奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_49

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 数週間後―――
 自主規制と言う形で、マスコミが学校に殺到する事はなくなったが、事件はハヤテ達の学生生活に、少なからず変化をもたらした。
 復帰目処の立たない生徒会会長ミズホと、副会長ハヤトに代わり、停滞する生徒会運営を滞りなく進める名目で、元生徒会長「新津屋」と、元副会長「南 加津佐」、そして「高岡 千穂」の三名が生徒会役員に返り咲いたのである。
 しかも部室に空きが無い事を理由に、あれ程生徒会に発足を阻まれていた「写真部」が、保健室の一部を部室として利用する事で認められたのである。
 保健室を部室に利用出来ないか画策したのはハヤテ。
 養護教諭アイこと黄を、宥めてすかして口説き落とし、ダメもとで申請した出した物が、あっさり許可が取れたのである。
 却下されるだろうと高を括っていた黄も、流石にこの事態は想定外であり、今更前言を撤回する訳にもいかず、保健室の一角の使用を渋々認めた経緯があった。
 約束を反古にすればハヤテ達がそれをネタに、次にどんな、更なる無茶を要求して来るか分からず、リスクの高い不要な借りを作る事を避けたのである。
 飾り気のない事務用イスに不服そうな顔して座る黄は、肘掛けに頬杖つき、
「オマエ等なぁ……前生徒会の嫌がらせをネタに今の生徒会を揺さぶれば、部室を当ててくれんだろうに、なんで保健室に居座んだい。アタシは養護教員であって、保母さんじゃないんだがねぇ」
 皮肉ると、
「そう言わないでおくれよ、アイ先生ぇ」
 ヒカリは申し訳なさげな笑みを浮かべ、
「それに生徒がワラワラしてた方が、他の生徒も相談しに来易いと思うんだ。ねぇ、ハーくん」
「ハーくん、言うな。まぁ写真部の活動は基本的に屋外が多いだろうしな。それと、あぁ言う策士連中を今後相手にするからには、貸しは作れる時に作っておいて、イニシアチブを握っとくに限るからなぁ」
「相変わらずアンタはあざといねぇ~」
 呆れ顔の黄に、
「褒め言葉として受け取っておくよぉ」
 不敵にフッと笑うハヤテ。
 ツバサはため息と一つ吐き、
「私、あんまり外に出たくないんでありますがぁ」
 暗い顔をすると、念願の写真部活動開始に有頂天気味のサクラはかつてない笑顔で、
「大丈夫だよ、ツバサちゃん! みんな一緒なら、きっと楽しいよぉ!」
「は……はいですぅ……」
 満面のサクラの笑顔に、反論の余地が無い事を悟ツバサ。
 にこやかなヒカリはハヤテ、サクラ、ツバサの顔を見回し、
「と、言う訳でぇ~」
 音頭を取ると、四人は不機嫌顔の黄に向かい、
「「「「アイ先生ぇ、よろしくお願いしまぁ~すぅ!」」」」
 笑顔で頭を下げ、
「ハイハイ、もぅ好きにおしぃ」
 黄は呆れ顔で手を振ると、机に向かい、事務作業を始めた。
 ニカッと笑うヒカリ。
 ハヤテ達の方に向き直り、
「先生からOKが出たよ! 早速ボク達の部室作りを始めよう!」
「「「オォーーー!」」」
 ハヤテ達は勝どきを上げ、部屋の片隅にまとめてあった機材の設置に取り掛かった。
 とは言え現代の写真部部室の設置作業。
 一昔前の様に暗室を作ったり、引き伸ばし機を設置したりする作業などはなく、部屋の隅に学校机を一台置いて、共用プリンターを置き、壁の前に置いたホワイトボードと対峙する様に長テーブルを一台置いて、人数分のパイプイスとノートパソコンを置いたら終了である。
 プリンターと壁の間に挟む様に置かれた、カメラ関係の雑誌と高画質印刷用紙が、唯一写真部の空気を漂わすにとどめていた。
 しかし念願の写真部活動開始に四人の表情は明るく、机に向かう黄は生き生きした四人の声を背に、フッと小さな笑みを浮かべつつ、仕事を続けた。

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