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14.カフェに行く③
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「勝手に決めないでくださいっ!」
「どうして? 今、僕達は恋人同士だろう?」
「それはっ……、そうだけど」
「だったら問題ないね。世の恋人達は皆こんな風にして、二人の時間を楽しんでいるそうだよ」
彼はにっこりと微笑み当然のように言ってきた。
私は半分信じていなかったが、今は恋人同士になりきっていることを思いだし渋々ルシエルの案に従うことにする。
「フィーはどれが食べたい?」
「どれも美味しそうで、迷ってしまいます」
不意にそんな質問をされたが、私は戸惑ったように答える。
困っている理由はどれを食べるかではなく、これから彼にされることをどのように受け入れるかだった。
幼い頃は食べさせてもらうなんてこともあったが、それは本当に十年くらい前の話になる。
(本当に世の恋人達はこんなことをしているの? みんな、恥ずかしくないのかな……)
私がそんなことに気を取られていると、ルシエルはケーキスタンドに乗っていた一際目立つタルトを持ち上げた。
カラフルのフルーツがキラキラと輝き、まるで宝石のようにも見える。
「それからですか?」
「フィーはフルーツが好きだよね」
「はい……」
「それならば、やっぱり最初はこれからだね。フィー、口を開けて」
ルシエルはお皿に置くことなく、手に持ったまま私の顔のほうへとタルトを近づけてくる。
そのままかじりつくなんて、はしたない気がして、私はテーブルの前に置かれていたお皿を手に取った。
「とりあえずここに置いてください」
「どうして?」
「さすがに一口では無理です」
「大丈夫。少しづつ食べたら良いよ。その間、僕がちゃんと持っていてあげるから」
彼の言葉を聞いて、私は困ったように顔を歪ませる。
なぜなら、私はそんなことを望んではいない。
しかし、ルシエルはそれでもやめるつもりはなさそうだった。
「ここには僕しかいない。だから、令嬢であることも忘れて構わないよ。普段見せないフィーの姿を僕にだけ見せて欲しいな」
「……っ」
そんな風に言われてしまえば、私は何も言い返せなくなってしまう。
きっと彼もそれが分かっていた上で、そんなことを言ってくるのだろう。
「フィー、早く。ずっとこのままだと、僕も手が疲れてしまうからね」
さらに急かされ、私は覚悟を決めてゆっくりと口を開いていく。
すると彼は満足そうな顔を浮かべ、タルトを私の口の前に近づけていき、私はそれにかじりついた。
(本当に、こんなことしていいのかな……)
私はそんなことを考えながら、タルトを食べていた。
美味しかったけど、それ以上にこの状況が落ち着かなくて味については二の次になってしまう。
「フィー、美味しい?」
私が頷くと、彼は何かに気付いたのかこちらへと顔を近づけてくる。
突然のこと過ぎて回避する間もなく、唇に滑付いた何かが触れたような気がした。
(え……?)
「思ったほど、甘くはないんだな」
きょとんとした私を眺めながら、ルシエルはぽつりと呟いた。
(え? ……なに? 今、何かが触れたような気が……)
暫くしてから何をされたのか理解していくと、私の頬はみるみるうちに火照り始める。
当然、私の今の表情の変化に彼も気付いているはずだ。
(今、舐められた!? これって、キ、キス!? うそ……)
「フィーって本当に分かりやすい反応をするね。すごく可愛い」
ルシエルは手に持っていたタルトを皿の上に置くと、掌を私の頬へと添えて真っ直ぐこちらを見つめてきた。
ただでさえ今のことで私は動揺を隠せないというのに、彼に触れられることでさらに私は追い詰められていく。
「少し味見をするつもりだったけど、そんな反応を見せられると、もっとフィーを味わいたくなる。この唇はタルトよりも甘そうだ」
「……っ、お兄様、離して……」
彼は目を細めて、私の唇に指を這わせていく。
その感覚に、私の鼓動はますます揺れてしまう。
この距離であれば、ルシエルにも聞こえているのかもしれない。
「離したくない。言っただろう。フィーを味わいたくなったって。今、僕達は恋人同士なのだからいいよね」
