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62.彼女との出会い②-sideヴィム-
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※暫く過去の話になります。
「隣、空いているか?」
「……あ、空いてま……っ!?」
私は何食わぬ顔で彼女に近付いてみることにした。
声を掛けると彼女は顔を上げて返事を返してくれたが、私だと気付くととても驚いた表情をして暫く固まっていた。
「アリーセ・プラーム嬢でしたよね?」
「…………」
彼女の隣の席に座り、愛想の良い笑顔を向けて話を進めて行く。
「驚かせてしまったか?」
「……っ、い、いえ……」
「以前お茶会でお会いしましたよね。今度は同じクラスメイトとしてよろしくな」
「……よろしく、お願いします……殿下」
彼女は戸惑いながらも消えそうな程の小さな声で挨拶をしていた。
(彼女がアリーセ・プラームだよな? こんなにおどおどして、貴族令嬢という感じが全くしないな。私に話しかけられて緊張しているだけなのか?)
最初は突然私に話しかけられて、緊張からこんな態度を取っているだけでは無いかと思っていた。
その後も彼女の様子を気に掛けて見ているとある事に気付いた。
彼女は私だけでは無く、他のクラスメイトに対しても落ち着かない態度を見せていた。
話掛けられるとそわそわし始め、適当に相槌を打って逃げるようにどこかに消えていく。
友人らしき者の姿も無く、彼女はいつも一人で過ごしていた。
私の中で貴族令嬢とは、お喋りや噂好きだというイメージがあった。
彼女達の傍にいるといつでも話が尽きることがない。
令嬢全てがそうとは言わないが、少なくとも私に好意的に近づいて来る令嬢はそういうタイプばかりだった。
だから真逆の彼女に対して興味を持ち始めた。
***
昼休みになるといつも彼女はすぐに教室を出て行く。
私はどこに行くのか興味を持ち、彼女の後をつけてみることにした。
「ヴィム殿下、お昼良かったら私達とご一緒しませんか?」
「悪いな、今日は少し予定があるんだ。またの機会に誘ってくれると嬉しいよ」
廊下を歩いていると、令嬢達から何度か呼び止められた。
王子であるため外面は良く見せた方が無難だ。
その為面倒ではあるが、人前では決して本性を見せず愛想の良さそうな仮面を付けて接している。
これは幼い頃から続けて来た事であり、今となってはもう慣れている。
そして彼女を追って歩いて行くと、中庭を出て中央にあるベンチへと腰掛けていた。
隣にはバスケットが置いてあり、ここで食事を取っているのだと気付いた。
(こんな場所で一人で昼食を食べているのか……?)
「アリーセ嬢、こんな所で一人で食事ですか?」
「……っ!? ……ごほっ、ごほっ……」
私が話掛けると、バケットサンドにかじりついている彼女の顔がこちらに向いた。
そして驚かせてしまったせいか、喉に詰まらせてしまった様だ。
「悪い、大丈夫か?」
「……ごほっ、……だ、だい、じょうぶ……」
私はすぐに彼女の隣に座り、横に置かれていた飲み物を手に取り渡した。
彼女は涙目で飲み物を受け取ると、数口喉に流して漸く落ち着きを取り戻したようだ。
「驚かせてしまってすまなかったな」
「……いえ、あの、それよりどうして殿下がここに……」
「アリーセ嬢っていつも一人で居るから、気になって後をつけたんだ」
「……!?」
「随分驚いた顔だな。まあ、当然か。君には友人はいないのか?」
「……いません」
私が直球で問いかけると、彼女は目を泳がせながら戸惑いがちに答えていた。
(やっぱりそうか……)
思った通りだった。
だけど、これは彼女に近付くチャンスかもしれない。
「そんな困った顔をしなくていい。私も同類だからな」
「え?」
その言葉に彼女は目を丸くしていた。
一々過剰に反応して来る彼女を見て、また面白いと思った。
彼女を見ていればそれはわざとそうしているのではなく、本気で驚いていると分かったからだ。
「良かったら、私と友人になってくれないか?」
「……っ!? む、無理……です」
「どうして無理か聞いてもいいか?」
「それは……、わ、私、人と話すのが苦手で。それに殿下と友人になったら、失礼なこととか、言ってしまうかもしれないから……ご、ごめんなさいっ!」
