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13.カフェに行く②
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料理が届くまでの間、私は普段のようにルシエルとお喋りをしていた。
少し関係は変わったかもしれないが、私達はもう十年以上傍にいる。
そのため、ぎくしゃくするようなこともなく、楽しく会話をすることが出来ていた。
(やっぱり、お兄様と過ごす時間は楽しいな)
私がそんなことを考えて幸福感に浸っていると、注文したお菓子が次々に運ばれてきて、テーブルの上が一気に賑やかになる。
「すごい……」
「気に入ってもらえたかな?」
ケーキスタンドの上には可愛らしくデコレーションされた一口サイズのお菓子が綺麗に並んでいる。
カラフルな色のマカロンに、花柄の形をしたクッキー、フルーツをふんだんに使ったタルトなど、見ているだけで幸せな気持ちになってしまうものばかりだ。
「はいっ! どれもすごく可愛い……。食べるのが勿体ないくらいです! お兄様、こんなに素敵なところに私を連れてきてくれてありがとうございますっ!」
私は瞳をキラキラと輝かせ、満面の笑みを浮かべながら感動していた。
そんな私の今の顔を見て、ルシエルも満足そうな表情を浮かべている。
「礼を言うのは僕のほうだよ。フィーの最高の笑顔を見ることが出来たからね。フィーの心を掴めたということは、僕の作戦は成功ってことかな」
「作戦?」
私が不思議そうに首を傾かせると、彼は僅かに口端を上げる。
「フィーの心を僕に向かせる作戦のことだよ。宝石よりもお菓子のほうが数倍嬉しそうだね。まあ、予想はしていたけど」
「……っ!」
ルシエルはクスクスと可笑しそうに笑っていて、私は一人恥ずかしくなっていた。
「また顔が真っ赤だ。本当にフィーは素直で可愛くて、その全てを独占したくなる」
先程まで楽しそうな顔を浮かべていたルシエルの表情からはいつの間にが笑顔が消え、真っ直ぐな鋭い視線をこちらに向けていた。
私の心臓はドキッと飛び跳ね戸惑ってしまうが、視線を逸らすことが出来ない。
「独占って……」
「そのままの意味だよ。フィーの全てを奪ってしまいたい。そうするまで、僕は安心出来そうにないからね」
私が困惑した顔で答えると、ルシエルはそのままの表情でスラスラと答えていく。
そして付け足すように「全てというのは、フィーの心も体も僕のものにしたいって意味だよ」とわざわざ説明までしてくれた。
しかし、その発言のせいでさらに私は追い込まれ、頬は熱に包まれていく。
「意識はしてくれているようだね。嬉しいよ」
「……っ」
彼は僅かに目を細めて、どこか満足そうに呟く。
そして昨晩のように、私の唇に指先を添えると輪郭をなぞるように撫で始めた。
「やっ、こんなところでっ……」
「大丈夫だよ。ここは個室だし、僕達しかいない」
私は慌てて顔を横に傾けると、急にルシエルは身を寄せてきて耳元にキスを落としてきた。
その感覚にぞくりと体を震わせると、私は慌てて彼から離れようとする。
椅子の上で体を反らしすぎたせいでバランスを崩し、ふわっと視界が揺れた。
「危なっ!」
「……っ!!」
私が椅子から転げ落ちるよりも前に、彼の腕が私を支え引き寄せられた。
気付けば私はルシエルの腕の中で抱きしめられている。
「今のは僕が悪かったね。ごめん。だけど、心臓が止まるかと思った」
「わ、私もですっ! ごめんなさい……。あの、もう大丈夫なので離してください」
私は慌てて彼の胸を押し返そうとするが、ルシエルの腕が緩むことはない。
(こんな場所で、だめ……! 心臓が止まりそうなのは私のほうですっ!)
