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第十章
化け物
しおりを挟む「おい、人間はどうだ?」
「何ともねぇよ。ビビって引きこもってるぜ。俺らでも見張りは務まるレベルだ」
「戦士みたいな人間もいただろ? アイツらはどうなんだ?」
「あぁ、アイツらは将軍様の元に運ばれて見張られてるよ。下手に行動起こされても困るからな」
ザーズによって人間の見張りを任された魔物たちは、あまりに暇なため仲間同士で語り合っていた。
多くの人間たちは、用意された家屋の中に逃げ込んでおり、暴動を起こすような気配は一切ない。
「そうだ、あの人間たちの中には各国の頭もいたりするんだろ?」
「ハハ、ここでは何の意味もなさないけどな」
「言えてるぜ。滑稽なもんだよ」
魔物たちはケラケラと笑い合う。
下っ端として、上の立場にいたものが堕ちていく様は、見ていて愉快なようだ。
「――おい! お前ら何してんだ!」
「――あ? どうかしたのか?」
楽しそうに談笑していた魔物たちの元へ、息を切らして焦っている様子の魔物が飛び込んできた。
その様子から、尋常ではないことが起こったのは火を見るよりも明らかである。
自分たちの持ち場が異常なしということを振り向いて確認したところで、魔物たちは何があったのかを問いただした。
「南側から侵入者が来たんだよ! 聞いてねえのか!?」
「――は!? 聞いてねぇぞ! どうなってんだ!!」
「ともかく! こんなことしてる暇はねぇ! 早く迎え撃つ準備をしろ!」
「お、おう!」
魔物たちは手から離していた剣を持ち、ドタドタと駆け出す。
「――ぐぁ!」
「――!? どうした!?」
聞こえるか聞こえないかの声。
自慢の聴覚によって、その小さな悲鳴を聞き逃さなかった魔物は、声のした方向へ振り返る。
そこには、首からどくどくと血を流している仲間がいた。
「ど、どうした!? まさか、もうここまで来たってのか!? い、いや、それはありえねぇ。南側から侵入してきたのに、この北側まで来るにはいくらなんでも早すぎる……」
「――お、おい、何があったんだ……」
叫びを聞きつけた仲間が一人現れる。
一瞬敵かと勘違いしてしまったが、どこからどう見ても同じ種族の仲間だ。
「わ、分からねぇ……でも気を付けろ!」
「ど、どういう――ぐぁ!?」
来たばかりの仲間は、素早い何かによって攻撃された。
何が起こったのか、全く理解することができない。
「だ、誰だ!」
「……にゃは」
どこからか現れたワーキャットは、今死んだばかりの魔物を転がして遊んでいる。
その光景は、残された魔物の恐怖をさらに煽った。
「……楽しい」
「ば、化け物……」
ワーキャットが仲間の死体に気を取られているうちに、魔物は足を震わせながらも必死に逃げ出した。
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