婚約者が好きなのは妹だと告げたら、王子が本気で迫ってきて逃げられなくなりました

Rila

文字の大きさ
29 / 36
連載

63.彼女との出会い③-sideヴィム-

しおりを挟む
 彼女と接して行くうちにアリーセ・プラームがどういった人物なのか大体分かってきた。
 反応が分かりやすかった為、理解するまでにそう時間はかからなかった。

 彼女は虚勢を張る癖があるようだが、それは負けず嫌いから来ているみたいだ。
 最初は強がった態度を見せるが、口だけに終わらずそれに見合うだけの努力を決して怠らない。
 恐らく幼い頃からそういうやり方をしてきたのだろう。

 接していて気付いたことだが、彼女は一度も勉強に対して不満をぶつけたことは無かった。
 寧ろ分からない事を楽しんでいる様に見えたくらいだ。
 本当に不思議な令嬢だ。

 すぐに顔に感情が出るタイプなので分かりやすいが、突然思いも寄らないことを言い出したり、予想を超えた行動に出ることもあったりして、一緒にいると退屈とは無縁そうだ。
 しっかりしてそうなのに、何もない所で突然転んだり危なっかしくて目が離せなくなる。

 この時に抱いていた感情はまだ恋と呼べるものでは無かったが、確実に彼女に対して特別な目を向け始めていたと思う。
 しかし彼女はと言うと、私に対して全くそういった感情を見せることは無かった。
 この時はまだ彼女には婚約者の存在がいたのだから当然だと言われればそうなるが、私に全く興味を示さない態度にどこか不満を持ち始めていた。


「……また、負けた」
「惜しかったな。だけどこの難しい問いも正解しているし、満点に近付いて来たんじゃないか?」

 放課後の教室で、お互いの答案用紙に目を通しながら話をしていた。
 教室には私と彼女の二人だけしかいなかったが、この光景は珍しいものでは無かった。
 こうやって放課後残って、二人で勉強会を開くことは良くあることだったからだ。

 彼女は分からない事や不安なことがあるとすぐに私を頼って来る。
 頼られる事は嬉しかったので、私も素直に彼女の勉強に付き合っていた。

「殿下はどうして毎回満点しか取らないんですか? 私も、頑張ってるのに……。何が足りないんだろう」
「お前の場合、ミスが最後の方に集中しているよな」

「お前って結構考えるタイプだろ?」
「はい……」

「答えを何度も見直して確認しているから、後半時間が無くなって焦るんじゃないか?」
「あ……、たしかにそれはある気がします。最後いつも時間がなくて焦ってる気がする」
 彼女はハッと思い出したかのように呟いた。

「まずは全部解いて時間が余っていたら見直しをしてみたらどうだ?その方が焦らないし、時間にも余裕が出来ると思うぞ」

 私が答えると彼女はじっとこちらを見つめていた。

「どうした?」
「殿下は私のこと、良く見ていてくれているんですね。さすが先生ですっ!」

「先生か、面白い事を言うな」
「だって、いつも私の勉強を見てくれるし、教え方も上手いし……。殿下は先生になれる素質がありますね! 私は教え方がすごく下手で、以前妹から『何を言っているか分からない』と言われたことがあって……。でも、私だって教え方を勉強すれば多分上手くなれる筈よ……」

 彼女は過去を思い出す様にブツブツと不満げに呟いていた。

「ぷっ……」
「……!? な、なんですか?」

「お前ってやっぱり面白いな。その負けず嫌いな所、俺は好きだよ」
「す、好きっ!?」

 私が何気なく呟いた言葉に彼女は反応し、顔を赤く染めていた。

(顔が真っ赤だ。本当に素直に反応するな……)

 私の言葉に一々一喜一憂して、色んな表情を見せて来る。
 彼女の姿を見て私自身も自然に笑っていたことに気付く。
 今まで作られた笑顔を向けるばかりだった私が、心の底から笑っていた。
 彼女の傍にいるだけで、私自身も変わっていく様な気がした。
 そしてそれは決して嫌な気はしなかった。

「そんなに顔を赤く染めて、褒められるのが本当に嬉しいんだな。お前は褒められると伸びるタイプだよな」
「……っ、そんなことは……」

「あるだろう? それとも、俺に好きだと言われて照れているだけか?」
「ち、違っ……!」

 少し意地悪そうな言葉を並べると、彼女は目を泳がせて動揺する。
 彼女から出た言葉を聞いて私は僅かに目を細めた。

 何故か否定されたことがひどく不満に感じた。
 だけど何だか分からない気持ちを飲み込んで、表情を緩めた。

「素直じゃないお前には罰として、……そうだな、この間違えた問題の正解を導いて、それを俺が納得出来るように説明してみて。それが出来るまで帰してやらないからな」
「……っ!!」

 その言葉を聞くと彼女は焦った顔を見せた。

(少し意地悪な事を言ったか……。だけどこれで暫くの間アリーセは俺の傍から離れられないな)

「安心しろ、解説はちゃんとするから。それに人に説明出来るようになれば、お前ももっと成長出来るんじゃないか?」
「殿下ってやっぱり優しいですね。私、そんな優しい殿下のこと好きですっ!いつも私の勉強に付き合ってくれてありがとうございます」

 彼女に『好き』と言われた瞬間、胸の奥が急に熱くなった。
 感謝の意味でそう言っただけだということは分かっていたが、彼女の口から出た『好き』という言葉が胸にいつまでも響いていた。

 彼女といると単色だった世界に、まるで色が灯ったかのように明るくなる。
 今まで見ていた世界とは違う場所にいるような錯覚を感じ、鼓動がドクドクと脈打っていた。

 その時初めて思った。
 彼女の全てが欲しい、と――。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。