彼女は焦りながら泣きそうな顔で謝って来た。
「失礼なことか……。別に構わない。ここに在籍している間は身分は平等だと言っていただろう?だから失礼なことを言っても構わないし、素直に思っていることを言ってくれて問題無いよ」
「で、でもっ……」
そんな事を伝えても彼女の表情は困惑したままだった。
突然こんな事を言われたら戸惑うのも分かっていたが、この折角のチャンスを逃したくはなかった。
「どうしても無理か?」
「ごめんなさい……」
「それならこうしないか? 俺はアリーセ嬢の前では素の自分を見せる。なるべく話しやすい状況を作るから、まずはお試しで友人になってはくれないか? それでも無理だと言う時は、別の方法を考える」
「強引、ですね……」
「そうだな、俺は割と諦めが悪い性格なんだ。だからお前が認めるまで何度だって話しかけるよ」
「……今までの殿下は偽物って事ですか? 言葉遣いが、なんか違う……」
「くくっ、偽物か……。そうだな。あれは外面を良く見せるための仮の顔だ。一応王子だから変なイメージを持たれると後々やりづらくなるんだよ」
「…………」
彼女はこの話を聞いて信じられないと言った顔をしていた。
「どうして、私にそんな事言うんですか? まずく無いですか?隠していたのに……」
「お前は他の令嬢とは違う気がしたからな。なんていうか、アリーセ嬢とは上手くやっていけそうな気がしたからな」
咄嗟に頭の中で閃いてそういうことにしただけであり、これはあくまで演技だった。
恐らく外面が良いだけの私には、彼女は決して靡かない気がしたから。
それならば半ば強引に話を進めるしか無かった。
少しでも口調を砕けた感じに見せれば、彼女もそのうち心を向けてくれるかも知れないと思った。
「折角の学園生活だろう? 友人を作るのもいい経験になるはずだ。特にアリーセ嬢は優秀だから、俺自身興味を持っていたんだ」
「……っ、優秀なのは殿下の方です。どうしたら、あんな満点取れるんですか?」
彼女はムッとした顔で不満そうに聞いて来た。
「その方法が知りたいのなら、尚更俺と友人になった方が良く無いか? 勉強、教えてやってもいいぞ」
「え!? ほ、本当に……?」
先程まで不満そうにしていた彼女の顔は一瞬で輝いた瞳に変わった。
(随分と分かりやすいな……)
「ああ、勿論だ」
「私が次の試験で一位を取っても文句は言いませんか?」
「ぷっ……」
「……!?」
彼女が余りにも真剣な顔で言って来るものだから思わず吹き出してしまった。
ころころと表情を変えていく彼女を見て、この時にはもう惹かれていたのかもしれない。
彼女に興味を持っていたのは確かだった。
「お前、面白いな。取れるものなら取ってみたら良い」
「言いましたねっ! 私、頑張ります!」
気付けば彼女は普通に私と接していた。
素直というか単純と言うか、そう言う所がすごく可愛いと思った。
「食事中にすまなかったな。友人になったのだから、明日からは一緒に食事をしないか?アリーセ嬢の事をもっと知りたくなった」
「……っ……」
「大口を開けてバケットサンドにかじりつく令嬢なんて今まで見たことが無い。お前って本当に面白いな。声を掛けて正解だったよ」
「……っ……!!」
私が笑いながら冗談を飛ばすと、彼女の顔は沸騰したかのように真っ赤に染まっていく。
こんなにも誰かに興味を惹かれることなんて今までにあっただろうか。
恐らく無いだろう。
無かったからこそ、彼女にどんどん惹かれていった。
「隣、空いているか?」
「……あ、空いてま……っ!?」
私は何食わぬ顔で彼女に近付いてみることにした。
声を掛けると彼女は顔を上げて返事を返してくれたが、私だと気付くととても驚いた表情をして暫く固まっていた。
「アリーセ・プラーム嬢でしたよね?」
「…………」
彼女の隣の席に座り、愛想の良い笑顔を向けて話を進めて行く。
「驚かせてしまったか?」
「……っ、い、いえ……」
「以前お茶会でお会いしましたよね。今度は同じクラスメイトとしてよろしくな」
「……よろしく、お願いします……殿下」
彼女は戸惑いながらも消えそうな程の小さな声で挨拶をしていた。
(彼女がアリーセ・プラームだよな? こんなにおどおどして、貴族令嬢という感じが全くしないな。私に話しかけられて緊張しているだけなのか?)
