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俺と付き合ってください! 2
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「由羽人?」
「あ、え、あ、うん……」
俺の手を握った陽翔が、じりじりと俺に近づいてくる。
俺は俺で、まるでオオカミに目を付けられたウサギのようにじりじりと後ずさる。さっきからずっとこんな調子だ。
どうしようどうしようとグルグルしていたら、業を煮やしたらしい陽翔にグイッと両手を引っ張られ、つんのめるように陽翔の胸にトンッとぶつかった。
「うあっ、ごっ、ごめん!」
「いいから! 付き合ってくれるんだろ? 付き合ってくれるよな? ……フリで、いいからさ」
切羽詰まったような思いつめた顔。
……確かに、連日のように「好きだ」だの「付き合え」だのと、陽翔の気持ちを無視したウザい攻撃を続けられれば誰でもうんざりしてくるだろう。
だから、こんなお願いをせざるを得ない陽翔の気持ちが分からないわけでは無い。……んだけど。
「……俺、たぶん演技下手だよ? 蒼空って選択種は……」
「無いに決まってんだろ。……あいつとは中学からの付き合いだぞ。フリだって、バレちまう」
「……だよね」
ため息つく俺を、陽翔がジッと見ている。
「……やっぱ、迷惑……かな」
「…………」
「だよ……な」
だんだん俯いて、消え入るような声で呟く陽翔。
俺の手を握り締めるその力も、だんだん弱くなってきていた。
今まで見たこともない力ない陽翔の様子に、今度は俺の方が段々居心地悪くなる。
今まで陽翔の周りで巻き起こって来た数々の鬱陶しい奴らの顔が浮かんでは消える。
きっとあいつらは性懲りもなく陽翔の事を付け回して、これからも陽翔を怒らせ続けるだろう。
…………。
「……分かった」
「――、え……?」
俺がぽつりと呟くと、その言葉を拾った陽翔がパッと顔を上げた。その顔には期待感が広がっている。
「陽翔の……、苦労は俺も知ってるし。上手く、出来ないかもしれないけど」
「うん! うん! ありがとう! 大丈夫だよ、大丈夫。由羽人は何にもしなくていいから、俺の傍に居てくれれば、後の事は俺がうまくやるから大丈夫!」
本当にホッとしたと言った風情の陽翔が、満面の笑みで何度も俺の肩を叩きグイッと俺を抱き寄せた。
そしてギュウッといつものスキンシップとは違う雰囲気で俺を抱きしめる。
「……っ、は、陽翔……!」
「……練習」
「え……?」
「だって、俺ら恋人だろ?」
耳元で吹き込むように囁かれて、ゾクリと何かが駆け上がった。
「ちょっ、何、お前……っ!」
慌てて耳を塞いで離れると、陽翔がキョトンと俺を見た。
――見て、口角をゆっくり上げて俺を見る。
……それは、妖艶で色っぽい、初めて俺が見る陽翔の表情だった。
「あ、え、あ、うん……」
俺の手を握った陽翔が、じりじりと俺に近づいてくる。
俺は俺で、まるでオオカミに目を付けられたウサギのようにじりじりと後ずさる。さっきからずっとこんな調子だ。
どうしようどうしようとグルグルしていたら、業を煮やしたらしい陽翔にグイッと両手を引っ張られ、つんのめるように陽翔の胸にトンッとぶつかった。
「うあっ、ごっ、ごめん!」
「いいから! 付き合ってくれるんだろ? 付き合ってくれるよな? ……フリで、いいからさ」
切羽詰まったような思いつめた顔。
……確かに、連日のように「好きだ」だの「付き合え」だのと、陽翔の気持ちを無視したウザい攻撃を続けられれば誰でもうんざりしてくるだろう。
だから、こんなお願いをせざるを得ない陽翔の気持ちが分からないわけでは無い。……んだけど。
「……俺、たぶん演技下手だよ? 蒼空って選択種は……」
「無いに決まってんだろ。……あいつとは中学からの付き合いだぞ。フリだって、バレちまう」
「……だよね」
ため息つく俺を、陽翔がジッと見ている。
「……やっぱ、迷惑……かな」
「…………」
「だよ……な」
だんだん俯いて、消え入るような声で呟く陽翔。
俺の手を握り締めるその力も、だんだん弱くなってきていた。
今まで見たこともない力ない陽翔の様子に、今度は俺の方が段々居心地悪くなる。
今まで陽翔の周りで巻き起こって来た数々の鬱陶しい奴らの顔が浮かんでは消える。
きっとあいつらは性懲りもなく陽翔の事を付け回して、これからも陽翔を怒らせ続けるだろう。
…………。
「……分かった」
「――、え……?」
俺がぽつりと呟くと、その言葉を拾った陽翔がパッと顔を上げた。その顔には期待感が広がっている。
「陽翔の……、苦労は俺も知ってるし。上手く、出来ないかもしれないけど」
「うん! うん! ありがとう! 大丈夫だよ、大丈夫。由羽人は何にもしなくていいから、俺の傍に居てくれれば、後の事は俺がうまくやるから大丈夫!」
本当にホッとしたと言った風情の陽翔が、満面の笑みで何度も俺の肩を叩きグイッと俺を抱き寄せた。
そしてギュウッといつものスキンシップとは違う雰囲気で俺を抱きしめる。
「……っ、は、陽翔……!」
「……練習」
「え……?」
「だって、俺ら恋人だろ?」
耳元で吹き込むように囁かれて、ゾクリと何かが駆け上がった。
「ちょっ、何、お前……っ!」
慌てて耳を塞いで離れると、陽翔がキョトンと俺を見た。
――見て、口角をゆっくり上げて俺を見る。
……それは、妖艶で色っぽい、初めて俺が見る陽翔の表情だった。
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