29 / 81
第六章
7-2
しおりを挟む
「ふふふふふふふ……こんなに豊富な資源があるっていうんなら、いずれは私がこの王国の……ふふふふふふ」
「……」
空からの通小町の声で、彼女の目的がわかった……。
そういえば、ブルードラゴンに一緒に乗っているはずのヒッツガル師匠はどうしたのだろう?
その時。
森の遥か向こう。クシナ要塞がある方……ではない。に、大爆発が起こった。
きっと、ヒッツガル師匠だ!
あ、でも。クシナ要塞を食いとめると言ったマルガリータはどうしたのだろう? 無事だといいけど。
今は、わからないことだらけだけど、俺は頭を振って一刻も早くラピス城へ行こうと思った。
俺はラピス城へ走るに走った。急いで森を突き抜けると、空気は森の木々の匂いから潮の香りへと変わった。
「見えた!! ラピス城だ!」
やがて、ラピス城の長い橋が見えてきた。だけど、その橋を埋め尽くすかのようなクシナ要塞の騎士の大軍も、俺の目の前に広がっていた。
あれ? え……?! あいつは?!
その橋への入り口を陣取っているのは、騎士でもなくソーニャとガーネットでもなく……何故か黒の骸盗賊団??
頭領のオニクボは、多くの盗賊を率いてクシナ要塞の騎士たちと激しい戦闘をしているところだった。
「盗賊を一人残らず海へと落とせーーー!!」
「落とすんだ!!」
「斬り伏せろーー!!」
「ふん! 早くこっちへ来い……」
大勢のクシナ要塞の騎士の旗が橋の入り口を囲み。俺には多勢に無勢とも取れた。だが、オニクボは冷静だった。
俺は神聖剣を構えて、その場に乱入しようと思ったが。
急に、剣戟の音や怒号や、血と潮の臭いを乗せた風に混じって、辺りに土の匂いが充満した。
クシナ要塞の騎士たちの後方。大砲などの重火器も備えている騎士もいる。その真後ろの地面が盛り上がってきた。
突然、土煙が巻き上がったかと思うと、大勢のクシナ要塞の騎士たちが急に倒れだした。激しい土煙が霧散していくと、大柄の盗賊団の男たちが騎士たちの背や首にそれぞれ斧で致命傷を負わしていた。
「くくくく。後は正々堂々ってやつだな。よお、鬼窪っていうんだな。お前も。俺たちがここを食い止めてやるから、お前はあのデカ物のクシナ要塞をなんとかしろ。王女様は、ラピス城でクシナ要塞の対策をしているってさ」
「ああ……わかった……でも、どうして?」
「いいから! 戻れ!」
凶悪な顔のオニクボに言われ、俺は渋々クシナ要塞の方へと戻った。
そうだな。
オニクボの言う通りだ。
あのクシナ要塞の進行を阻止しないと……ラピス城は終わる!
――――
クシナ要塞内 皇帝の広間
まるでワルツのような優雅な音楽が流れ、凛とした空間の奥に一人の白髪の青年が玉座に座りほくそ笑んでいた。とても面白そうにしているその顔は、青年が皇帝なのだということが次第にわかるほど、荘厳な品格が滲み出ていた。天井はパネルが幾つも嵌められていて、外の景色が見える窓は一つもない。殺風景な場所で、床にもパネルが敷き詰められているだけだった。だが、不思議な事に明かりのないはずのこの広間は、煌びやかな光を放っていた。元来。ここは男性専用で、女性は入れないのだが。
その広間にはその青年と、一人の少女がいた。元老院からきた補助魔法が上位クラスの異世界人。猪野間《いのま》 琉理《るり》である。
「ほう、猪野間一刀流の使い手でもあるというのか。それは面白い。そして、私の側近にせよと……。ふーむ。なかなか面白い。だが、はっきり言おう。信用が足りぬな」
「そうですよね。一応、元の世界では、私は生徒会長をしていました」
「うん? 生徒会長とは?」
「はい。クシナ皇帝陛下。学校というのものをご存知でしょうか? 東方領地のクシナ領にある兵士訓練所と同じようなものなのです。そこでも、私はトップの座にいました」
猪野間はそこで一呼吸すると、瞬間的に抜刀して、初発刀からの剣舞をしてみせた。
殺風景な皇帝の広間が一時、華やかになった。
パチンという刀を鞘に納める音がし、猪野間の剣舞が終わると、クシナ皇帝はしっかりと頷いた。
「よかろう。それでは、必ず。その異世界の剣術で鬼窪とやらを見事倒してみよ……」
そこに二人の老人が皇帝の広間に静かに現れた。
皇帝の御前で平伏すると、口を同じく開く。
「陛下。グレード・シャインライン国のソーニャ王女とガルナルナ国のアリテア王がなにやら協力して不穏な動きをしておるようです……強国の二か国が同時に動くとこちらにとってはさすがに不利。陛下御自《へいかおんみずか》らが動く時が来たようです」
「……」
空からの通小町の声で、彼女の目的がわかった……。
そういえば、ブルードラゴンに一緒に乗っているはずのヒッツガル師匠はどうしたのだろう?
その時。
森の遥か向こう。クシナ要塞がある方……ではない。に、大爆発が起こった。
きっと、ヒッツガル師匠だ!
