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12.異世界召喚
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「シロの寛大な心、感謝するよ…。まずはどうしてシロをこの世界に呼んだのか…から話させてもらうね」
「……うん」
バルは静かに優しい口調で話し始めた。
「僕達がいるこのエーレンベルク大国というのは世界ではそれなりに力を持った国だ。どうしてその力を保持出来るのか…、それは数百年前からある力に頼っているからなんだ…」
「ある…力…?」
「この世界には『聖女』と呼ばれる存在がいる。彼女が祈る事で、どんな外敵からも守れる強固な結界を作り上げることが可能なんだ。我が国エーレンベルクもその聖女の結界のおかげで、この何百年平和を守り続けることが出来ていると言っても過言ではない…。逆に聖女の力が消えれば、この国はあらゆる外敵から狙われることになる。外敵と言うのは…敵国や魔物…それに伝染病や…干ばつ、嵐など…天候面なども含め様々だ……」
バルの話を聞いて『聖女』と呼ばれる存在がこの国を、如いてはこの世界を守っている存在なのだと言う事は十分に分かった。
この世界は私が知っている世界とはだいぶ異なる世界だと言う事を理解した。
聖女や魔物と言う単語が出てくると、まるでファンタジー世界の様に感じてしまう。
私はそんな世界に来てしまったと言う事なのだろうか…。
「聖女って大事な存在なんだね…」
「そうだね…。この国には必要不可欠な存在であるのは間違いないね。聖女に選ばれる人間は特殊な能力を生まれた時から身に着けている…。例えば傷を瞬時に癒す力だとか…、魔物を浄化させてしまう力とかね。人によって使える能力は様々だけど、大国を守るだけの力を持つ聖女は早々に見つけることは出来ない…。だけど国を守るために絶対に探し当てなくてはならない存在なんだ…」
「いなければ…国が滅んでしまう可能性もあるから…?」
「うん…、そうなんだ。だけど、それでもどうしても見つからない場合はある特殊な方法を使って呼ぶことになる。異世界召喚術を使って、違う世界から強引に呼び寄せる方法だ…。だけどこれは召喚する方に大分犠牲が伴うから最終手段だけどね…」
バルの言葉を聞いて私は嫌な予感を感じた。
鼓動がバクバクと早くなり、表情も曇り始めていく。
(まさか…それって……)
「ここまで話せば察しはついているかな…。シロは聖女としての素質を持っていて、いずれこの国に必要とされる存在になる…」
「わ…私にそんな力はありませんっ…!」
私は慌てる様にすぐさま言い返した。
私はただの女子大生で、そんな世界を救うような大それた力なんて持っているわけがない。
これは何かの間違えなのでは無いかと思った。
「こんな事を突然言われたら驚くのも当然だよね…。だけど間違いなく…シロはこの国を救うだけの聖女としての素質を持っている。…残念だけど、それは事実なんだ。でもね…、僕はシロの事を絶対に国の道具になんてさせるつもりはない…」
「……え?」
「聖女として認められてしまえば、一生この国に祈りを捧げなければならなくなる。自由なんてものは無いも同然だ。自分の意思とは別に良くも知らない国に突然呼ばれ、その挙句…国の為に一生を捧げろなんて馬鹿げた話だよね。だけどそれを強制的に強いられることになる…」
「……いやっ…、そんな…」
バルの話を聞いていると恐怖心が芽生え、私は泣きそうな顔で首を横に振った。
今すぐにでもここから逃げ出したいはずなのに体が震えているせいか動かない。
「僕だってそんな目には二度と合わせたく無い。その為に今シロをここに呼んだんだ…。シロをこの国から守るために…ね」
「それは…どういうこと…?」
私が不安そうな顔でバルに視線を向けると、バルは優しく微笑んでいた。
「シロをエーレンベルク大国の聖女には絶対に僕がさせない。そうならない様に…既に手は打ってある…。ここは王宮からも離れているし僕は王子ではあるけど…嫌われた存在だからね。滅多に人が寄り付く事も無いから安心して…」
「……私の事…守ってくれるの…?それなら…元いた世界に…返して…」
「シロ…ごめんね。それは出来ない…。もし可能だとしても、いずれシロは我が国の連中に見つかり再び召喚されることになるだろう…」
「どうして…そう言い切れるの…?」
私がむっとした顔でバルを睨みつけると、バルは悲しそうな表情を浮かべていた。
その顔を見ると胸の奥がなんだか傷んでしまう。
「僕はね…、一度この世界を見て来ているんだ。こんな事を言っても信じてもらえるか分からないけど、僕にとってはこの人生は二度目になる。最初の人生で僕は大事なものを国に奪われた…、守りたかったけど…力不足でそれは叶わなかったんだ……」
バルは悔しそうに表情を歪ませていた。
その顔を見ていると、バルが言っていることが嘘だとは思えなかった。
もしここが異世界だと言うのであれば、バルの言ってる話だって有り得ない話ではないだろう。
すでに現実離れした事ばかり聞いていたので、私は多少の事では驚かなくなっていたのかもしれない。
「僕の母の家系は代々聖獣使いの血を引いていてね…僕もその血を受け継いでいる。母が亡くなった後、僕はすぐに母が契約していた聖獣と契約を結び直した…。それが母の願いでもあったからね…。この血を途絶えさせない様に…。この力があったからこそ、僕は過去に戻ることが出来たんだ…」
