かべた。

(あっ)
 と思ったのは、ソニアだ。読書に夢中になっている間に、何か珍事が起きている。
 イオネが親しげに笑いかける相手は、ソニアの知っている範囲ではバシルか自分に限られていた。それが、互いに旧知の仲であるらしい青年が現れたとなると、それを知った公爵の反応は恐ろしいものがある。
(嵐の予感だわ…)
 ソニアは固唾を飲んで、親密そうに昔話に花を咲かせる二人を遠巻きに眺めた。

 その後もソニアの憂鬱は続いた。
 食事に誘われたイオネが、ソニアの同席を条件に快諾したのだ。
 シルヴァンの選んだ料理屋はガレットと蜂蜜酒の美味しい店で、明らかにイオネの好みを知った上での選択だった。
 子供の頃から会っていないのに酒の趣味を知っているとすれば、祖父のヴィクトル老公から伝え聞いているのだろう。要するに、十年以上も顔も合わせなかったイオネに対して、それほどまでの関心があったことになる。
 それに何より、ソニアの観察眼では、シルヴァン・フラヴァリは率直で物腰が柔らかく、誰にでも好かれる質の好青年だ。あの気難しいイオネが、心を許している。
 ソニアは聡明で気高いイオネにすっかり心酔しているから、この先も彼女の元で働きたいと願っている。
 そういう理由で、この好青年がとびきり美味しい料理屋に二人を連れて行き、初対面の侍女にも気さくに話しかけてきた時も、さり気なく心地よい気遣いを二人の女性に対して見せる時も、外国を巡る船旅の話を面白おかしく聞かせてくれた時も、ソニアはこの男の粗を探そうとしていた。
 が、残念ながら好感度はシルヴァン・フラヴァリに傾く一方だ。
(お顔と財力と地位は、旦那さまの勝利ね)
 そしてそれらは、イオネにとってはそれほど重要ではないものだ。

 イオネが思いがけない再会を楽しんでいるうちに、陽が傾き始めた。
「イオネさま。そろそろ戻らないと、心配されます」
 ソニアの言葉に、イオネは「誰が」とは聞かなかった。少なくともアルヴィーゼは勝手な行動を怒りこそすれ、心配することはないだろう。だが、ソニアやドミニクを困らせるのは本意ではないし、そろそろ宿に戻って仕事を再開する必要がある。
「じゃあ、シルヴァン、またノンノ・ヴェッキオに近況を知らせて」
「ああ、待って。送っていくよ。宿はどこ?」
「必要ないわ。まだ明るいもの」
「でも、荷物持ちが必要だろ」
 とシルヴァンが小さな革の鞄を持つイオネの方へ手を伸ばした瞬間、突然伸びてきた腕がイオネの腕を引き、シルヴァンから遠ざけた。
「必要ない」
 イオネがすっかり聞き慣れた声の主を見上げると、見るものを凍り付かせるほど機嫌の悪いアルヴィーゼがそこにいた。
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