あ、でも。クシナ要塞を食いとめると言ったマルガリータはどうしたのだろう? 無事だといいけど。
今は、わからないことだらけだけど、俺は頭を振って一刻も早くラピス城へ行こうと思った。
俺はラピス城へ走るに走った。急いで森を突き抜けると、空気は森の木々の匂いから潮の香りへと変わった。
「見えた!! ラピス城だ!」
やがて、ラピス城の長い橋が見えてきた。だけど、その橋を埋め尽くすかのようなクシナ要塞の騎士の大軍も、俺の目の前に広がっていた。
あれ? え……?! あいつは?!
その橋への入り口を陣取っているのは、騎士でもなくソーニャとガーネットでもなく……何故か黒の骸盗賊団??
頭領のオニクボは、多くの盗賊を率いてクシナ要塞の騎士たちと激しい戦闘をしているところだった。
「盗賊を一人残らず海へと落とせーーー!!」
「落とすんだ!!」
「斬り伏せろーー!!」
「ふん! 早くこっちへ来い……」
大勢のクシナ要塞の騎士の旗が橋の入り口を囲み。俺には多勢に無勢とも取れた。だが、オニクボは冷静だった。
俺は神聖剣を構えて、その場に乱入しようと思ったが。
急に、剣戟の音や怒号や、血と潮の臭いを乗せた風に混じって、辺りに土の匂いが充満した。
クシナ要塞の騎士たちの後方。大砲などの重火器も備えている騎士もいる。その真後ろの地面が盛り上がってきた。
突然、土煙が巻き上がったかと思うと、大勢のクシナ要塞の騎士たちが急に倒れだした。激しい土煙が霧散していくと、大柄の盗賊団の男たちが騎士たちの背や首にそれぞれ斧で致命傷を負わしていた。
「くくくく。後は正々堂々ってやつだな。よお、鬼窪っていうんだな。お前も。俺たちがここを食い止めてやるから、お前はあのデカ物のクシナ要塞をなんとかしろ。王女様は、ラピス城でクシナ要塞の対策をしているってさ」
「ああ……わかった……でも、どうして?」
「いいから! 戻れ!」
凶悪な顔のオニクボに言われ、俺は渋々クシナ要塞の方へと戻った。
そうだな。
オニクボの言う通りだ。
あのクシナ要塞の進行を阻止しないと……ラピス城は終わる!
――――
クシナ要塞内 皇帝の広間
まるでワルツのような優雅な音楽が流れ、凛とした空間の奥に一人の白髪の青年が玉座に座りほくそ笑んでいた。とても面白そうにしているその顔は、青年が皇帝なのだということが次第にわかるほど、荘厳な品格が滲み出ていた。天井はパネルが幾つも嵌められていて、外の景色が見える窓は一つもない。殺風景な場所で、床にもパネルが敷き詰められているだけだった。だが、不思議な事に明かりのないはずのこの広間は、煌びやかな光を放っていた。元来。ここは男性専用で、女性は入れないのだが。
その広間にはその青年と、一人の少女がいた。元老院からきた補助魔法が上位クラスの異世界人。猪野間《いのま》 琉理《るり》である。
「ほう、猪野間一刀流の使い手でもあるというのか。それは面白い。そして、私の側近にせよと……。ふーむ。なかなか面白い。だが、はっきり言おう。信用が足りぬな」
「そうですよね。一応、元の世界では、私は生徒会長をしていました」
「うん? 生徒会長とは?」
「はい。クシナ皇帝陛下。学校というのものをご存知でしょうか? 東方領地のクシナ領にある兵士訓練所と同じようなものなのです。そこでも、私はトップの座にいました」
猪野間はそこで一呼吸すると、瞬間的に抜刀して、初発刀からの剣舞をしてみせた。
殺風景な皇帝の広間が一時、華やかになった。
パチンという刀を鞘に納める音がし、猪野間の剣舞が終わると、クシナ皇帝はしっかりと頷いた。
「よかろう。それでは、必ず。その異世界の剣術で鬼窪とやらを見事倒してみよ……」
そこに二人の老人が皇帝の広間に静かに現れた。
皇帝の御前で平伏すると、口を同じく開く。
「陛下。グレード・シャインライン国のソーニャ王女とガルナルナ国のアリテア王がなにやら協力して不穏な動きをしておるようです……強国の二か国が同時に動くとこちらにとってはさすがに不利。陛下御自《へいかおんみずか》らが動く時が来たようです」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
小国の若き王、ラスボスを拾う~何気なしに助けたラスボスたるダウナー系のヤンデレ魔女から愛され過ぎて辛い!~
リヒト
ファンタジー
人類を恐怖のどん底に陥れていた魔女が勇者の手によって倒され、世界は平和になった。そんなめでたしめでたしで終わったハッピーエンドから───それが、たった十年後のこと。
権力闘争に巻き込まれた勇者が処刑され、魔女が作った空白地帯を巡って世界各国が争い合う平和とは程遠い血みどろの世界。
そんな世界で吹けば飛ぶような小国の王子に転生し、父が若くして死んでしまった為に王となってしまった僕はある日、ゲームのラスボスであった封印され苦しむ魔女を拾った。
ゲーム知識から悪い人ではないことを知っていた僕はその魔女を助けるのだが───その魔女がヤンデレ化していた上に僕を世界の覇王にしようとしていて!?
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる