14 / 28
14.カフェに行く③
しおりを挟む
「勝手に決めないでくださいっ!」
「どうして? 今、僕達は恋人同士だろう?」
「それはっ……、そうだけど」
「だったら問題ないね。世の恋人達は皆こんな風にして、二人の時間を楽しんでいるそうだよ」
彼はにっこりと微笑み当然のように言ってきた。
私は半分信じていなかったが、今は恋人同士になりきっていることを思いだし渋々ルシエルの案に従うことにする。
「フィーはどれが食べたい?」
「どれも美味しそうで、迷ってしまいます」
不意にそんな質問をされたが、私は戸惑ったように答える。
困っている理由はどれを食べるかではなく、これから彼にされることをどのように受け入れるかだった。
幼い頃は食べさせてもらうなんてこともあったが、それは本当に十年くらい前の話になる。
(本当に世の恋人達はこんなことをしているの? みんな、恥ずかしくないのかな……)
私がそんなことに気を取られていると、ルシエルはケーキスタンドに乗っていた一際目立つタルトを持ち上げた。
カラフルのフルーツがキラキラと輝き、まるで宝石のようにも見える。
「それからですか?」
「フィーはフルーツが好きだよね」
「はい……」
「それならば、やっぱり最初はこれからだね。フィー、口を開けて」
ルシエルはお皿に置くことなく、手に持ったまま私の顔のほうへとタルトを近づけてくる。
そのままかじりつくなんて、はしたない気がして、私はテーブルの前に置かれていたお皿を手に取った。
「とりあえずここに置いてください」
「どうして?」
「さすがに一口では無理です」
「大丈夫。少しづつ食べたら良いよ。その間、僕がちゃんと持っていてあげるから」
彼の言葉を聞いて、私は困ったように顔を歪ませる。
なぜなら、私はそんなことを望んではいない。
しかし、ルシエルはそれでもやめるつもりはなさそうだった。
「ここには僕しかいない。だから、令嬢であることも忘れて構わないよ。普段見せないフィーの姿を僕にだけ見せて欲しいな」
「……っ」
そんな風に言われてしまえば、私は何も言い返せなくなってしまう。
きっと彼もそれが分かっていた上で、そんなことを言ってくるのだろう。
「フィー、早く。ずっとこのままだと、僕も手が疲れてしまうからね」
さらに急かされ、私は覚悟を決めてゆっくりと口を開いていく。
すると彼は満足そうな顔を浮かべ、タルトを私の口の前に近づけていき、私はそれにかじりついた。
(本当に、こんなことしていいのかな……)
私はそんなことを考えながら、タルトを食べていた。
美味しかったけど、それ以上にこの状況が落ち着かなくて味については二の次になってしまう。
「フィー、美味しい?」
私が頷くと、彼は何かに気付いたのかこちらへと顔を近づけてくる。
突然のこと過ぎて回避する間もなく、唇に滑付いた何かが触れたような気がした。
(え……?)
「思ったほど、甘くはないんだな」
きょとんとした私を眺めながら、ルシエルはぽつりと呟いた。
(え? ……なに? 今、何かが触れたような気が……)
暫くしてから何をされたのか理解していくと、私の頬はみるみるうちに火照り始める。
当然、私の今の表情の変化に彼も気付いているはずだ。
(今、舐められた!? これって、キ、キス!? うそ……)
「フィーって本当に分かりやすい反応をするね。すごく可愛い」
ルシエルは手に持っていたタルトを皿の上に置くと、掌を私の頬へと添えて真っ直ぐこちらを見つめてきた。
ただでさえ今のことで私は動揺を隠せないというのに、彼に触れられることでさらに私は追い詰められていく。
「少し味見をするつもりだったけど、そんな反応を見せられると、もっとフィーを味わいたくなる。この唇はタルトよりも甘そうだ」
「……っ、お兄様、離して……」
彼は目を細めて、私の唇に指を這わせていく。
その感覚に、私の鼓動はますます揺れてしまう。
この距離であれば、ルシエルにも聞こえているのかもしれない。
「離したくない。言っただろう。フィーを味わいたくなったって。今、僕達は恋人同士なのだからいいよね」
私が困ったように眉根を下げていると、答える前に彼の顔が徐々に迫ってきて、唇に柔らかいものが重なった。