最初は突然私に話しかけられて、緊張からこんな態度を取っているだけでは無いかと思っていた。
その後も彼女の様子を気に掛けて見ているとある事に気付いた。
彼女は私だけでは無く、他のクラスメイトに対しても落ち着かない態度を見せていた。
話掛けられるとそわそわし始め、適当に相槌を打って逃げるようにどこかに消えていく。
友人らしき者の姿も無く、彼女はいつも一人で過ごしていた。
私の中で貴族令嬢とは、お喋りや噂好きだというイメージがあった。
彼女達の傍にいるといつでも話が尽きることがない。
令嬢全てがそうとは言わないが、少なくとも私に好意的に近づいて来る令嬢はそういうタイプばかりだった。
だから真逆の彼女に対して興味を持ち始めた。
***
昼休みになるといつも彼女はすぐに教室を出て行く。
私はどこに行くのか興味を持ち、彼女の後をつけてみることにした。
「ヴィム殿下、お昼良かったら私達とご一緒しませんか?」
「悪いな、今日は少し予定があるんだ。またの機会に誘ってくれると嬉しいよ」
廊下を歩いていると、令嬢達から何度か呼び止められた。
王子であるため外面は良く見せた方が無難だ。
その為面倒ではあるが、人前では決して本性を見せず愛想の良さそうな仮面を付けて接している。
これは幼い頃から続けて来た事であり、今となってはもう慣れている。
そして彼女を追って歩いて行くと、中庭を出て中央にあるベンチへと腰掛けていた。
隣にはバスケットが置いてあり、ここで食事を取っているのだと気付いた。
(こんな場所で一人で昼食を食べているのか……?)
「アリーセ嬢、こんな所で一人で食事ですか?」
「……っ!? ……ごほっ、ごほっ……」
私が話掛けると、バケットサンドにかじりついている彼女の顔がこちらに向いた。
そして驚かせてしまったせいか、喉に詰まらせてしまった様だ。
「悪い、大丈夫か?」
「……ごほっ、……だ、だい、じょうぶ……」
私はすぐに彼女の隣に座り、横に置かれていた飲み物を手に取り渡した。
彼女は涙目で飲み物を受け取ると、数口喉に流して漸く落ち着きを取り戻したようだ。
「驚かせてしまってすまなかったな」
「……いえ、あの、それよりどうして殿下がここに……」
「アリーセ嬢っていつも一人で居るから、気になって後をつけたんだ」
「……!?」
「随分驚いた顔だな。まあ、当然か。君には友人はいないのか?」
「……いません」
私が直球で問いかけると、彼女は目を泳がせながら戸惑いがちに答えていた。
(やっぱりそうか……)
思った通りだった。
だけど、これは彼女に近付くチャンスかもしれない。
「そんな困った顔をしなくていい。私も同類だからな」
「え?」
その言葉に彼女は目を丸くしていた。
一々過剰に反応して来る彼女を見て、また面白いと思った。
彼女を見ていればそれはわざとそうしているのではなく、本気で驚いていると分かったからだ。
「良かったら、私と友人になってくれないか?」
「……っ!? む、無理……です」
「どうして無理か聞いてもいいか?」
「それは……、わ、私、人と話すのが苦手で。それに殿下と友人になったら、失礼なこととか、言ってしまうかもしれないから……ご、ごめんなさいっ!」
彼女は焦りながら泣きそうな顔で謝って来た。
「失礼なことか……。別に構わない。ここに在籍している間は身分は平等だと言っていただろう?だから失礼なことを言っても構わないし、素直に思っていることを言ってくれて問題無いよ」
