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61.彼女との出会い①-sideヴィム-
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気絶した彼女の体を拭いてベッドに仰向けに寝かせると、その寝顔を暫くの間眺めていた。
髪を柔らかく撫でていると、寝ている彼女は時折気持ち良さそうに口元を緩ませる。
その表情を眺めているだけで、こちらまで嬉しい気持ちになってしまうのはどうしてだろう。
「寝ているのに、随分嬉しそうな顔をして……、お前はいつでも可愛いな」
独り言を呟くと、彼女の瞼にそっとキスを落とした。
「アリーセの全てを独り占めしたくなる……」
それは私の本心だ。
彼女を人目に付かない場所に隠してしまいたい。
この愛らしい姿は誰にも見せたくない。
この可愛らしい唇から呼ぶ名は私だけだったらどんなにいいか……。
彼女を見る度にいつも思ってしまう。
私の名前はヴィム・フレイ・ザイフリート。
国王陛下と王妃の間に生まれた初子であり、第一王子だ。
幼い頃から厳しい教育を強制的に強いられ、他の兄弟みたいに母親である王妃の傍に行く事さえ制限されていた。
だけど羨ましいなんて思ったことなど一度も無い。
私はこの国を背負う者として生きることを教え込まれていたので、そういうものなのだと物心が着く頃には理解していた。
周りは厳しい教育と言う者もいたが、色々な知識を取り入れることはそれなりに面白かったし、不満を感じたことも余りなかった。
そして幼い頃から私に媚びて来る大人は何かと多かった。
そんな者達に囲まれていたせいで、平気で嘘を付く人間や、都合の良い言葉ばかり言って来る者達に嫌気が差していった。
これが人を中々信用出来なくなったきっかけの一つなのだと思う。
こんな者達に囲まれた生活を送っていたせいで、いつしか嘘を見抜くのも上手くなっていった。
一番煩わしい問題が、婚約者の話だった。
最初は王妃が勝手に候補者を選んでいたが、私は全て一蹴した。
理由は簡単だ。信用できない相手を傍に置くなんて気持ちが悪い。
それに私は未来の王になる人間なのだから、間違った選択をしたら取り返しがつかなくなる。
そんな事を言って王妃を説得し、婚約者探しの話は後回しにさせていた。
しかし王家主催のお茶会は定期的に開かれ、それには強制的に参加させられた。
王妃曰く、自分の目で見るのが一番だと言って来たのだ。
どの令嬢も私の立場や外見だけにしか興味が無いように見えて、婚約者にしたいと思える程の者を見つけることなど出来なかった。
中には学力や作法に長けている令嬢はいたが、今傍に置いておく必要性を感じなかった。
今後もっとふさわしい令嬢に出会えるかもしれない。
婚約解消なんて話になったら、色々と面倒なだけだ。
私は愛などと言うものには一切興味は無かった。
誰かを愛する事なんて、自分には無縁だとその時は本気で思っていた。
それから15歳を迎え、王立学園に入学する事となった。
いい加減婚約者を決めようとしない私に痺れを切らしたのか、王妃が条件を出して来た。
学園生活を送りながら婚約者を自分で選ぶ様にと。
もしこの卒業後までに見つけることが出来なければ、強制的に王妃が相手を決めるとまで言って来た。
年齢を考えれば、そろそろ本気で考えなければならない問題だということは私自身も分かっていた。
学園に入学したら、成績上位者である者を自分の目で判断することが出来る。
その者が相応しい相手なのか見極めるのにも、もってこいの環境だった。
成績は顕著に数字で表れる。
それは試験での点数が毎回掲示板に張り出されるからだ。
当然私は1位しか取らなかったが、2位にいた令嬢に目を付けた。
それがアリーセ・プラームだった。
伯爵家の令嬢であり、身分は何ら問題無い。
しかし当時彼女には婚約者がいた。
だけど私には些細なことに過ぎなかった。
もし彼女が相応しい相手だと分かれば、強制的に私の婚約者にさせることが可能だからだ。
彼女に恨まれようが、嫌われようがどうだっていい。
当然愛される事も望んでないし、私自身も彼女を愛するなんてことは無いと思っていた。
まずは彼女について徹底的に調べさせた。
すると予想外なことがいくつも分かっていく。
彼女には双子の妹がいたが、幼い頃に事故死していた。
母親は精神病を患い、更には死んだ妹の代わりに養子を取っている事。
そしてその妹と彼女の婚約者が密会している事実も知る事となった。
最初は憐れんだ。
だけど奪うのには都合がいい。
もし私の婚約者に選んだ場合、説得も簡単に行くだろうと思ったからだ。
私の意図が読み取られない様に、愛想の良い仮面を被り彼女に近付いた。
彼女とはお茶会で何度か顔合わせをした事があったので初対面では無かったが、その時は興味も無かったのでこれといって印象も特には持ってはいなかった。
だけど学園で再び見た彼女は、私に鋭い視線を向けていた。
それは睨んでいると取れる表情だった。
彼女に好意的には思われていないことは分かったが、躊躇する事無く近づいた。