「お兄様、そろそろ離してくださいっ! 折角のお菓子が……」
「そうだったね。今フィーの気を一番掴んでいるのは、このお菓子か。妬けるな」
ルシエルは残念そうにため息を漏らすと、あっさりと私のことを解放してくれた。
「お菓子に嫉妬って……」
私が困った顔で答えると、彼は「良いことを思いついた」と言ってきたのだが、私には嫌な予感しかしなかった。
「僕が食べさせてあげる。そうしたらお互い楽しめそうだ」
「えっ……、結構ですっ!」
予想通りの展開になり、私は慌てて否定する。
「さっきも言ったけど、ここには僕達しかいない。ということは、フィーの照れている姿を見るのは僕だけになる。フィーは美味しいお菓子を食べられるし、僕もフィーを独占することが出来る。最高じゃないか」
少し関係は変わったかもしれないが、私達はもう十年以上傍にいる。
そのため、ぎくしゃくするようなこともなく、楽しく会話をすることが出来ていた。
(やっぱり、お兄様と過ごす時間は楽しいな)
私がそんなことを考えて幸福感に浸っていると、注文したお菓子が次々に運ばれてきて、テーブルの上が一気に賑やかになる。
「すごい……」
「気に入ってもらえたかな?」
ケーキスタンドの上には可愛らしくデコレーションされた一口サイズのお菓子が綺麗に並んでいる。
カラフルな色のマカロンに、花柄の形をしたクッキー、フルーツをふんだんに使ったタルトなど、見ているだけで幸せな気持ちになってしまうものばかりだ。
「はいっ! どれもすごく可愛い……。食べるのが勿体ないくらいです! お兄様、こんなに素敵なところに私を連れてきてくれてありがとうございますっ!」
私は瞳をキラキラと輝かせ、満面の笑みを浮かべながら感動していた。
そんな私の今の顔を見て、ルシエルも満足そうな表情を浮かべている。
「礼を言うのは僕のほうだよ。フィーの最高の笑顔を見ることが出来たからね。フィーの心を掴めたということは、僕の作戦は成功ってことかな」
「作戦?」
私が不思議そうに首を傾かせると、彼は僅かに口端を上げる。
「フィーの心を僕に向かせる作戦のことだよ。宝石よりもお菓子のほうが数倍嬉しそうだね。まあ、予想はしていたけど」
「……っ!」
ルシエルはクスクスと可笑しそうに笑っていて、私は一人恥ずかしくなっていた。
「また顔が真っ赤だ。本当にフィーは素直で可愛くて、その全てを独占したくなる」
先程まで楽しそうな顔を浮かべていたルシエルの表情からはいつの間にが笑顔が消え、真っ直ぐな鋭い視線をこちらに向けていた。
私の心臓はドキッと飛び跳ね戸惑ってしまうが、視線を逸らすことが出来ない。
「独占って……」
「そのままの意味だよ。フィーの全てを奪ってしまいたい。そうするまで、僕は安心出来そうにないからね」
私が困惑した顔で答えると、ルシエルはそのままの表情でスラスラと答えていく。
そして付け足すように「全てというのは、フィーの心も体も僕のものにしたいって意味だよ」とわざわざ説明までしてくれた。
しかし、その発言のせいでさらに私は追い込まれ、頬は熱に包まれていく。
「意識はしてくれているようだね。嬉しいよ」
「……っ」
彼は僅かに目を細めて、どこか満足そうに呟く。
そして昨晩のように、私の唇に指先を添えると輪郭をなぞるように撫で始めた。
「やっ、こんなところでっ……」
「大丈夫だよ。ここは個室だし、僕達しかいない」
私は慌てて顔を横に傾けると、急にルシエルは身を寄せてきて耳元にキスを落としてきた。
その感覚にぞくりと体を震わせると、私は慌てて彼から離れようとする。
椅子の上で体を反らしすぎたせいでバランスを崩し、ふわっと視界が揺れた。
「危なっ!」
「……っ!!」
私が椅子から転げ落ちるよりも前に、彼の腕が私を支え引き寄せられた。
気付けば私はルシエルの腕の中で抱きしめられている。
「今のは僕が悪かったね。ごめん。だけど、心臓が止まるかと思った」
「わ、私もですっ! ごめんなさい……。あの、もう大丈夫なので離してください」
私は慌てて彼の胸を押し返そうとするが、ルシエルの腕が緩むことはない。
(こんな場所で、だめ……! 心臓が止まりそうなのは私のほうですっ!)
「お兄様、そろそろ離してくださいっ! 折角のお菓子が……」
「そうだったね。今フィーの気を一番掴んでいるのは、このお菓子か。妬けるな」
ルシエルは残念そうにため息を漏らすと、あっさりと私のことを解放してくれた。
「お菓子に嫉妬って……」
私が困った顔で答えると、彼は「良いことを思いついた」と言ってきたのだが、私には嫌な予感しかしなかった。
「僕が食べさせてあげる。そうしたらお互い楽しめそうだ」
「えっ……、結構ですっ!」
予想通りの展開になり、私は慌てて否定する。
「さっきも言ったけど、ここには僕達しかいない。ということは、フィーの照れている姿を見るのは僕だけになる。フィーは美味しいお菓子を食べられるし、僕もフィーを独占することが出来る。最高じゃないか」
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