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第四章:旗揚げ記念日

有栖_4-1

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「いよいよね」
「はい」

 開場時間となり、会場内にお客さんがぞろぞろと入ってきていた。あと一時間後には第一試合が開始となる。ユースティティアも警察も警備の準備と配置が完了している状態だ。特にユースティティアは京の指示により選手とスタッフの動きも確認するようになっている。
 一方で有栖と反保は所定の業務を終え、バックステージにて自由に動けるようになっていた。つまり、ここからが二人にとっては本番だ。

「過去の傾向から興業自体は三時間ぐらいです」
「メインは棚神選手と藤内選手。セミファイナルがハルカ選手とミサゴ選手よね」
「そうですね……この二試合は何回か対戦経験があり、どの試合も時間は三十分前後でした」

 反保がこれまでのデータからその傾向を話してくれる。彼は有栖が何を導きだそうとしているのか理解し、追加の情報を提供する。

「セミファイナル以外の試合は約十分から十五分ぐらいで終わると思います。ただ、入場や退場を含めると前後はあるでしょうけど」
「毒の効果が出始めるのが三十分ぐらい、と考えると一つ前の試合途中で服毒させる。そうすればメインとセミファイナルに関しては事故死に繋がる可能性があるってことね」
「はい。そういった意味では調整はしやすいかもしれません。ですが、他の選手やスタッフも考慮する必要はありますが」
「そうね。そっちは京さんも協力してくれているけど……」
「複数の目ってのは大事ですからね」
「けど、メインとセミファイナルの選手は控え室が一人一室与えられているんだよね?」
「えぇ、他の選手達は所属ユニットごとに共通らしいですけど」
「複数人いる部屋は上手くやらないと毒を盛ることに気づかれたり、怪しまれたりする。それこそ誰に見られているか解らないから」
「人の影に隠れられる利点もありますが……利点もあれば不利な部分もあります」
「個室でも同じよね。誰にも見つからず忍び込めれば確実に成功。忍び込むところを見られるとアウト」
「監視はしやすいですけどね」
「京さんの計らいで複数人の部屋にはユースの隊員が一人以上常駐させてもらってる。こっちも行動に移すのは難しいと思うけど……」

 二人は少し考え、実行の方法が今は思いつかないことを理解すると、

「とりあえず、試合が始まる前に出来ることをしよう。聞き込み、行くよ」
「はい」

 二人は互いに拳を作ってこつん、とぶつけると、それを合図に同時に駆け出した。
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