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第四章
本気で怒ってる
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「先生……」
別に疚しい事をしていた分けではないんだけど、思わぬ先生の登場に、手のひらに冷や汗が滲む。
先生は冷たい無表情な顔を、あの計算された優しい表情へとゆっくりと変えていった。
その表情の変化が、先生が本気で怒っているのだと俺に言っているのだと分かり、体の芯が一気に冷えたような気がした。
「先生、あのっ……、俺……」
「カウンセリング、受けてきたのかい?」
「……え?」
声音すら穏やかで、優しく硬質ないつもの先生の綺麗な声だ。
他の誰かが聞いたなら、生徒を気遣う優しい紫藤先生だと思うかもしれないけど、俺は違う。
先生に突き放されているような気がして、さらに今度は背中からも嫌な汗が流れ始めた。
「そうじゃなくて、あの……っ」
ちゃんと話さなくちゃと思った。
最初に俺が嫉妬したこと。先生を疑ってる分けではないけど凄くモヤモヤしてて、つい誘われるがまま鳥海先生のカウンセリングルームについて行ってしまったことなんかを。
「お、俺……っ」
「キャー、紫藤先生だあー」
「……え?」
振り向くと、女子が3人。先生に向かって手を振りながら近づいてきた。
恐らく隣のクラスの女子だろう。見覚えのある顔だった。
「今、帰りかい?」
「うん。……と思ったけど、やーめた」
「え?」
「さっき先生の準備室に行ったんだよ。今日の授業で分らないところがあったから、聞いてみようかなーと思って」
「そうか、悪かったね。……今から僕は職員室に行かなきゃならないんだけど。そこで良いなら教えてあげるよ」
「え!?ホント? ヤッター。行く行く!」
先生に聞きたいことがあるなんてきっと只の言い訳で、先生に近づいて話をしたいっていうのが本音だろう。
そんな事くらい分かっているだろうに、俺を無視して話を進める先生に苛立ちが募る。だけどこんな所でその苛立ちをぶちまける分けにはいかないから、俺は拳をギュッと握りしめて必死で耐えた。
「南くん」
不意に先生に名前を呼ばれて顔を上げる。
相変わらずの作られた優しい顔。俺の胸の中に、ザラザラとした嫌なモノが積み上げられていく。
「気を付けて帰ってね」
先生はそう言ってニコリとほほ笑んで、女子ら3人と職員室に向かって歩き出した。
別に疚しい事をしていた分けではないんだけど、思わぬ先生の登場に、手のひらに冷や汗が滲む。
先生は冷たい無表情な顔を、あの計算された優しい表情へとゆっくりと変えていった。
その表情の変化が、先生が本気で怒っているのだと俺に言っているのだと分かり、体の芯が一気に冷えたような気がした。
「先生、あのっ……、俺……」
「カウンセリング、受けてきたのかい?」
「……え?」
声音すら穏やかで、優しく硬質ないつもの先生の綺麗な声だ。
他の誰かが聞いたなら、生徒を気遣う優しい紫藤先生だと思うかもしれないけど、俺は違う。
先生に突き放されているような気がして、さらに今度は背中からも嫌な汗が流れ始めた。
「そうじゃなくて、あの……っ」
ちゃんと話さなくちゃと思った。
最初に俺が嫉妬したこと。先生を疑ってる分けではないけど凄くモヤモヤしてて、つい誘われるがまま鳥海先生のカウンセリングルームについて行ってしまったことなんかを。
「お、俺……っ」
「キャー、紫藤先生だあー」
「……え?」
振り向くと、女子が3人。先生に向かって手を振りながら近づいてきた。
恐らく隣のクラスの女子だろう。見覚えのある顔だった。
「今、帰りかい?」
「うん。……と思ったけど、やーめた」
「え?」
「さっき先生の準備室に行ったんだよ。今日の授業で分らないところがあったから、聞いてみようかなーと思って」
「そうか、悪かったね。……今から僕は職員室に行かなきゃならないんだけど。そこで良いなら教えてあげるよ」
「え!?ホント? ヤッター。行く行く!」
先生に聞きたいことがあるなんてきっと只の言い訳で、先生に近づいて話をしたいっていうのが本音だろう。
そんな事くらい分かっているだろうに、俺を無視して話を進める先生に苛立ちが募る。だけどこんな所でその苛立ちをぶちまける分けにはいかないから、俺は拳をギュッと握りしめて必死で耐えた。
「南くん」
不意に先生に名前を呼ばれて顔を上げる。
相変わらずの作られた優しい顔。俺の胸の中に、ザラザラとした嫌なモノが積み上げられていく。
「気を付けて帰ってね」
先生はそう言ってニコリとほほ笑んで、女子ら3人と職員室に向かって歩き出した。
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