18 / 75
第二章:ファイティングプロレス
反保_2-2
しおりを挟む
棚神弘(たながみ ひろし)
緩くパーマのかかった茶髪のロングヘアーに爽やかな笑顔。そして、まるで光っているかのような白い歯が眩しい。その容姿はとても四十代後半には見えないぐらいに若々しく、スーツに身を包んでいるが、中背より高い身長に隠すことのできない隆起した筋肉は彼があと少しパンプアップすれば衣服が吹き飛んでしまいそうだ。その様子は紛れもなく彼がレスラーであることを証明していた。
「棚神選手ですよね?」
予想外の対面に、有栖が思わず答えが解っているのに上ずった声で質問してしまう。しかし、その気持ちは反保にもよく理解できた。彼ですら事前の情報収集で少ししか試合は見ていないが、それでも棚神選手が今、目の前にいることに少し感動してしまっているからだ。
「はい! ファインティングプロレスの『太陽』棚神です!」
棚神は再び爽やかな笑顔を見せて、そう言った。彼が言った『太陽』というのは彼のニックネームだ。これは彼が二十代後半の時期に、ファイティングプロレスが一時期だが暗黒時代、と称されるほどに迷走にも近い興業や試合を実施し、ファンが離れ、倒産の危機にあった過去がある。そのとき、彼は残ったファンを大事にし、世論に左右されることなくファインティングプロレスとしての戦いをし続けた。それにより、棚神と戦いたいと世界のレスラーが参戦し、人気は確実に回復していき、見事V字回復させたのだ。
その功績から棚神選手はファンからファインティングプロレスの『太陽』と呼ばれるようになり、今でも根強い人気と多くのファンがいるのだ。
――だけど、棚神選手は……
反保は棚神選手と会えたことに自身の中で大きな喜びの感情と僅かに陰りのある感情があることに気づいていた。
それは棚神選手に関する噂だ。海外進出と世界二位の団体との合併に対して反対している筆頭が彼なのだ。
団体としては棚神選手がV字回復させた功績から彼の意見を無碍にはできない。それほどの影響力が彼単体であるのだ。
だからこそ、棚神選手という存在は大き過ぎて邪魔になりえる。ならば、排除してしまえば……と考える人が出てきてもおかしくはない。
ユースティティアとしても、棚神選手こそが本件の被害者になるのではないか、と警戒していた。
「まさかのお出迎えに驚きました」
「あはは、ユースティティアさんとはいえ我々からすればお客様ですから。熱い歓迎をするのは当然ですよ」
棚神選手が言うには、このあとの案内も彼が引き受けてくれたそうだ。反保はそんな彼と数回の会話だけで、モニター越しで見ていたとき同様の好印象を抱いていた。
緩くパーマのかかった茶髪のロングヘアーに爽やかな笑顔。そして、まるで光っているかのような白い歯が眩しい。その容姿はとても四十代後半には見えないぐらいに若々しく、スーツに身を包んでいるが、中背より高い身長に隠すことのできない隆起した筋肉は彼があと少しパンプアップすれば衣服が吹き飛んでしまいそうだ。その様子は紛れもなく彼がレスラーであることを証明していた。
「棚神選手ですよね?」
予想外の対面に、有栖が思わず答えが解っているのに上ずった声で質問してしまう。しかし、その気持ちは反保にもよく理解できた。彼ですら事前の情報収集で少ししか試合は見ていないが、それでも棚神選手が今、目の前にいることに少し感動してしまっているからだ。
「はい! ファインティングプロレスの『太陽』棚神です!」
棚神は再び爽やかな笑顔を見せて、そう言った。彼が言った『太陽』というのは彼のニックネームだ。これは彼が二十代後半の時期に、ファイティングプロレスが一時期だが暗黒時代、と称されるほどに迷走にも近い興業や試合を実施し、ファンが離れ、倒産の危機にあった過去がある。そのとき、彼は残ったファンを大事にし、世論に左右されることなくファインティングプロレスとしての戦いをし続けた。それにより、棚神と戦いたいと世界のレスラーが参戦し、人気は確実に回復していき、見事V字回復させたのだ。
その功績から棚神選手はファンからファインティングプロレスの『太陽』と呼ばれるようになり、今でも根強い人気と多くのファンがいるのだ。
――だけど、棚神選手は……
反保は棚神選手と会えたことに自身の中で大きな喜びの感情と僅かに陰りのある感情があることに気づいていた。
それは棚神選手に関する噂だ。海外進出と世界二位の団体との合併に対して反対している筆頭が彼なのだ。
団体としては棚神選手がV字回復させた功績から彼の意見を無碍にはできない。それほどの影響力が彼単体であるのだ。
だからこそ、棚神選手という存在は大き過ぎて邪魔になりえる。ならば、排除してしまえば……と考える人が出てきてもおかしくはない。
ユースティティアとしても、棚神選手こそが本件の被害者になるのではないか、と警戒していた。
「まさかのお出迎えに驚きました」
「あはは、ユースティティアさんとはいえ我々からすればお客様ですから。熱い歓迎をするのは当然ですよ」
棚神選手が言うには、このあとの案内も彼が引き受けてくれたそうだ。反保はそんな彼と数回の会話だけで、モニター越しで見ていたとき同様の好印象を抱いていた。
応援ありがとうございます!
5
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる