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第一章:私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!
31.話合い①
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ロジェは私を瞳に捉えると、いつものように柔らかく微笑んだ。
「久しぶり……。私が倒れた時、運んでくれたって聞きました。ありがとうございます」
「そんなこと当然だよ。だけどもっと早くシアの体調の変化に気付くべきだった。婚約者として失格だよな。ごめん……」
私がぎこちなく、そして丁寧な口調でお礼を述べると、ロジェは悩む間もなくサラリと答えた。
あの時運んでくれたことは感謝している。
だけど、こんな状況でも平然と婚約者だと言えてしまうロジェに不快感を覚えた。
「シア、隣に座ってもいい?」
ロジェはテーブルの前まで来ると、私のいるソファーの方に視線を向けた。
「だ、だめ!今日は話をするんでしょ?落ち着いて話したいから、向こうに座って」
私が咄嗟に否定すると、ロジェは傷付いたような切ない表情を浮かべた。
だけどすぐに困ったように笑い「分かったよ」と告げた。
(なんでロジェがそんな顔をするの?)
その理由は私には分からなかった。
だけど解決するには私の気持ちを伝えることと、ロジェの気持ちを知る必要がある。
その為に私達はここに来ている。
ロジェは対面するように座ると、本題である話に入っていく。
「伯爵から、僕が王女とは何も無かったという話は聞いているかな?」
「一応、聞きました……」
(信じてはいないけど)
「そっか。先にこれだけは言わせて欲しい。僕の気持ちは以前と何一つ変わっていない。誰よりもシアの事が大切なんだ。だからこれからも僕の婚約者でいて欲しいと思ってる。もう絶対に、シアに誤解をさせるようなことはしないから。もう一度だけ僕を信じて欲しい」
ロジェは真剣な表情で私の瞳をじっと見つめていた。
以前の私なら、この言葉を素直に受け入れていただろう。
だけど今はその言葉さえ、口先だけの薄っぺらいものに感じてしまう。
「……その前に、はっきりとさせておきたいことがあります」
「なにかな?シアの質問なら喜んで答えさせてもらうよ」
私が緊張しながら発言すると、ロジェは柔らかい表情で言った。
ロジェはいつだって私に優しい。
いつも私の事を気遣ってくれて、大切にしてくれる。
私はロジェの婚約者だから、その優しさは私にだけ向けられているものだと思っていた。
ミレーユが現れるまでは――。
「どうして、敵である王女殿下に優しくしたの?」
「優しくなんてしてないよ。あれは演技だ。僕がシアに興味がないと思わせるためのね」
ロジェは表情を変えることなく、淡々とした口調で続ける。
まるで作戦とでも言っているようだ。
私も最初はそうだと思って疑わなかった。
「前に……、泣いてる王女殿下をロジェが慰めてる場面を偶然見てしまったの。その時私にしてくれるように、優しい顔で王女殿下の頭を撫でてた。あれも演技だっていうの?」
「え?なんでそれをシアが知って……。いや、なんでもない。あれは慰めて機嫌をとっていただけだよ」
私がこの話題を出すとロジェの顔色が変わり、口調も焦るように僅かだが早口になっていた。
明らかに動揺している様子だ。
「私は幼い頃からずっとロジェの傍にいたんだよ。だから演じている時の表情の違いには気付いてた。だけど、あの時は演技している時の顔じゃ無かった。いつも私を慰めてくれる時に見せる、優しい表情だった。しかも王女殿下と二人きりの場で」
「……っ、ごめん」
ロジェは誤魔化せないと思ったのか困った様に顔を顰めた。
そして苦しそうな表情で謝ってきた。
(認めるの?)
「あの時は確かにそんな顔をしていたかもしれない。普段傲慢な態度ばかりとる王女が、僕の前で弱音を吐いたから。正直かなり驚いたけど、王女にも心があるんだなと思ったんだ」
「それであんな風に優しくしたの?」
「僕には王女の気持ちは分からないけど、あの時はあれが王女の本心ではないかと思ってしまったんだ。そう思ったら本当は寂しい人なのかなって……」
「…………」
ロジェの言葉を聞いて心底呆れてしまった。
酷いことをされているのに、少し弱みを見せた位で敵に優しくするなんて。
その間も私は苦しんでいたのに、何の言葉もかけてくれなかった。
そう思うと虚しくて泣きそうになる。
「それでロジェはあんな風に慰めたの?」
「……うん。あんなに寂しそうな姿を見せられたら、放っておけなかったんだ」
(これも優しいってことになるのかな……)
認めたくはないけど、そうかもしれないと思ってしまう。
ロジェは人当たりが良くて、私以外の人間にも割と親切だ。
だけど、今回はそれとはやはり違う気がする。
王女は私達を苦しめていた人間だ。
どうやっても受け入れられるわけが無い。
(でも……、そう思っているのは私だけだったのかもしれないな)
「久しぶり……。私が倒れた時、運んでくれたって聞きました。ありがとうございます」
「そんなこと当然だよ。だけどもっと早くシアの体調の変化に気付くべきだった。婚約者として失格だよな。ごめん……」
私がぎこちなく、そして丁寧な口調でお礼を述べると、ロジェは悩む間もなくサラリと答えた。
あの時運んでくれたことは感謝している。
だけど、こんな状況でも平然と婚約者だと言えてしまうロジェに不快感を覚えた。
「シア、隣に座ってもいい?」
ロジェはテーブルの前まで来ると、私のいるソファーの方に視線を向けた。
「だ、だめ!今日は話をするんでしょ?落ち着いて話したいから、向こうに座って」
私が咄嗟に否定すると、ロジェは傷付いたような切ない表情を浮かべた。
だけどすぐに困ったように笑い「分かったよ」と告げた。
(なんでロジェがそんな顔をするの?)