今まで私に表立ってこんな態度を取って来る者なんていなかった。
そのせいか、初めて彼女に抱いた感情は『面白い』だった。
髪を柔らかく撫でていると、寝ている彼女は時折気持ち良さそうに口元を緩ませる。
その表情を眺めているだけで、こちらまで嬉しい気持ちになってしまうのはどうしてだろう。
「寝ているのに、随分嬉しそうな顔をして……、お前はいつでも可愛いな」
独り言を呟くと、彼女の瞼にそっとキスを落とした。
「アリーセの全てを独り占めしたくなる……」
それは私の本心だ。
彼女を人目に付かない場所に隠してしまいたい。
この愛らしい姿は誰にも見せたくない。
この可愛らしい唇から呼ぶ名は私だけだったらどんなにいいか……。
彼女を見る度にいつも思ってしまう。
私の名前はヴィム・フレイ・ザイフリート。
国王陛下と王妃の間に生まれた初子であり、第一王子だ。
幼い頃から厳しい教育を強制的に強いられ、他の兄弟みたいに母親である王妃の傍に行く事さえ制限されていた。
だけど羨ましいなんて思ったことなど一度も無い。
私はこの国を背負う者として生きることを教え込まれていたので、そういうものなのだと物心が着く頃には理解していた。
周りは厳しい教育と言う者もいたが、色々な知識を取り入れることはそれなりに面白かったし、不満を感じたことも余りなかった。
そして幼い頃から私に媚びて来る大人は何かと多かった。
そんな者達に囲まれていたせいで、平気で嘘を付く人間や、都合の良い言葉ばかり言って来る者達に嫌気が差していった。
これが人を中々信用出来なくなったきっかけの一つなのだと思う。
こんな者達に囲まれた生活を送っていたせいで、いつしか嘘を見抜くのも上手くなっていった。
一番煩わしい問題が、婚約者の話だった。
最初は王妃が勝手に候補者を選んでいたが、私は全て一蹴した。
理由は簡単だ。信用できない相手を傍に置くなんて気持ちが悪い。
それに私は未来の王になる人間なのだから、間違った選択をしたら取り返しがつかなくなる。
そんな事を言って王妃を説得し、婚約者探しの話は後回しにさせていた。
しかし王家主催のお茶会は定期的に開かれ、それには強制的に参加させられた。
王妃曰く、自分の目で見るのが一番だと言って来たのだ。
どの令嬢も私の立場や外見だけにしか興味が無いように見えて、婚約者にしたいと思える程の者を見つけることなど出来なかった。
中には学力や作法に長けている令嬢はいたが、今傍に置いておく必要性を感じなかった。
今後もっとふさわしい令嬢に出会えるかもしれない。
婚約解消なんて話になったら、色々と面倒なだけだ。
私は愛などと言うものには一切興味は無かった。
誰かを愛する事なんて、自分には無縁だとその時は本気で思っていた。
それから15歳を迎え、王立学園に入学する事となった。
いい加減婚約者を決めようとしない私に痺れを切らしたのか、王妃が条件を出して来た。
学園生活を送りながら婚約者を自分で選ぶ様にと。
もしこの卒業後までに見つけることが出来なければ、強制的に王妃が相手を決めるとまで言って来た。
年齢を考えれば、そろそろ本気で考えなければならない問題だということは私自身も分かっていた。
学園に入学したら、成績上位者である者を自分の目で判断することが出来る。
その者が相応しい相手なのか見極めるのにも、もってこいの環境だった。
成績は顕著に数字で表れる。
それは試験での点数が毎回掲示板に張り出されるからだ。
当然私は1位しか取らなかったが、2位にいた令嬢に目を付けた。
それがアリーセ・プラームだった。
伯爵家の令嬢であり、身分は何ら問題無い。
しかし当時彼女には婚約者がいた。
だけど私には些細なことに過ぎなかった。
もし彼女が相応しい相手だと分かれば、強制的に私の婚約者にさせることが可能だからだ。
彼女に恨まれようが、嫌われようがどうだっていい。
当然愛される事も望んでないし、私自身も彼女を愛するなんてことは無いと思っていた。
まずは彼女について徹底的に調べさせた。
すると予想外なことがいくつも分かっていく。
彼女には双子の妹がいたが、幼い頃に事故死していた。
母親は精神病を患い、更には死んだ妹の代わりに養子を取っている事。
そしてその妹と彼女の婚約者が密会している事実も知る事となった。
最初は憐れんだ。
だけど奪うのには都合がいい。
もし私の婚約者に選んだ場合、説得も簡単に行くだろうと思ったからだ。
私の意図が読み取られない様に、愛想の良い仮面を被り彼女に近付いた。
彼女とはお茶会で何度か顔合わせをした事があったので初対面では無かったが、その時は興味も無かったのでこれといって印象も特には持ってはいなかった。
だけど学園で再び見た彼女は、私に鋭い視線を向けていた。
それは睨んでいると取れる表情だった。
彼女に好意的には思われていないことは分かったが、躊躇する事無く近づいた。
今まで私に表立ってこんな態度を取って来る者なんていなかった。
そのせいか、初めて彼女に抱いた感情は『面白い』だった。
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