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第九章
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謎の千騎士の後ろの白と騎士の国の軍勢も、黒煙の中から体制を整えてきてしまった。
サンポアスティ国の軍勢も千騎士の軍団には歯が立たないのか、何故か押されている。
今では、広大な森を埋め尽くす大戦争は、白と騎士の国の方が優勢だった。
ま、まずいぞ!
どうする??
どうする??
「鬼窪くん……。隙だらけだぞ。この場合は、頭を叩くんだよ」
「へ??」
どこからか男の低い声がして、短剣が一本。謎の千騎士の首の方へ吸い込まれるかのように、飛んできた。謎の千騎士は、その短剣を大袈裟に剣で弾くと、一旦後ろへ白馬を引いた。
???
俺は辺りを探る。
だが、黒煙であまり見えない。
誰が投げているんだ?!
「もういっちょ!」
今度は、三本も短剣が色々なところから飛んできた。
謎の千騎士は、またもや、大袈裟に剣を思いっ切り振り回して、短剣を全て薙ぎ払う。
「鬼窪くん! どこからか短剣を投げているのは、多分、あのオニクボよ!」
俺の後ろにいるマルガリータが叫ぶ。
あの危険な短剣をオニクボは、姿は見えないが、どこかから投げていたのだ。
辺りは、黒煙と血の臭いを乗せた強風が吹いていた。
森に広がる白と騎士の国の軍も、一瞬。その進軍を停止した。
「む! 小癪な! そこだ!!」
謎の千騎士が、その手に持った剣を地面の方へ投げた。
ぐさっと、剣が地面に深々と刺さった。
「あ、あっぶねえ!」
すぐに、その近くの土が盛り上がってオニクボが飛び出してきた。
「ふはははは! やっぱり、強いな! こいつ!」
オニクボは空中で、笑いながら一回転し、俺の隣に着地した。
猪野間もマルガリータも、俺たちの隣に来た。
白と騎士の国の軍隊は、サンポアスティ国の軍隊が交戦中だ。
俺たちだけで、こいつを倒さないと……。
けれども、この謎の千騎士は一体?? 誰??
本当に、昔にトルメル城の王だったクラスド・エドガーなのか??
あ!
そうだ!
そういえば!
今まで、オニクボは土の中から飛び出ては、短剣を投げていたんだ!!
うん??
土の中??
オニクボは地面から攻めて、マルガリータは空から攻めて、俺と猪野間は地上で戦う。
よし!!
この戦法で行こう!!
相手が過去に大戦争を巻き起こした四大千騎士のクラスド・エドガーだったとしても、ここで勝たないといけない!!
「マルガリータ! オニクボ! 二人は空と地から攻撃してくれ! 猪野間は俺と一緒だ! 絶対にここであいつを倒すぞ!」
俺はそうみんなに叫ぶと、神聖剣を構えた。
「オーケー! 空ね。鬼窪くん!」
「ふん……まあ、いっか……」
「わかったわ! 鬼窪くん! 私はこの戦いの間はあなたの傍にいるわ!」
よし!!
これなら、最大の強敵クラスド・エドガーも!!
俺は神聖剣を上段に振りかぶって、クラスド・エドガーに向かって突進した。猪野間が超強化補助魔法の「ダブルフルスロットル」を俺に掛けた。
激しい能力上昇のため。
俺の身体があたかもなくなったかのような錯覚を覚えた。それだけ、力や体力が倍増して、自分の身体の重さを感じなくなったんだ。
「うらああああーーー!!」
俺は神聖剣を振り下ろした。
だが、クラスド・エドガーはいとも簡単に、白馬共々真横へステップし躱してしまった。
「な!!」
「ふん! そんなものだろうな……」
クラスド・エドガーは鼻で笑う。
「う……嘘だ……」
俺はさすがに、目の前のクラスド・エドガーという千騎士が怖くなってきた。
「チッ!」
オニクボの舌打ちする音が、地面から聞こえ。瞬時に土からオニクボがクラスド・エドガーの背後に飛び出して来た。
またしても、オニクボの短剣が空を斬る。
クラスド・エドガーは、すでに楽に躱して白馬と共に前に疾走していた。そのままクラスド・エドガーは、俺のところへ突進してくる!!
