豹変したお兄様に迫られました【R18】

Rila

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10.サプライズ

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 一度自室に戻り出かける準備をした後、私はルシエルと待ち合わせているエントランスへと降りていく。
 このことをロゼに報告すると「良かったですね」と言って喜んでくれた。

(お兄様は、まだみたいね)

 私は周辺に視線を巡らせてみるが、彼の姿はまだ見当たらない。
 暫く待っていれば直に現れるだろう。
 ここに来てから、さらに私の鼓動は高鳴り、これからのことを想像して期待を膨らませていく。

(今日はずっとお兄様の傍にいられるんだ。嬉しいけど、恋人のようにってどうすればいいんだろう……)
 
 私達は現在タウンハウスで暮らしているため、王都の中心部まで行くのにそう時間はかからない。
 ここでの生活を拠点にしているのには理由がある。
 まず父が王宮務めをしているからだ。それに王立学園も王都内に置かれている。
 公爵領から王都までは馬車で二日ほどかかる距離にあり、月に二回ほど父は様子を見にいく。

(そういえば、私、領地には一度も行ったことがない気がする)

 養子になる以前から、私はこの王都内で暮らしていたため違和感を持つこともなかった。
 ここには二つの家族と過ごした、どちらも大切な思い出が詰まっているので、出来ればここから離れたくないという思いも強い。
 そういった理由から、私はあまり領地に関して興味を持たなかったのだろう。
 そんなことを考えていると入り口が開き、扉の前にはルシエルが立っていた。

「もしかして待たせてしまったかな?」
「いえ、今さっき来たばかりです。お兄様は外にいらしたんですか?」

「うん、馬車の準備をしていたんだ。それじゃあ、行こうか」
「はいっ!」

 ルシエルは私の前にすっと手を出してきた。
 私はそれを見て一度は戸惑った顔を見せるも彼の手をとる。

(これくらいなら、大丈夫……だよね)

 周囲には使用人の姿も数名見えるが、手を繋ぐことは今まで何度もしてきたことだし、きっと珍しくはないはずだ。
 それは幼い頃の話になるが、今は余計なことは気にしないでおこう。
 
「今日のフィーは素直だね。いいことだ」
「……っ」

 そんな風に、直接口に出されると恥ずかしくなるのでやめてもらいたい。
 だけど言い返せば、意地悪されることは分かっていたので私は耐えることにした。

(今は出来る限り、目立たずやり過ごそう)

 扉を出ると、すぐ傍には馬車が止められていた。きっと彼が手配してくれたのだろう。
 馬車の扉は空いていて、中を覗くと椅子の上に大きな箱が置かれている。

(綺麗にラッピングされてるけど、なんだろう……)

 よく見るとピンク色のリボンが付けられており、見るからにプレゼントのようだ。
 私は不思議に思いながらも、馬車の中へと乗り込む。
 続いて彼も馬車の中に入って来ると、当然のように私の隣へと腰を下ろした。
 
「フィー、それは一つ目のプレゼントだよ」
「え?」

 なんとなく想像はしていたが、私は突然のことに戸惑ってしまう。
 すると彼はそれを手に取り、私の膝の上に置いた。

「まずは開けてみて」
「はいっ」

 私はお礼をいうことも忘れ頷くと、ゆっくりとラッピングのリボンを解いていく。
 箱の蓋を持ち上げると、中には白地にピンク色のリボンが付けられた帽子が入っていた。

「……これ」
「今のフィーのワンピースにぴったりだとは思わない? 外は日差しも強いからね。日傘にしようか迷ったんだけど、帽子のほうが動きやすいかなと思ってそれにしてみたんだ」

 出掛けることは今朝急に決まったはずなのに、タイミングを合わせたかのように現れた帽子に私は困惑する。
 しかもこのワンピースを着たのも偶然だ。
 一度は驚いてはしまったが、彼が私のために用意してくれたと思うと、嬉しい気持ちのほうが大きくなっていく。

(お兄様、いつ間に用意してくれたんだろう。すごく嬉しい! しかも可愛い)

 私が黙って帽子を眺めていると、隣から「もしかして、気に入らなった?」と聞かれたので、私は首を何度も横に振った。

「すごく可愛いです! お兄様、ありがとうございますっ! 大切にしますね!」
「気に入ってもらえたみたいで良かったよ」

 私が満面の笑みで答えると、ルシエルも満足そうに微笑んでいた。
 今の表情で私の気持ちは彼に伝わったのだろう。
 その姿を見ていると、ますます嬉しさが込み上げてきてしまい、緩んだ顔の戻し方が分からなくなる。

(行く前からこんなに嬉しい気持ちになるなんて……)

 馬車はゆっくりと動き出し、私達は王都へと向かうこととなった。
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