「……うん」
バルは静かに優しい口調で話し始めた。
「僕達がいるこのエーレンベルク大国というのは世界ではそれなりに力を持った国だ。どうしてその力を保持出来るのか…、それは数百年前からある力に頼っているからなんだ…」
「ある…力…?」
「この世界には『聖女』と呼ばれる存在がいる。彼女が祈る事で、どんな外敵からも守れる強固な結界を作り上げることが可能なんだ。我が国エーレンベルクもその聖女の結界のおかげで、この何百年平和を守り続けることが出来ていると言っても過言ではない…。逆に聖女の力が消えれば、この国はあらゆる外敵から狙われることになる。外敵と言うのは…敵国や魔物…それに伝染病や…干ばつ、嵐など…天候面なども含め様々だ……」
バルの話を聞いて『聖女』と呼ばれる存在がこの国を、如いてはこの世界を守っている存在なのだと言う事は十分に分かった。
この世界は私が知っている世界とはだいぶ異なる世界だと言う事を理解した。
聖女や魔物と言う単語が出てくると、まるでファンタジー世界の様に感じてしまう。
私はそんな世界に来てしまったと言う事なのだろうか…。
「聖女って大事な存在なんだね…」
「そうだね…。この国には必要不可欠な存在であるのは間違いないね。聖女に選ばれる人間は特殊な能力を生まれた時から身に着けている…。例えば傷を瞬時に癒す力だとか…、魔物を浄化させてしまう力とかね。人によって使える能力は様々だけど、大国を守るだけの力を持つ聖女は早々に見つけることは出来ない…。だけど国を守るために絶対に探し当てなくてはならない存在なんだ…」
「いなければ…国が滅んでしまう可能性もあるから…?」
「うん…、そうなんだ。だけど、それでもどうしても見つからない場合はある特殊な方法を使って呼ぶことになる。異世界召喚術を使って、違う世界から強引に呼び寄せる方法だ…。だけどこれは召喚する方に大分犠牲が伴うから最終手段だけどね…」
バルの言葉を聞いて私は嫌な予感を感じた。
鼓動がバクバクと早くなり、表情も曇り始めていく。
(まさか…それって……)
「ここまで話せば察しはついているかな…。シロは聖女としての素質を持っていて、いずれこの国に必要とされる存在になる…」
「わ…私にそんな力はありませんっ…!」
私は慌てる様にすぐさま言い返した。
私はただの女子大生で、そんな世界を救うような大それた力なんて持っているわけがない。
これは何かの間違えなのでは無いかと思った。
「こんな事を突然言われたら驚くのも当然だよね…。だけど間違いなく…シロはこの国を救うだけの聖女としての素質を持っている。…残念だけど、それは事実なんだ。でもね…、僕はシロの事を絶対に国の道具になんてさせるつもりはない…」
「……え?」
「聖女として認められてしまえば、一生この国に祈りを捧げなければならなくなる。自由なんてものは無いも同然だ。自分の意思とは別に良くも知らない国に突然呼ばれ、その挙句…国の為に一生を捧げろなんて馬鹿げた話だよね。だけどそれを強制的に強いられることになる…」
「……いやっ…、そんな…」
バルの話を聞いていると恐怖心が芽生え、私は泣きそうな顔で首を横に振った。
今すぐにでもここから逃げ出したいはずなのに体が震えているせいか動かない。
「僕だってそんな目には二度と合わせたく無い。その為に今シロをここに呼んだんだ…。シロをこの国から守るために…ね」
「それは…どういうこと…?」
私が不安そうな顔でバルに視線を向けると、バルは優しく微笑んでいた。
「シロをエーレンベルク大国の聖女には絶対に僕がさせない。そうならない様に…既に手は打ってある…。ここは王宮からも離れているし僕は王子ではあるけど…嫌われた存在だからね。滅多に人が寄り付く事も無いから安心して…」
「……私の事…守ってくれるの…?それなら…元いた世界に…返して…」
「シロ…ごめんね。それは出来ない…。もし可能だとしても、いずれシロは我が国の連中に見つかり再び召喚されることになるだろう…」
「どうして…そう言い切れるの…?」
私がむっとした顔でバルを睨みつけると、バルは悲しそうな表情を浮かべていた。
その顔を見ると胸の奥がなんだか傷んでしまう。
「僕はね…、一度この世界を見て来ているんだ。こんな事を言っても信じてもらえるか分からないけど、僕にとってはこの人生は二度目になる。最初の人生で僕は大事なものを国に奪われた…、守りたかったけど…力不足でそれは叶わなかったんだ……」
バルは悔しそうに表情を歪ませていた。
その顔を見ていると、バルが言っていることが嘘だとは思えなかった。
もしここが異世界だと言うのであれば、バルの言ってる話だって有り得ない話ではないだろう。
すでに現実離れした事ばかり聞いていたので、私は多少の事では驚かなくなっていたのかもしれない。
「僕の母の家系は代々聖獣使いの血を引いていてね…僕もその血を受け継いでいる。母が亡くなった後、僕はすぐに母が契約していた聖獣と契約を結び直した…。それが母の願いでもあったからね…。この血を途絶えさせない様に…。この力があったからこそ、僕は過去に戻ることが出来たんだ…」
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