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第十章

少年

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「……飽きた」

 ネフィルは、遊び終わった魔物の死体をポイッと捨てる。
 ネフィルの周りには、千切れた魔物の腕や足が散らばっていた。

 この光景を見た魔物がいれば、それはたちまち発狂してしまうだろう。


「お、お姉さん……何をやってるの……?」

「にゃ?」

「うわっ! 魔物が死んでる!?」

 遊び終わったネフィルの元へ現れたのは、十歳にも満たないほどの男の子だ。
 ついつい魔物の死体が目に入ってしまい、腰を抜かしている。

「お、お姉さん! 早く逃げないとこの魔物の仲間に殺されちゃうよ! もしかしたら、お姉さんがこの魔物を殺したって勘違いされるかも!」

 腰が抜けている状態で、男らしいのかよく分からない男の子がネフィルに呼びかけた。

「は、早く! 何やってるの!」

「……うん」

 何とか立ち上がった男の子は、ネフィルの手を引いて連れ出そうとする。
 あまりに必死なため、ネフィルもそれを断ることは出来なかった。


***************


「はぁ、はぁ……ここまでくれば大丈夫」

「……ありがとう」

「お、お姉さんはあんな所で何をやってたの……? 外には魔物がいるんだから、ウロウロしてたら危ないよ」

「……遊んでた」

「あ、遊ぶなんて危ないよ! 遊び相手なら僕がなってあげるから!」

 男の子は、危険な行動をするネフィルを何とかして説得しようとした。

「……ありがとう。でも、そろそろ行かないといけにゃい」

「い、行くってどこに……?」

「飼い主様のところに」

「飼い主様……? もしかしてお父さんとか?」

「……そんなところ」

 ネフィルが答えると、男の子は少しだけ悲しそうな顔をする。
 そのような顔を見てしまったネフィルは、足を止めて振り返るしかない。

「……どうしたの?」

「僕もお父さんを見つけないといけないんだ……そうだ! 危ないかもしれないけど、一緒に探してくれないかな!」

「…………しかたない。お父さんがいないのは不安だと思うから」

 男の子に対して優しさを見せるネフィル。
 普段なら断っていたであろう頼みであったが、気まぐれによって男の子へ協力することになってしまった。

「……探せばいいの?」

「うん。僕のお父さんは強いから、多分どこかで隠れてると思う」

「……それなら大丈夫。君はここにいてくれれば。ワタシたちが何とかするから」

「わ、分かった。えっと、ワタシ……たち?」
 
 ネフィルは男の子を部屋の中に隠す。
 ひとまずここにいれば、無理矢理魔物に殺されるということはないだろう。

「それじゃあ、楽しみにしてて。ばいばい」

「う、うん。気を付けて……」

 本当はネフィルを止めるべきであろう男の子は、動けずにただ見送ることしか出来なかった。


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