その理由は私には分からなかった。
だけど解決するには私の気持ちを伝えることと、ロジェの気持ちを知る必要がある。
その為に私達はここに来ている。
ロジェは対面するように座ると、本題である話に入っていく。
「伯爵から、僕が王女とは何も無かったという話は聞いているかな?」
「一応、聞きました……」
(信じてはいないけど)
「そっか。先にこれだけは言わせて欲しい。僕の気持ちは以前と何一つ変わっていない。誰よりもシアの事が大切なんだ。だからこれからも僕の婚約者でいて欲しいと思ってる。もう絶対に、シアに誤解をさせるようなことはしないから。もう一度だけ僕を信じて欲しい」
ロジェは真剣な表情で私の瞳をじっと見つめていた。
以前の私なら、この言葉を素直に受け入れていただろう。
だけど今はその言葉さえ、口先だけの薄っぺらいものに感じてしまう。
「……その前に、はっきりとさせておきたいことがあります」
「なにかな?シアの質問なら喜んで答えさせてもらうよ」
私が緊張しながら発言すると、ロジェは柔らかい表情で言った。
ロジェはいつだって私に優しい。
いつも私の事を気遣ってくれて、大切にしてくれる。
私はロジェの婚約者だから、その優しさは私にだけ向けられているものだと思っていた。
ミレーユが現れるまでは――。
「どうして、敵である王女殿下に優しくしたの?」
「優しくなんてしてないよ。あれは演技だ。僕がシアに興味がないと思わせるためのね」
ロジェは表情を変えることなく、淡々とした口調で続ける。
まるで作戦とでも言っているようだ。
私も最初はそうだと思って疑わなかった。
「前に……、泣いてる王女殿下をロジェが慰めてる場面を偶然見てしまったの。その時私にしてくれるように、優しい顔で王女殿下の頭を撫でてた。あれも演技だっていうの?」
「え?なんでそれをシアが知って……。いや、なんでもない。あれは慰めて機嫌をとっていただけだよ」
私がこの話題を出すとロジェの顔色が変わり、口調も焦るように僅かだが早口になっていた。
明らかに動揺している様子だ。
「私は幼い頃からずっとロジェの傍にいたんだよ。だから演じている時の表情の違いには気付いてた。だけど、あの時は演技している時の顔じゃ無かった。いつも私を慰めてくれる時に見せる、優しい表情だった。しかも王女殿下と二人きりの場で」
「……っ、ごめん」
ロジェは誤魔化せないと思ったのか困った様に顔を顰めた。
そして苦しそうな表情で謝ってきた。
(認めるの?)
「あの時は確かにそんな顔をしていたかもしれない。普段傲慢な態度ばかりとる王女が、僕の前で弱音を吐いたから。正直かなり驚いたけど、王女にも心があるんだなと思ったんだ」
「それであんな風に優しくしたの?」
「僕には王女の気持ちは分からないけど、あの時はあれが王女の本心ではないかと思ってしまったんだ。そう思ったら本当は寂しい人なのかなって……」
「…………」
ロジェの言葉を聞いて心底呆れてしまった。
酷いことをされているのに、少し弱みを見せた位で敵に優しくするなんて。
その間も私は苦しんでいたのに、何の言葉もかけてくれなかった。
そう思うと虚しくて泣きそうになる。
「それでロジェはあんな風に慰めたの?」
「……うん。あんなに寂しそうな姿を見せられたら、放っておけなかったんだ」
(これも優しいってことになるのかな……)
認めたくはないけど、そうかもしれないと思ってしまう。
ロジェは人当たりが良くて、私以外の人間にも割と親切だ。
だけど、今回はそれとはやはり違う気がする。
王女は私達を苦しめていた人間だ。
どうやっても受け入れられるわけが無い。
(でも……、そう思っているのは私だけだったのかもしれないな)
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