「で、でもっ……」
そんな事を伝えても彼女の表情は困惑したままだった。
突然こんな事を言われたら戸惑うのも分かっていたが、この折角のチャンスを逃したくはなかった。
「どうしても無理か?」
「ごめんなさい……」
「それならこうしないか? 俺はアリーセ嬢の前では素の自分を見せる。なるべく話しやすい状況を作るから、まずはお試しで友人になってはくれないか? それでも無理だと言う時は、別の方法を考える」
「強引、ですね……」
「そうだな、俺は割と諦めが悪い性格なんだ。だからお前が認めるまで何度だって話しかけるよ」
「……今までの殿下は偽物って事ですか? 言葉遣いが、なんか違う……」
「くくっ、偽物か……。そうだな。あれは外面を良く見せるための仮の顔だ。一応王子だから変なイメージを持たれると後々やりづらくなるんだよ」
「…………」
彼女はこの話を聞いて信じられないと言った顔をしていた。
「どうして、私にそんな事言うんですか? まずく無いですか?隠していたのに……」
「お前は他の令嬢とは違う気がしたからな。なんていうか、アリーセ嬢とは上手くやっていけそうな気がしたからな」
咄嗟に頭の中で閃いてそういうことにしただけであり、これはあくまで演技だった。
恐らく外面が良いだけの私には、彼女は決して靡かない気がしたから。
それならば半ば強引に話を進めるしか無かった。
少しでも口調を砕けた感じに見せれば、彼女もそのうち心を向けてくれるかも知れないと思った。
「折角の学園生活だろう? 友人を作るのもいい経験になるはずだ。特にアリーセ嬢は優秀だから、俺自身興味を持っていたんだ」
「……っ、優秀なのは殿下の方です。どうしたら、あんな満点取れるんですか?」
彼女はムッとした顔で不満そうに聞いて来た。
「その方法が知りたいのなら、尚更俺と友人になった方が良く無いか? 勉強、教えてやってもいいぞ」
「え!? ほ、本当に……?」
先程まで不満そうにしていた彼女の顔は一瞬で輝いた瞳に変わった。
(随分と分かりやすいな……)
「ああ、勿論だ」
「私が次の試験で一位を取っても文句は言いませんか?」
「ぷっ……」
「……!?」
彼女が余りにも真剣な顔で言って来るものだから思わず吹き出してしまった。
ころころと表情を変えていく彼女を見て、この時にはもう惹かれていたのかもしれない。
彼女に興味を持っていたのは確かだった。
「お前、面白いな。取れるものなら取ってみたら良い」
「言いましたねっ! 私、頑張ります!」
気付けば彼女は普通に私と接していた。
素直というか単純と言うか、そう言う所がすごく可愛いと思った。
「食事中にすまなかったな。友人になったのだから、明日からは一緒に食事をしないか?アリーセ嬢の事をもっと知りたくなった」
「……っ……」
「大口を開けてバケットサンドにかじりつく令嬢なんて今まで見たことが無い。お前って本当に面白いな。声を掛けて正解だったよ」
「……っ……!!」
私が笑いながら冗談を飛ばすと、彼女の顔は沸騰したかのように真っ赤に染まっていく。
こんなにも誰かに興味を惹かれることなんて今までにあっただろうか。
恐らく無いだろう。
無かったからこそ、彼女にどんどん惹かれていった。
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