「どうして? 今、僕達は恋人同士だろう?」
「それはっ……、そうだけど」
「だったら問題ないね。世の恋人達は皆こんな風にして、二人の時間を楽しんでいるそうだよ」
彼はにっこりと微笑み当然のように言ってきた。
私は半分信じていなかったが、今は恋人同士になりきっていることを思いだし渋々ルシエルの案に従うことにする。
「フィーはどれが食べたい?」
「どれも美味しそうで、迷ってしまいます」
不意にそんな質問をされたが、私は戸惑ったように答える。
困っている理由はどれを食べるかではなく、これから彼にされることをどのように受け入れるかだった。
幼い頃は食べさせてもらうなんてこともあったが、それは本当に十年くらい前の話になる。
(本当に世の恋人達はこんなことをしているの? みんな、恥ずかしくないのかな……)
私がそんなことに気を取られていると、ルシエルはケーキスタンドに乗っていた一際目立つタルトを持ち上げた。
カラフルのフルーツがキラキラと輝き、まるで宝石のようにも見える。
「それからですか?」
「フィーはフルーツが好きだよね」
「はい……」
「それならば、やっぱり最初はこれからだね。フィー、口を開けて」
ルシエルはお皿に置くことなく、手に持ったまま私の顔のほうへとタルトを近づけてくる。
そのままかじりつくなんて、はしたない気がして、私はテーブルの前に置かれていたお皿を手に取った。
「とりあえずここに置いてください」
「どうして?」
「さすがに一口では無理です」
「大丈夫。少しづつ食べたら良いよ。その間、僕がちゃんと持っていてあげるから」
彼の言葉を聞いて、私は困ったように顔を歪ませる。
なぜなら、私はそんなことを望んではいない。
しかし、ルシエルはそれでもやめるつもりはなさそうだった。
「ここには僕しかいない。だから、令嬢であることも忘れて構わないよ。普段見せないフィーの姿を僕にだけ見せて欲しいな」
「……っ」
そんな風に言われてしまえば、私は何も言い返せなくなってしまう。
きっと彼もそれが分かっていた上で、そんなことを言ってくるのだろう。
「フィー、早く。ずっとこのままだと、僕も手が疲れてしまうからね」
さらに急かされ、私は覚悟を決めてゆっくりと口を開いていく。
すると彼は満足そうな顔を浮かべ、タルトを私の口の前に近づけていき、私はそれにかじりついた。
(本当に、こんなことしていいのかな……)
私はそんなことを考えながら、タルトを食べていた。
美味しかったけど、それ以上にこの状況が落ち着かなくて味については二の次になってしまう。
「フィー、美味しい?」
私が頷くと、彼は何かに気付いたのかこちらへと顔を近づけてくる。
突然のこと過ぎて回避する間もなく、唇に滑付いた何かが触れたような気がした。
(え……?)
「思ったほど、甘くはないんだな」
きょとんとした私を眺めながら、ルシエルはぽつりと呟いた。
(え? ……なに? 今、何かが触れたような気が……)
暫くしてから何をされたのか理解していくと、私の頬はみるみるうちに火照り始める。
当然、私の今の表情の変化に彼も気付いているはずだ。
(今、舐められた!? これって、キ、キス!? うそ……)
「フィーって本当に分かりやすい反応をするね。すごく可愛い」
ルシエルは手に持っていたタルトを皿の上に置くと、掌を私の頬へと添えて真っ直ぐこちらを見つめてきた。
ただでさえ今のことで私は動揺を隠せないというのに、彼に触れられることでさらに私は追い詰められていく。
「少し味見をするつもりだったけど、そんな反応を見せられると、もっとフィーを味わいたくなる。この唇はタルトよりも甘そうだ」
「……っ、お兄様、離して……」
彼は目を細めて、私の唇に指を這わせていく。
その感覚に、私の鼓動はますます揺れてしまう。
この距離であれば、ルシエルにも聞こえているのかもしれない。
「離したくない。言っただろう。フィーを味わいたくなったって。今、僕達は恋人同士なのだからいいよね」
私が困ったように眉根を下げていると、答える前に彼の顔が徐々に迫ってきて、唇に柔らかいものが重なった。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる