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第一章

特殊能力…

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ロベールはニコリと笑った後、僕を抱きしめていたその手を離して、奏多の正面に立った。そして爽やかな笑顔を作る。

「東春学園の奏多くん、おはよう。今日から保健医として赴任することになったロベールだ、よろしく」

……は?
なに言ってんの?

奏多相手に何茶番やってるんだよと思い奏多を見ると、奏多は覇気の無いぼーっとした表情になっていて、「ロベール先生、おはようございます」と言っている。

???

「ちょっ、え? なに、奏多。ええっ?」

パニクり奏多の体を揺さぶる僕を、ロベールが笑いながら止めた。

「よせよせ、もう完璧に入ってるから。それより――」

はい? 入ってるって、何が!

「さっき私が言ったのは、本心だからな。……お前のフェロモンは……、いや、お前の全身は私が守る。今日から東春学園の保健医は私だから、そのつもりで」

僕の全身? いやいや、それよりフェロモンって言ったよね。
じゃない、じゃない。そうじゃなくて!

「なに言ってんの? 保健の先生はちゃんと居るし、代わる話なんて聞いてないよ!」
「そうか? でもたった今、そう決まったぞ? 今の保健医は、今日から別の学校に赴任だ」
「ちょっと、どういう事だよ? ふざけて僕を揶揄って――、て、……まさか、なんか変な力があるとか、そう言う事……?」
「変な力と言うと語弊があるが、……まあ、良いか。記憶を少し都合よく弄らせてもらった」
「ええっ!? なに、それ。そんなことまで出来るわけ?」
「まあね。あまり使いたくない力なんだけど、一度くらいなら……見つからないだろう」
「……え?」
「――詳しいことは話せないが、ちょーっと面倒くさい相手に目を付けられててな、私が特殊な力を使うとたまーにそいつが感づいて、私に嫌なちょっかいを出しに来るんだよ。ウザいったら、ねーんだ」

「…………」

……どういう相手なんだろう。

あ、れ?
何だろう、モヤモヤする……。
どういう事?

チラッとロベールを窺うと、パチリと目が合った。
目が合って、――彼の口角が緩く上がっていく。

「安心しろ。ずっと見ていてやる。……南、お前は私のものだ」

ゾクリ。

全身を、電気のような痺れが走る。


だけどそれは不思議なことに、決して嫌悪とか……、そんな類のモノでは無かった。
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