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第四章
鳥海先生
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鳥海先生についていき、カウンセリングルームに入った。
あまり広くは無かったけど、教室のように殺風景な感じでは無い。淡いブルーのカーテンや、可愛らしい猫の絵などが飾ってあり、それがとても穏やかな空間を演出していた。
「ハーブティー、淹れるからちょっと待っててね」
鳥海先生は俺をソファーに座らせて、お湯を沸かして準備を始める。
俺はもう一度スマホを出して確認するが、やはり先生からは何のメッセージも入って無かった。
「お待たせ、レモンバームティーだよ。どうぞ、飲んでみて」
そう言って先生が出してくれたのはホットではなくアイスだった。
淡いイエローグリーンの中に氷がカランと音を立てる。
俺はハーブティーなんて飲んだことが無かったので、どんな味がするのか見当もつかない。
思い切ってゴクンと一口飲んでみると、名前通りにレモンの香りが鼻腔をくすぐり、おまけにスッキリとしていて意外と飲みやすかった。
「どう?」
「うん、意外。結構飲みやすいよ」
「そうか、意外か」
俺の返事に鳥海先生は楽しそうに笑う。
その柔らかい笑顔は紫藤先生のそれとは雰囲気が少し違うけど、みんなが良い先生だって言うのが、なんだか分かるような気がした。
先生は、俺に特に話をするようにと促すことはしなかった。
只々、どうでもいいような雑談を話してくるだけだ。
この部屋に猫の絵が飾っているけど、本当は犬派なんだという事とか、鳥海先生の高校時代の悩み事とかそういう話をユーモアを交えて話してくれた。
気が付いたら俺は、結構ゆったりとこの時間を楽しんでいたようだった。
遠慮がちに響くノック音に驚いて顔を上げる。
「はい」
鳥海先生もそれに気が付き、席を立ってドアへと歩いて行った。
か細い声がぼそぼそと聞こえる。
遠慮がちなその声が、俺なんかと違って本当に切羽詰まって困っている訪問者のように思えた。
鳥海先生は「どうぞ、入って」と言って、そいつを招き入れた。
「南くん、悪いね。また今度、ゆっくり話をしよう。何度も言っているけど遠慮しないで。何かあったら頼ってくれて構わないんだからね」
「はい……」
俯いて入ってきたのは、どうやら1年生のようだ。
いじめにでもあっているのだろうか。何かに耐えているような表情が、痛々しく見える。
多分、ここに来るのにもかなりの勇気がいったんだろうと思うと、あまりじろじろ見るのはその子にとって良くないだろうと思い、俺はそのまま「失礼します」と挨拶をして部屋の外へと出た。
ふうっ。
……鳥海先生、やっぱり良い先生だよな。
渚さんにも色々言われたけど、俺にはどうしても鳥海先生が俺のことを気に入って、特別扱いしているようには見えない。
なんだかなあと思いながら、ふと顔を上げる。
俺の視線の先には、冷たい表情をした紫藤先生が立っていた。
あまり広くは無かったけど、教室のように殺風景な感じでは無い。淡いブルーのカーテンや、可愛らしい猫の絵などが飾ってあり、それがとても穏やかな空間を演出していた。
「ハーブティー、淹れるからちょっと待っててね」
鳥海先生は俺をソファーに座らせて、お湯を沸かして準備を始める。
俺はもう一度スマホを出して確認するが、やはり先生からは何のメッセージも入って無かった。
「お待たせ、レモンバームティーだよ。どうぞ、飲んでみて」
そう言って先生が出してくれたのはホットではなくアイスだった。
淡いイエローグリーンの中に氷がカランと音を立てる。
俺はハーブティーなんて飲んだことが無かったので、どんな味がするのか見当もつかない。
思い切ってゴクンと一口飲んでみると、名前通りにレモンの香りが鼻腔をくすぐり、おまけにスッキリとしていて意外と飲みやすかった。
「どう?」
「うん、意外。結構飲みやすいよ」
「そうか、意外か」
俺の返事に鳥海先生は楽しそうに笑う。
その柔らかい笑顔は紫藤先生のそれとは雰囲気が少し違うけど、みんなが良い先生だって言うのが、なんだか分かるような気がした。
先生は、俺に特に話をするようにと促すことはしなかった。
只々、どうでもいいような雑談を話してくるだけだ。
この部屋に猫の絵が飾っているけど、本当は犬派なんだという事とか、鳥海先生の高校時代の悩み事とかそういう話をユーモアを交えて話してくれた。
気が付いたら俺は、結構ゆったりとこの時間を楽しんでいたようだった。
遠慮がちに響くノック音に驚いて顔を上げる。
「はい」
鳥海先生もそれに気が付き、席を立ってドアへと歩いて行った。
か細い声がぼそぼそと聞こえる。
遠慮がちなその声が、俺なんかと違って本当に切羽詰まって困っている訪問者のように思えた。
鳥海先生は「どうぞ、入って」と言って、そいつを招き入れた。
「南くん、悪いね。また今度、ゆっくり話をしよう。何度も言っているけど遠慮しないで。何かあったら頼ってくれて構わないんだからね」
「はい……」
俯いて入ってきたのは、どうやら1年生のようだ。
いじめにでもあっているのだろうか。何かに耐えているような表情が、痛々しく見える。
多分、ここに来るのにもかなりの勇気がいったんだろうと思うと、あまりじろじろ見るのはその子にとって良くないだろうと思い、俺はそのまま「失礼します」と挨拶をして部屋の外へと出た。
ふうっ。
……鳥海先生、やっぱり良い先生だよな。
渚さんにも色々言われたけど、俺にはどうしても鳥海先生が俺のことを気に入って、特別扱いしているようには見えない。
なんだかなあと思いながら、ふと顔を上げる。
俺の視線の先には、冷たい表情をした紫藤先生が立っていた。
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