私が困ったように眉根を下げていると、答える前に彼の顔が徐々に迫ってきて、唇に柔らかいものが重なった。
「どうして? 今、僕達は恋人同士だろう?」
「それはっ……、そうだけど」
「だったら問題ないね。世の恋人達は皆こんな風にして、二人の時間を楽しんでいるそうだよ」
彼はにっこりと微笑み当然のように言ってきた。
私は半分信じていなかったが、今は恋人同士になりきっていることを思いだし渋々ルシエルの案に従うことにする。
「フィーはどれが食べたい?」
「どれも美味しそうで、迷ってしまいます」
不意にそんな質問をされたが、私は戸惑ったように答える。
困っている理由はどれを食べるかではなく、これから彼にされることをどのように受け入れるかだった。
幼い頃は食べさせてもらうなんてこともあったが、それは本当に十年くらい前の話になる。
(本当に世の恋人達はこんなことをしているの? みんな、恥ずかしくないのかな……)
私がそんなことに気を取られていると、ルシエルはケーキスタンドに乗っていた一際目立つタルトを持ち上げた。
カラフルのフルーツがキラキラと輝き、まるで宝石のようにも見える。
「それからですか?」
「フィーはフルーツが好きだよね」
「はい……」
「それならば、やっぱり最初はこれからだね。フィー、口を開けて」
ルシエルはお皿に置くことなく、手に持ったまま私の顔のほうへとタルトを近づけてくる。
そのままかじりつくなんて、はしたない気がして、私はテーブルの前に置かれていたお皿を手に取った。
「とりあえずここに置いてください」
「どうして?」
「さすがに一口では無理です」
「大丈夫。少しづつ食べたら良いよ。その間、僕がちゃんと持っていてあげるから」
彼の言葉を聞いて、私は困ったように顔を歪ませる。
なぜなら、私はそんなことを望んではいない。
しかし、ルシエルはそれでもやめるつもりはなさそうだった。
「ここには僕しかいない。だから、令嬢であることも忘れて構わないよ。普段見せないフィーの姿を僕にだけ見せて欲しいな」
「……っ」
そんな風に言われてしまえば、私は何も言い返せなくなってしまう。
きっと彼もそれが分かっていた上で、そんなことを言ってくるのだろう。
「フィー、早く。ずっとこのままだと、僕も手が疲れてしまうからね」
さらに急かされ、私は覚悟を決めてゆっくりと口を開いていく。
すると彼は満足そうな顔を浮かべ、タルトを私の口の前に近づけていき、私はそれにかじりついた。
(本当に、こんなことしていいのかな……)
私はそんなことを考えながら、タルトを食べていた。
美味しかったけど、それ以上にこの状況が落ち着かなくて味については二の次になってしまう。
「フィー、美味しい?」
私が頷くと、彼は何かに気付いたのかこちらへと顔を近づけてくる。
突然のこと過ぎて回避する間もなく、唇に滑付いた何かが触れたような気がした。
(え……?)
「思ったほど、甘くはないんだな」
きょとんとした私を眺めながら、ルシエルはぽつりと呟いた。
(え? ……なに? 今、何かが触れたような気が……)
暫くしてから何をされたのか理解していくと、私の頬はみるみるうちに火照り始める。
当然、私の今の表情の変化に彼も気付いているはずだ。
(今、舐められた!? これって、キ、キス!? うそ……)
「フィーって本当に分かりやすい反応をするね。すごく可愛い」
ルシエルは手に持っていたタルトを皿の上に置くと、掌を私の頬へと添えて真っ直ぐこちらを見つめてきた。
ただでさえ今のことで私は動揺を隠せないというのに、彼に触れられることでさらに私は追い詰められていく。
「少し味見をするつもりだったけど、そんな反応を見せられると、もっとフィーを味わいたくなる。この唇はタルトよりも甘そうだ」
「……っ、お兄様、離して……」
彼は目を細めて、私の唇に指を這わせていく。
その感覚に、私の鼓動はますます揺れてしまう。
この距離であれば、ルシエルにも聞こえているのかもしれない。
「離したくない。言っただろう。フィーを味わいたくなったって。今、僕達は恋人同士なのだからいいよね」
私が困ったように眉根を下げていると、答える前に彼の顔が徐々に迫ってきて、唇に柔らかいものが重なった。
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