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第八章
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「鬼窪くん……ええ。それなら、私も手伝うわ」
猪野間はハッとして、突然、立ち上がって腰にぶら下げていた刀を抜いた。
俺はびっくりしたが、同じく立ち上がり神聖剣を構える。
その拍子に、テーブルの上の二人分のコーヒーカップが派手にこぼれた。
なんだ!
この感じは?
何か得体の知れないものが、徐々に近づいてくる?!
次第に、カシャン、カシャと、こっちへ近づいてくる。おびただしい数の足音が聞こえて来た。俺にはそれが何の音なのか、おぼろ気にわかってきた。金属製の床を蜘蛛のように歩いているからだ。
もう、確信した。
このクシナ要塞に似合っているものとは、なんだろう?
そう。それは、きっと……機械のはずだ。
蜘蛛型機械??
「鬼窪くん。気をつけて、クシナ要塞の蜘蛛型警備ロボットよ」
「ああ……そうだな。そうだと思ったんだ」
喫茶室の無機質な扉から、蜘蛛型警備ロボットが、その姿をニュッと現した。幾つかある目でこちらを見つめている。駆動音を発し、大型の体で、色は漆黒だった。それは、例えるなら確かに蜘蛛だ。
「ふん!!」
猪野間が左足を少し引いてから、体重を掛けて右手で、一太刀を浴びせた。
真横に鋼鉄を裂く音と火花と共に、蜘蛛型警備ロボットの体に一筋の線が走った。それ以来、蜘蛛型警備ロボットは動かなくなった。
「体内のコードや電気系統を切断したわ。もう動けないはずよ」
「うへえええ。やるなあ。さすが猪野間!」
俺は関心してから、扉の向こうの二体目の蜘蛛型警備ロボットを、上段から振り下ろして、思いっ切り斬り裂いた。
即座に蜘蛛型警備ロボットからは火花が散り、煙を上げる。
…………
しばらくして、数体を猪野間と一緒に斬ってから、俺は次第に冷や汗を掻いてきた。
蜘蛛型警備ロボットはまだまだいそうだった。何故かというと、ここ喫茶室の扉から通路の奥まで、その巨体がぎっしりと埋め尽くしているからだ。
「うー、疲れたー」
「ふぅーー……鬼窪くん。そっちは、どう?」
「十体は斬ったと思うけど……。でも、キリがないな」
「私もよ」
「逃げようか? 今更だけど」
「ええ。そうしましょ」
俺は猪間野と背中合わせの態勢で、今まで戦っていた。次第次第に蜘蛛型警備ロボットはその数を増やしてくる。
もう、疲れて倒れそうだと思って辺りを見回すと、切断された蜘蛛型警備ロボットの部品が埋め尽くす床から、ダクトをみつけた。
俺は猪野間に目線で合図をすると、ダクトまで走った。
蜘蛛型警備ロボットが口から火を吹く。
俺はその火炎放射を避けて、ダクトの中へと飛び込んだ。
猪野間も付いてきて、ダクトへ飛び込むが。
ダクトの中は非常に狭かった……。
「ちょっと……鬼窪くん!」
「え??」
「どこ触ってるの……」
ポカンと頭を叩かれた。
「あ! ごめーーん!」
俺は頭を摩りながら、今度はダクトから脱出するために出口を探して這いつくばる。
ダクトの中は、真っ暗で、出口はまだ見つからなかった。
しばらく、隣にいる猪野間と密着しながら出口を探すと、西の方に光が差していた。
そこへと向かう。
ここまでは、さすがに蜘蛛型警備ロボットは追ってこなかった。
俺は猪野間と進むと……。
なんとか、無事にダクトから外へ出ることができた。そこは広大なコインランドリーだった。
この辺りは、多分。
無人だけれど、居住区なんだ。
コインランドリーは黄色が基調の部屋で、洗剤の匂いが部屋一杯に充満していた。
「ここらへんは、兵は外で戦っているから無人なのよ」
「そうなのか……ソーニャたちはどうしたんだろう?」
俺はコインランドリーからエレベーターの扉まで歩いて行った。
いい匂いだけれど、俺は昔から洗剤の匂いを大量に吸うと眠くなるんだなあ。
心なしか俺は急いで歩いた。
猪野間の方を向くと、制服の汚れをここで落としたかったようで、チラチラと一つのコインランドリーを見ていた。
「鬼窪くん。あそこのエレベーターから上へと行けるわ。クシナ皇帝の玉座へは別のエレベーターに乗り換えるか、8階のエレベーターホールから階段を使わないといけないの。それと、鬼窪くん。クシナ皇帝はかなり強いわよ。気をつけて」
「わかった。任せろ。必ず倒してみせるさ」
ボタンを押して、エレベーターの扉が開くのを待った。
「鬼窪くん……ちゃんと、勉強してるの? クシナ皇帝の武器はあの斬功狼よ」
「斬功狼? って、何?」
「ふぅー、あのね。古くからある大妖刀とも呼ばれるほどのクシナ帝国の国宝よ。どんなに固いものでも斬れる刀なの」
それって、何でも斬れる刀かな?
でも、神聖剣なら大丈夫な気がする……。
なんたって、こっちもグレード・シャインライン国の国宝の一つだ。
猪野間はハッとして、突然、立ち上がって腰にぶら下げていた刀を抜いた。
俺はびっくりしたが、同じく立ち上がり神聖剣を構える。
その拍子に、テーブルの上の二人分のコーヒーカップが派手にこぼれた。
なんだ!
この感じは?
何か得体の知れないものが、徐々に近づいてくる?!
次第に、カシャン、カシャと、こっちへ近づいてくる。おびただしい数の足音が聞こえて来た。俺にはそれが何の音なのか、おぼろ気にわかってきた。金属製の床を蜘蛛のように歩いているからだ。
もう、確信した。
このクシナ要塞に似合っているものとは、なんだろう?
そう。それは、きっと……機械のはずだ。
蜘蛛型機械??
「鬼窪くん。気をつけて、クシナ要塞の蜘蛛型警備ロボットよ」
「ああ……そうだな。そうだと思ったんだ」
喫茶室の無機質な扉から、蜘蛛型警備ロボットが、その姿をニュッと現した。幾つかある目でこちらを見つめている。駆動音を発し、大型の体で、色は漆黒だった。それは、例えるなら確かに蜘蛛だ。
「ふん!!」
猪野間が左足を少し引いてから、体重を掛けて右手で、一太刀を浴びせた。
真横に鋼鉄を裂く音と火花と共に、蜘蛛型警備ロボットの体に一筋の線が走った。それ以来、蜘蛛型警備ロボットは動かなくなった。
「体内のコードや電気系統を切断したわ。もう動けないはずよ」
「うへえええ。やるなあ。さすが猪野間!」
俺は関心してから、扉の向こうの二体目の蜘蛛型警備ロボットを、上段から振り下ろして、思いっ切り斬り裂いた。
即座に蜘蛛型警備ロボットからは火花が散り、煙を上げる。
…………
しばらくして、数体を猪野間と一緒に斬ってから、俺は次第に冷や汗を掻いてきた。
蜘蛛型警備ロボットはまだまだいそうだった。何故かというと、ここ喫茶室の扉から通路の奥まで、その巨体がぎっしりと埋め尽くしているからだ。
「うー、疲れたー」
「ふぅーー……鬼窪くん。そっちは、どう?」
「十体は斬ったと思うけど……。でも、キリがないな」
「私もよ」
「逃げようか? 今更だけど」
「ええ。そうしましょ」
俺は猪間野と背中合わせの態勢で、今まで戦っていた。次第次第に蜘蛛型警備ロボットはその数を増やしてくる。
もう、疲れて倒れそうだと思って辺りを見回すと、切断された蜘蛛型警備ロボットの部品が埋め尽くす床から、ダクトをみつけた。
俺は猪野間に目線で合図をすると、ダクトまで走った。
蜘蛛型警備ロボットが口から火を吹く。
俺はその火炎放射を避けて、ダクトの中へと飛び込んだ。
猪野間も付いてきて、ダクトへ飛び込むが。
ダクトの中は非常に狭かった……。
「ちょっと……鬼窪くん!」
「え??」
「どこ触ってるの……」
ポカンと頭を叩かれた。
「あ! ごめーーん!」
俺は頭を摩りながら、今度はダクトから脱出するために出口を探して這いつくばる。
ダクトの中は、真っ暗で、出口はまだ見つからなかった。
しばらく、隣にいる猪野間と密着しながら出口を探すと、西の方に光が差していた。
そこへと向かう。
ここまでは、さすがに蜘蛛型警備ロボットは追ってこなかった。
俺は猪野間と進むと……。
なんとか、無事にダクトから外へ出ることができた。そこは広大なコインランドリーだった。
この辺りは、多分。
無人だけれど、居住区なんだ。
コインランドリーは黄色が基調の部屋で、洗剤の匂いが部屋一杯に充満していた。
「ここらへんは、兵は外で戦っているから無人なのよ」
「そうなのか……ソーニャたちはどうしたんだろう?」
俺はコインランドリーからエレベーターの扉まで歩いて行った。
いい匂いだけれど、俺は昔から洗剤の匂いを大量に吸うと眠くなるんだなあ。
心なしか俺は急いで歩いた。
猪野間の方を向くと、制服の汚れをここで落としたかったようで、チラチラと一つのコインランドリーを見ていた。
「鬼窪くん。あそこのエレベーターから上へと行けるわ。クシナ皇帝の玉座へは別のエレベーターに乗り換えるか、8階のエレベーターホールから階段を使わないといけないの。それと、鬼窪くん。クシナ皇帝はかなり強いわよ。気をつけて」
「わかった。任せろ。必ず倒してみせるさ」
ボタンを押して、エレベーターの扉が開くのを待った。
「鬼窪くん……ちゃんと、勉強してるの? クシナ皇帝の武器はあの斬功狼よ」
「斬功狼? って、何?」
「ふぅー、あのね。古くからある大妖刀とも呼ばれるほどのクシナ帝国の国宝よ。どんなに固いものでも斬れる刀なの」
それって、何でも斬れる刀かな?
でも、神聖剣なら大丈夫な気がする……。
なんたって、こっちもグレード・シャインライン国の国宝の一つだ。
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