私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!【R18】

Rila

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第一章:私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!

30.もう逃げない

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夕食を終えた後、部屋に戻ろうとすると父に呼び止められた。
そして「話があるから、執務室に来なさいと」言われた。

この時、何の話をされるのか想像は付いていた。
今日の昼間、外に馬車が止めてあるのを偶然見かけた。
使用人に誰が来ているのか尋ねたところ、侯爵だと知らされた。
きっと婚約の件で話に来たんだと察しが付いた。

その話をいつ父から切り出されるのか、一日中そわそわしながら過ごしていたが、ついにその時が来てしまったようだ。


***


執務室に連れて行かれると、私達は対面するようにしてソファーに座る。
父は落ち着いた態度で、見た感じ普段と変わりない表情に見える。
私はと言うと先程から胸の鼓動がバクバクと鳴り、不安げな表情を隠せずにいた。

「シア、そんなに不安そうな顔をはしなくていい。今は私しかいないのだから」
「……あのっ、話ってロジェとの婚約のことですよね?」

私はどんな結論を侯爵が出したのか、気になって仕方が無かった。
その気持ちが先走ってしまい、焦るように口に出していた。

「その通りだ。シアが早く聞きたそうにしているから結論から話そうか」
「はい」

父の言葉にごくりと息を呑んだ。
私が強ばった表情を見せていると、父はふっと柔らかく微笑んだ。

(……え?)

その表情を見て一瞬、ほっとしてしまう。

「シア、安心しなさい。ロジェ殿はシアが誤解するようなことは、何も無かったとはっきり断言したそうだ。ミレーユ王女とは何も無かった。そして現在の気持ちを確認したところ、今でもシアとの婚約を強く望んでいるそうだ」
「…………」

父はその話を聞かせれば、私が安心すると思っていたようだ。
しかし私はその言葉に絶望し、表情を曇らせた。

「疑いが晴れたので、明日ロジェ殿が屋敷に来てくれるそうだ。そこでちゃんとシアに説明をすると言っていた」
「明日って……、そんな急に」

「きっとロジェ殿もシアに誤解されたままで辛かったのだと思う。だけどシアの為にずっと我慢していたんだ。今度はシアの方が歩み寄る番だ。それにいつまでも今のままという訳にもいかない」

たしかにこのまま隠れていても、何も前進しないし解決にもならない。
それは十分わかっている。

長い間ずっと一緒にいたのだから、これくらい目を瞑ればいいと思われているのかもしれない。
だけど私にはそんなことは出来ない。
信じていたからこそ、受ける衝撃も大きかった。
そのことでロジェに対する思いも一気に冷めて、心も離れて行ってしまった。
その状態で今までと同じように接するなんて出来るわけがない。

父は私が誤解しているのだと思っているようだ。
あの場にいなかった、何も見ていない父には到底分かるはずはない。
これ以上説得したとしても、多分無駄だろう。

だけど、一度は私の言葉を信じてくれて、ロジェと会わせないように動いてくれた。
その事には本当に感謝している。
おかげで心を落ち着かせる時間を持つことが出来た。
だからこれ以上、我が儘は言えない。

ここから先は、もう自分でなんとかするしか方法はないのだと悟った。

(たしかに、このまま隠れていても何も変わらない。いい加減、現実と向き合わなきゃだめだよね……)

私は掌をぎゅっときつく握りしめた。
そして父の顔をしっかりと瞳に捉えた。

「分かりました。明日、ロジェとちゃんと話してみます」
「そうか!分かってくれたか。では明日は気が済むまでちゃんと話して来なさい」

父はほっとした表情を表に出していたが、私は複雑な心境だった。
この話し合いでロジェとの婚約が白紙に戻るかもしれない。
今まで私の力になってくれた父をがっかりさせてしまうかもしれない。

(お父様、ごめんなさい……)


***


そして翌日、準備を済ませると私は応接間へと向かった。

戸惑いの気持ちは残っているが、私の意思は固まっていた。
この問題を解決しない限り、私はいつまでたっても前に進むことは出来ないだろう。
全てを解決するために、私はこれからロジェに会う。

(大丈夫……)

私は自分の胸に手を当てて、ざわつく心を落ち着かせようとした。
そして暫く待っていると、トントンと扉を叩く音が響く。
いつもに増して、鼓動の音がドクンと大きく脈打つ。

「はい……」
「お嬢様、ロジェ様がお越しです」

扉の奥から使用人の声が聞こえて、いよいよだと覚悟を決めた。
そして扉が開かれると、久しぶりにロジェの姿が視界に映る。

「シア!久しぶりだね。今日は会うことを許してくれて、本当に感謝してる。ずっとシアに会いたいと思っていたんだ」
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