な!
なんで?! いくらなんでも……それは……は、速すぎるだろ!!
「い、いけない!! 鬼窪くん! 避けるのよ!!」
猪野間が叫んだ!
クラスド・エドガーは後ろ手に、白馬に括り付けてある槍を持つと、俺の胸部を狙った。
う、うそーーー!!
このままじゃ……!!
俺は目を閉じて、怖くて神聖剣を闇雲に振ろうとした。
キーーーーン。
激しい金属と金属が弾けた音がした。
一瞬だけ、何が起きたのかわからなかった。
俺はゆっくりと、目を開けると……。
目の前には、ぼやけた姿の老騎士が立っていた。
――――
古代より三つに分断された土地。
そこには、北方領地を治める白と騎士の国があった。
その最北端にあるトルメル城内の王の間は、白一色の甲冑を着た銅像が所狭しと並べてあり、天井画家による騎士の絵が描かれている吹き抜けの天井には、豪華なシャンデリアが遥か階下へとぶら下がっている。ガラス窓も特徴的であって、二人の騎士が剣を交えた絵が描かれていた。
「クシナよ……この戦争はまだ始まったばかりだ。余はまだ戦ってもいないぞ……」
「ふん! クラスド王よ! 貴様は元々……死んだも同然だったはずだ」
「……まださ。余は何度でも蘇る」
「……やはりな……ゼブル「高き館の主」に魂を売った貴様は……貴様さえ……ここで斬ってしまえば……う……あの時、貴様を斬っていれば……」
クシナ皇帝は、鞘に収めた斬功狼を震える手で握った。
玉座に座る。おおよそ人の姿とはいいがたいクラスド・エドガーに向かって、クシナ皇帝は斬功狼を抜いた。
サンポアスティ国の軍勢も千騎士の軍団には歯が立たないのか、何故か押されている。
今では、広大な森を埋め尽くす大戦争は、白と騎士の国の方が優勢だった。
ま、まずいぞ!
どうする??
どうする??
「鬼窪くん……。隙だらけだぞ。この場合は、頭を叩くんだよ」
「へ??」
どこからか男の低い声がして、短剣が一本。謎の千騎士の首の方へ吸い込まれるかのように、飛んできた。謎の千騎士は、その短剣を大袈裟に剣で弾くと、一旦後ろへ白馬を引いた。
???
俺は辺りを探る。
だが、黒煙であまり見えない。
誰が投げているんだ?!
「もういっちょ!」
今度は、三本も短剣が色々なところから飛んできた。
謎の千騎士は、またもや、大袈裟に剣を思いっ切り振り回して、短剣を全て薙ぎ払う。
「鬼窪くん! どこからか短剣を投げているのは、多分、あのオニクボよ!」
俺の後ろにいるマルガリータが叫ぶ。
あの危険な短剣をオニクボは、姿は見えないが、どこかから投げていたのだ。
辺りは、黒煙と血の臭いを乗せた強風が吹いていた。
森に広がる白と騎士の国の軍も、一瞬。その進軍を停止した。
「む! 小癪な! そこだ!!」
謎の千騎士が、その手に持った剣を地面の方へ投げた。
ぐさっと、剣が地面に深々と刺さった。
「あ、あっぶねえ!」
すぐに、その近くの土が盛り上がってオニクボが飛び出してきた。
「ふはははは! やっぱり、強いな! こいつ!」
オニクボは空中で、笑いながら一回転し、俺の隣に着地した。
猪野間もマルガリータも、俺たちの隣に来た。
白と騎士の国の軍隊は、サンポアスティ国の軍隊が交戦中だ。
俺たちだけで、こいつを倒さないと……。
けれども、この謎の千騎士は一体?? 誰??
