10 / 28
10.サプライズ
しおりを挟む
一度自室に戻り出かける準備をした後、私はルシエルと待ち合わせているエントランスへと降りていく。
このことをロゼに報告すると「良かったですね」と言って喜んでくれた。
(お兄様は、まだみたいね)
私は周辺に視線を巡らせてみるが、彼の姿はまだ見当たらない。
暫く待っていれば直に現れるだろう。
ここに来てから、さらに私の鼓動は高鳴り、これからのことを想像して期待を膨らませていく。
(今日はずっとお兄様の傍にいられるんだ。嬉しいけど、恋人のようにってどうすればいいんだろう……)
私達は現在タウンハウスで暮らしているため、王都の中心部まで行くのにそう時間はかからない。
ここでの生活を拠点にしているのには理由がある。
まず父が王宮務めをしているからだ。それに王立学園も王都内に置かれている。
公爵領から王都までは馬車で二日ほどかかる距離にあり、月に二回ほど父は様子を見にいく。
(そういえば、私、領地には一度も行ったことがない気がする)
養子になる以前から、私はこの王都内で暮らしていたため違和感を持つこともなかった。
ここには二つの家族と過ごした、どちらも大切な思い出が詰まっているので、出来ればここから離れたくないという思いも強い。
そういった理由から、私はあまり領地に関して興味を持たなかったのだろう。
そんなことを考えていると入り口が開き、扉の前にはルシエルが立っていた。
「もしかして待たせてしまったかな?」
「いえ、今さっき来たばかりです。お兄様は外にいらしたんですか?」
「うん、馬車の準備をしていたんだ。それじゃあ、行こうか」
「はいっ!」
ルシエルは私の前にすっと手を出してきた。
私はそれを見て一度は戸惑った顔を見せるも彼の手をとる。
(これくらいなら、大丈夫……だよね)
周囲には使用人の姿も数名見えるが、手を繋ぐことは今まで何度もしてきたことだし、きっと珍しくはないはずだ。
それは幼い頃の話になるが、今は余計なことは気にしないでおこう。
「今日のフィーは素直だね。いいことだ」
「……っ」
そんな風に、直接口に出されると恥ずかしくなるのでやめてもらいたい。
だけど言い返せば、意地悪されることは分かっていたので私は耐えることにした。
(今は出来る限り、目立たずやり過ごそう)
扉を出ると、すぐ傍には馬車が止められていた。きっと彼が手配してくれたのだろう。
馬車の扉は空いていて、中を覗くと椅子の上に大きな箱が置かれている。
(綺麗にラッピングされてるけど、なんだろう……)
よく見るとピンク色のリボンが付けられており、見るからにプレゼントのようだ。
私は不思議に思いながらも、馬車の中へと乗り込む。
続いて彼も馬車の中に入って来ると、当然のように私の隣へと腰を下ろした。
「フィー、それは一つ目のプレゼントだよ」
「え?」
なんとなく想像はしていたが、私は突然のことに戸惑ってしまう。
すると彼はそれを手に取り、私の膝の上に置いた。
「まずは開けてみて」
「はいっ」
私はお礼をいうことも忘れ頷くと、ゆっくりとラッピングのリボンを解いていく。
箱の蓋を持ち上げると、中には白地にピンク色のリボンが付けられた帽子が入っていた。
「……これ」
「今のフィーのワンピースにぴったりだとは思わない? 外は日差しも強いからね。日傘にしようか迷ったんだけど、帽子のほうが動きやすいかなと思ってそれにしてみたんだ」
出掛けることは今朝急に決まったはずなのに、タイミングを合わせたかのように現れた帽子に私は困惑する。
しかもこのワンピースを着たのも偶然だ。
一度は驚いてはしまったが、彼が私のために用意してくれたと思うと、嬉しい気持ちのほうが大きくなっていく。
(お兄様、いつ間に用意してくれたんだろう。すごく嬉しい! しかも可愛い)
私が黙って帽子を眺めていると、隣から「もしかして、気に入らなった?」と聞かれたので、私は首を何度も横に振った。
「すごく可愛いです! お兄様、ありがとうございますっ! 大切にしますね!」
「気に入ってもらえたみたいで良かったよ」
私が満面の笑みで答えると、ルシエルも満足そうに微笑んでいた。
今の表情で私の気持ちは彼に伝わったのだろう。
その姿を見ていると、ますます嬉しさが込み上げてきてしまい、緩んだ顔の戻し方が分からなくなる。
(行く前からこんなに嬉しい気持ちになるなんて……)
馬車はゆっくりと動き出し、私達は王都へと向かうこととなった。
