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番外編

58.突然の来訪②-sideフェリクス(ヤンデレ覚醒)-

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イザークは『レオナ』という言葉を口に出す度に嫌悪感の様なものを滲ませていた。
レオナが何を仕出かしたのかは分からないが、イザークを怒らせたと言うのは間違い無いだろう。

(レオナ…一体何をしたんだよ……)

「彼女をどう扱おうが君の自由だ。とにかく外に出さなければいい」
「…し、しかし…出さない様にと言っても…どうやって…?」

イザークは簡単に話しているが、レオナは僕の事を嫌っているはずだ。
そんなレオナが僕の傍で大人しくいてくれるとは到底思えなかった。

「君、少しは頭を使ったらどうだ…?」
「………」
イザークは答えられない僕を見て、深くため息を漏らした。

「……そうだね、僕なら隷属でもさせるかな。どちらが主人であるかをきっちり教え込むんだ…心と体にね…。ああ、そうだ…君もそうしてみたらどうかな?道具なら僕が色々用意してあげるよ…。君だって内心はあの女に腹が立っているんだろう?君の人生を滅茶苦茶にした張本人だからね…。その報いを受けさせる権利は君には十分あると思うけどな。それに…一度は結婚まで考えた女だろう…?他の男共に言い寄っていたこともあったみたいだけど、これからは君だけのものになるんだ…。そう考えると、少し興奮しないか?」
イザークの悪魔の様なその言葉を聞いて心が揺れた。

「……レオナが…僕だけのものに…」
そう思うと胸の奥が何だか熱くなっていくのを感じていた。

僕は本気でレオナの事を愛していた。
レオナにはその気が無かった事は知っていたけど、それでも僕はレオナと結婚したかった…。
あの愛らしい瞳をずっと独占したいと思っていた。

だけど僕はレオナに利用され、裏切られ、簡単に捨てられた。
僕はレオナだけを見ていたのに…。

そんなレオナが憎くて仕方が無かったはずなのに、再びレオナが手に入ると聞かされると僕は簡単にも心が揺れてしまっていた。
僕はまだレオナの事が好きなのだろうか…?
自問自答してもすぐには答えは見つからない。


「何を迷う必要があるの…?主導権は君にあり、あの女は君には逆らえない…。ふふっ…、全ては君の思うがままってことだよ…」
対面する様に座っていたはずのイザークが気付けば僕の隣へと移動していて、耳元で僕の迷いを打ち消すかの様に囁いて来る。

「僕の…思うがままに……あのレオナを…僕の思うがままに出来る…」
何かの呪文のように僕はその言葉を繰り返し呟いていると、口元が僅かに上がって行き、薄笑みを漏らしていた。

ずっと、ずっと…手に入れたいと思っていたレオナを僕の思うがままに出来る…!
なんて最高なんだ…!
あのレオナを僕だけのものに出来る……

「ふふふっ……」
僕は不気味に笑っていた。
イザークはそれを見て僕から離れると、再び僕と対面する様にソファーへと腰を下ろした。

「これで…決まりだね。パーティーの当日、必ず彼女を迎えに来るんだよ…」
「勿論です…!ああ…今から準備をしなくては…。イザーク殿下、本当に感謝致します…」

「ふふっ、君が簡単に僕の暗示かかってくれて助かったよ。君の心の中に…そうなりたいって願望が残っていたから、こんなにも簡単に暗示にかかったんだとは思うけどね。詳細については明日にでも従者を君の所に送らせるから、その者に聞くといい」
「分かりました…」

「それじゃ…僕はこれで用件も済んだことだし失礼するよ」
イザークが立ち上がると僕は深々と頭を下げた。

一人になり静かになった部屋で僕は笑いが止まらなくなった。

「レオナ…僕だけのレオナ…。ああ、早くレオナを閉じ込めて、僕だけのものにしてしまいたい…。愛しているよ…僕の可愛いレオナ…」



***


そしてパーティー当日を迎えた。
僕は愛しいレオナを迎える為に会場に向かうと、指定された場所に身を隠した。
イザークの指示があるまでは大人しくその場で待機することになっていた。
その部屋は2階にあり、パーティー会場である大広間を一望することが出来た。

始まるまでにはまだ時間があった為、パーティーの雰囲気でも眺めようと下の階に視線を向けると、一際目立つ姿の令嬢を見つけた。
それこそがレオナだった。

僕が送ったあのウェディングドレスを身に纏っているのを見た時には鳥肌が立った。
今までには感じた事が無いくらい、僕は興奮していたのかもしれない。

(ああ…、レオナ。やっぱりレオナも最後に選ぶのは僕だったんだね……)

もうすぐ大好きなレオナが僕のものになる。
僕だけのものに…!
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