本当に、昔にトルメル城の王だったクラスド・エドガーなのか??
あ!
そうだ!
そういえば!
今まで、オニクボは土の中から飛び出ては、短剣を投げていたんだ!!
うん??
土の中??
オニクボは地面から攻めて、マルガリータは空から攻めて、俺と猪野間は地上で戦う。
よし!!
この戦法で行こう!!
相手が過去に大戦争を巻き起こした四大千騎士のクラスド・エドガーだったとしても、ここで勝たないといけない!!
「マルガリータ! オニクボ! 二人は空と地から攻撃してくれ! 猪野間は俺と一緒だ! 絶対にここであいつを倒すぞ!」
俺はそうみんなに叫ぶと、神聖剣を構えた。
「オーケー! 空ね。鬼窪くん!」
「ふん……まあ、いっか……」
「わかったわ! 鬼窪くん! 私はこの戦いの間はあなたの傍にいるわ!」
よし!!
これなら、最大の強敵クラスド・エドガーも!!
俺は神聖剣を上段に振りかぶって、クラスド・エドガーに向かって突進した。猪野間が超強化補助魔法の「ダブルフルスロットル」を俺に掛けた。
激しい能力上昇のため。
俺の身体があたかもなくなったかのような錯覚を覚えた。それだけ、力や体力が倍増して、自分の身体の重さを感じなくなったんだ。
「うらああああーーー!!」
俺は神聖剣を振り下ろした。
だが、クラスド・エドガーはいとも簡単に、白馬共々真横へステップし躱してしまった。
「な!!」
「ふん! そんなものだろうな……」
クラスド・エドガーは鼻で笑う。
「う……嘘だ……」
俺はさすがに、目の前のクラスド・エドガーという千騎士が怖くなってきた。
「チッ!」
オニクボの舌打ちする音が、地面から聞こえ。瞬時に土からオニクボがクラスド・エドガーの背後に飛び出して来た。
またしても、オニクボの短剣が空を斬る。
クラスド・エドガーは、すでに楽に躱して白馬と共に前に疾走していた。そのままクラスド・エドガーは、俺のところへ突進してくる!!
な!
なんで?! いくらなんでも……それは……は、速すぎるだろ!!
「い、いけない!! 鬼窪くん! 避けるのよ!!」
猪野間が叫んだ!
クラスド・エドガーは後ろ手に、白馬に括り付けてある槍を持つと、俺の胸部を狙った。
う、うそーーー!!
このままじゃ……!!
俺は目を閉じて、怖くて神聖剣を闇雲に振ろうとした。
キーーーーン。
激しい金属と金属が弾けた音がした。
一瞬だけ、何が起きたのかわからなかった。
俺はゆっくりと、目を開けると……。
目の前には、ぼやけた姿の老騎士が立っていた。
――――
古代より三つに分断された土地。
そこには、北方領地を治める白と騎士の国があった。
その最北端にあるトルメル城内の王の間は、白一色の甲冑を着た銅像が所狭しと並べてあり、天井画家による騎士の絵が描かれている吹き抜けの天井には、豪華なシャンデリアが遥か階下へとぶら下がっている。ガラス窓も特徴的であって、二人の騎士が剣を交えた絵が描かれていた。
「クシナよ……この戦争はまだ始まったばかりだ。余はまだ戦ってもいないぞ……」
「ふん! クラスド王よ! 貴様は元々……死んだも同然だったはずだ」
「……まださ。余は何度でも蘇る」
「……やはりな……ゼブル「高き館の主」に魂を売った貴様は……貴様さえ……ここで斬ってしまえば……う……あの時、貴様を斬っていれば……」
クシナ皇帝は、鞘に収めた斬功狼を震える手で握った。
玉座に座る。おおよそ人の姿とはいいがたいクラスド・エドガーに向かって、クシナ皇帝は斬功狼を抜いた。
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