このことをロゼに報告すると「良かったですね」と言って喜んでくれた。
(お兄様は、まだみたいね)
私は周辺に視線を巡らせてみるが、彼の姿はまだ見当たらない。
暫く待っていれば直に現れるだろう。
ここに来てから、さらに私の鼓動は高鳴り、これからのことを想像して期待を膨らませていく。
(今日はずっとお兄様の傍にいられるんだ。嬉しいけど、恋人のようにってどうすればいいんだろう……)
私達は現在タウンハウスで暮らしているため、王都の中心部まで行くのにそう時間はかからない。
ここでの生活を拠点にしているのには理由がある。
まず父が王宮務めをしているからだ。それに王立学園も王都内に置かれている。
公爵領から王都までは馬車で二日ほどかかる距離にあり、月に二回ほど父は様子を見にいく。
(そういえば、私、領地には一度も行ったことがない気がする)
養子になる以前から、私はこの王都内で暮らしていたため違和感を持つこともなかった。
ここには二つの家族と過ごした、どちらも大切な思い出が詰まっているので、出来ればここから離れたくないという思いも強い。
そういった理由から、私はあまり領地に関して興味を持たなかったのだろう。
そんなことを考えていると入り口が開き、扉の前にはルシエルが立っていた。
「もしかして待たせてしまったかな?」
「いえ、今さっき来たばかりです。お兄様は外にいらしたんですか?」
「うん、馬車の準備をしていたんだ。それじゃあ、行こうか」
「はいっ!」
ルシエルは私の前にすっと手を出してきた。
私はそれを見て一度は戸惑った顔を見せるも彼の手をとる。
(これくらいなら、大丈夫……だよね)
周囲には使用人の姿も数名見えるが、手を繋ぐことは今まで何度もしてきたことだし、きっと珍しくはないはずだ。
それは幼い頃の話になるが、今は余計なことは気にしないでおこう。
「今日のフィーは素直だね。いいことだ」
「……っ」
そんな風に、直接口に出されると恥ずかしくなるのでやめてもらいたい。
だけど言い返せば、意地悪されることは分かっていたので私は耐えることにした。
(今は出来る限り、目立たずやり過ごそう)
扉を出ると、すぐ傍には馬車が止められていた。きっと彼が手配してくれたのだろう。
馬車の扉は空いていて、中を覗くと椅子の上に大きな箱が置かれている。
(綺麗にラッピングされてるけど、なんだろう……)
よく見るとピンク色のリボンが付けられており、見るからにプレゼントのようだ。
私は不思議に思いながらも、馬車の中へと乗り込む。
続いて彼も馬車の中に入って来ると、当然のように私の隣へと腰を下ろした。
「フィー、それは一つ目のプレゼントだよ」
「え?」
なんとなく想像はしていたが、私は突然のことに戸惑ってしまう。
すると彼はそれを手に取り、私の膝の上に置いた。
「まずは開けてみて」
「はいっ」
私はお礼をいうことも忘れ頷くと、ゆっくりとラッピングのリボンを解いていく。
箱の蓋を持ち上げると、中には白地にピンク色のリボンが付けられた帽子が入っていた。
「……これ」
「今のフィーのワンピースにぴったりだとは思わない? 外は日差しも強いからね。日傘にしようか迷ったんだけど、帽子のほうが動きやすいかなと思ってそれにしてみたんだ」
出掛けることは今朝急に決まったはずなのに、タイミングを合わせたかのように現れた帽子に私は困惑する。
しかもこのワンピースを着たのも偶然だ。
一度は驚いてはしまったが、彼が私のために用意してくれたと思うと、嬉しい気持ちのほうが大きくなっていく。
(お兄様、いつ間に用意してくれたんだろう。すごく嬉しい! しかも可愛い)
私が黙って帽子を眺めていると、隣から「もしかして、気に入らなった?」と聞かれたので、私は首を何度も横に振った。
「すごく可愛いです! お兄様、ありがとうございますっ! 大切にしますね!」
「気に入ってもらえたみたいで良かったよ」
私が満面の笑みで答えると、ルシエルも満足そうに微笑んでいた。
今の表情で私の気持ちは彼に伝わったのだろう。
その姿を見ていると、ますます嬉しさが込み上げてきてしまい、緩んだ顔の戻し方が分からなくなる。
(行く前からこんなに嬉しい気持ちになるなんて……)
馬車はゆっくりと動き出し、私達は王都へと向かうこととなった。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる