婚約者が好きなのは妹だと告げたら、王子が本気で迫ってきて逃げられなくなりました

Rila

文字の大きさ
27 / 36
連載

61.彼女との出会い①-sideヴィム-

しおりを挟む
 気絶した彼女の体を拭いてベッドに仰向けに寝かせると、その寝顔を暫くの間眺めていた。
 髪を柔らかく撫でていると、寝ている彼女は時折気持ち良さそうに口元を緩ませる。
 その表情を眺めているだけで、こちらまで嬉しい気持ちになってしまうのはどうしてだろう。

「寝ているのに、随分嬉しそうな顔をして……、お前はいつでも可愛いな」

 独り言を呟くと、彼女の瞼にそっとキスを落とした。

「アリーセの全てを独り占めしたくなる……」

 それは私の本心だ。

 彼女を人目に付かない場所に隠してしまいたい。
 この愛らしい姿は誰にも見せたくない。
 この可愛らしい唇から呼ぶ名は私だけだったらどんなにいいか……。
 彼女を見る度にいつも思ってしまう。


 私の名前はヴィム・フレイ・ザイフリート。
 国王陛下と王妃の間に生まれた初子であり、第一王子だ。

 幼い頃から厳しい教育を強制的に強いられ、他の兄弟みたいに母親である王妃の傍に行く事さえ制限されていた。
 だけど羨ましいなんて思ったことなど一度も無い。
 私はこの国を背負う者として生きることを教え込まれていたので、そういうものなのだと物心が着く頃には理解していた。
 周りは厳しい教育と言う者もいたが、色々な知識を取り入れることはそれなりに面白かったし、不満を感じたことも余りなかった。

 そして幼い頃から私に媚びて来る大人は何かと多かった。
 そんな者達に囲まれていたせいで、平気で嘘を付く人間や、都合の良い言葉ばかり言って来る者達に嫌気が差していった。
 これが人を中々信用出来なくなったきっかけの一つなのだと思う。
 こんな者達に囲まれた生活を送っていたせいで、いつしか嘘を見抜くのも上手くなっていった。

 一番煩わしい問題が、婚約者の話だった。
 最初は王妃が勝手に候補者を選んでいたが、私は全て一蹴した。
 理由は簡単だ。信用できない相手を傍に置くなんて気持ちが悪い。
 それに私は未来の王になる人間なのだから、間違った選択をしたら取り返しがつかなくなる。
 そんな事を言って王妃を説得し、婚約者探しの話は後回しにさせていた。

 しかし王家主催のお茶会は定期的に開かれ、それには強制的に参加させられた。
 王妃曰く、自分の目で見るのが一番だと言って来たのだ。
 どの令嬢も私の立場や外見だけにしか興味が無いように見えて、婚約者にしたいと思える程の者を見つけることなど出来なかった。
 中には学力や作法に長けている令嬢はいたが、今傍に置いておく必要性を感じなかった。
 今後もっとふさわしい令嬢に出会えるかもしれない。
 婚約解消なんて話になったら、色々と面倒なだけだ。

 私は愛などと言うものには一切興味は無かった。
 誰かを愛する事なんて、自分には無縁だとその時は本気で思っていた。


 それから15歳を迎え、王立学園に入学する事となった。
 いい加減婚約者を決めようとしない私に痺れを切らしたのか、王妃が条件を出して来た。
 学園生活を送りながら婚約者を自分で選ぶ様にと。
 もしこの卒業後までに見つけることが出来なければ、強制的に王妃が相手を決めるとまで言って来た。
 年齢を考えれば、そろそろ本気で考えなければならない問題だということは私自身も分かっていた。

 学園に入学したら、成績上位者である者を自分の目で判断することが出来る。
 その者が相応しい相手なのか見極めるのにも、もってこいの環境だった。

 成績は顕著に数字で表れる。
 それは試験での点数が毎回掲示板に張り出されるからだ。
 当然私は1位しか取らなかったが、2位にいた令嬢に目を付けた。

 それがアリーセ・プラームだった。
 伯爵家の令嬢であり、身分は何ら問題無い。
 しかし当時彼女には婚約者がいた。
 だけど私には些細なことに過ぎなかった。
 もし彼女が相応しい相手だと分かれば、強制的に私の婚約者にさせることが可能だからだ。
 彼女に恨まれようが、嫌われようがどうだっていい。
 当然愛される事も望んでないし、私自身も彼女を愛するなんてことは無いと思っていた。

 まずは彼女について徹底的に調べさせた。
 すると予想外なことがいくつも分かっていく。
 彼女には双子の妹がいたが、幼い頃に事故死していた。
 母親は精神病を患い、更には死んだ妹の代わりに養子を取っている事。
 そしてその妹と彼女の婚約者が密会している事実も知る事となった。

 最初は憐れんだ。
 だけど奪うのには都合がいい。
 もし私の婚約者に選んだ場合、説得も簡単に行くだろうと思ったからだ。

 私の意図が読み取られない様に、愛想の良い仮面を被り彼女に近付いた。
 彼女とはお茶会で何度か顔合わせをした事があったので初対面では無かったが、その時は興味も無かったのでこれといって印象も特には持ってはいなかった。

 だけど学園で再び見た彼女は、私に鋭い視線を向けていた。
 それは睨んでいると取れる表情だった。
 彼女に好意的には思われていないことは分かったが、躊躇する事無く近づいた。

 今まで私に表立ってこんな態度を取って来る者なんていなかった。
 そのせいか、初めて彼女に抱いた感情は『面白い』だった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。