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第一章:私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!
32.話合い②
しおりを挟む「私だって、ずっと寂しかったよ」
「……!」
「なのに、ロジェは放っておくだけで何もしてくれなかった」
「……ごめん。シアにはなるべく近づかないほうが良いと思っていたんだ。寂しそうに僕を見ているのには気付いてた」
「気付いていたのに、何もしてくれなかったんだ。敵である王女殿下は慰めるのに。やっぱりロジェにとって大切なのは王女殿下なんだよ」
「違うっ!僕が一番大切に思ってるのはシアだ。信じて欲しい」
私がぽつりと静かに呟くと、ロジェは焦って否定した。
だけど一連のロジェの態度を見ていたら、そんな言葉だけでは到底信じられるはずが無かった。
「どうやって信じたら良いの?何度も何度も二人が仲良くしている姿を見せつけられて。4人で話した時だって、王女殿下の腕を振りほどかなかったし」
「それはっ……。だけどそれならシアだって同じじゃないか。エルネスト殿下に触らせて。シアは僕の婚約者なのに」
ロジェはエルネストの名前を引き合いに出して私を責め始めた。
私はその言葉を待っていた。
今回エルネストに頼んだ目的が、そこにあるからだ。
私と同じ思いをロジェに思い知らせてやりたい。
同じ立場にさせて、私が感じた気持ちを知ってもらいたい。
「ロジェは私がエルネスト様に触られているのを見て嫌だと思った?」
「当たり前だ」
ロジェは間髪入れずに即答した。
だけどその言葉を聞いても全く嬉しくなかった。
「だったら、どうして自分は簡単に触らせるの?」
「それは、命令だから仕方なく」
「いつも命令命令って、その言葉で逃げるのってずるいと思う」
「…………」
私の言葉を聞いて、ロジェは苦しげな表情をして黙り込んでしまった。
なんでもかんでも『命令』という言葉で片付けようとしてくるロジェにはウンザリしていた。
自分の意思でそうしていることもあるというのに、全てを王女の命令の所為にしてしまうのはずるくて卑怯だ。
まるで自分は何も悪く無いと言い逃れしているようにしか思えない。
「ロジェは自分のことばかりで、私の事を全く気にかけてもくれない。私がどれだけ寂しかったのかも、嫌な思いをしてたのかも、全然分かってないよ!それって私に興味が無いってことだよね」
私は我慢出来なくなり、感情のままにぶつけていた。
目からは涙が溢れていたが、もうそんなことなんてどうでも良くなっていた。
「依頼をしてきた時も、一切私の心配なんてしてくれなかった。あの時も王女殿下の心配ばかりしてた。これってもう答えが出てるんじゃないのかな」
「それは……」
ロジェはあの時の事を思い出したのか表情を歪めた。
ミレーユに私の居場所を奪われた気分だ。
ロジェはミレーユに対しては気遣いをするのに、私には一切しなくなった。
それがどういうことを意味しているのか、冷静になって考えてみれば簡単に分かることだ。
「ロジェは気付いていないだけで、心はもう私ではなく王女殿下に向いてるってことだよ。だから私よりも王女殿下のことを優先した。優しくしたのも、放っておけないって思うのもそうとしか思えないよ」
「…………」
私の言葉を聞いたロジェは完全に固まっていた。
「ロジェの心は私に向いてないのに、婚約者のままでいろっていうのは残酷だと思う」
「違う、僕が本当に好きなのはシアで……」
ロジェは口籠もり、自分の言葉に自信が持てないように見える。
先程の勢いは完全に消えていた。
きっと王女に惹かれていたことに、ロジェ自身も気付いていなかったのだろう。
「シアは、僕の事が嫌いか?」
「それって、すごく意地悪な質問だね」
私は苦笑して答えた。
「……ごめん」
「ロジェのことは大好きだった。だけどロジェの心が私から離れていくように、私の心もロジェから離れていった」
傍にいたからこそ、些細な心の変化に気付いてしまった。
最初はただの違和感だったが、それが積み重なるに連れて不安になり不信感へと変わっていった。
こうなることは当然の事で、仕方がないことなのだと思う。
私の話を聞いてロジェは切なそうな顔を見せた。
「これからシアの心を取り戻せるように努力する。もうシアを蔑ろになんてしない。もっとシアの気持ちを考えて行動もする。だから……」
「さっきの私の話、聞いてたでしょ?ロジェが好きなのは私ではないんだよ」
私が困った顔で答えると、ロジェは首を横に振った。
「シアと離れるなんて、考えられないし考えたくもない。お願いだ、僕を見捨てないでくれ……」
「…………」
ロジェは今にも泣き出しそうな顔で、懇願する様な瞳で言ってきた。
こんな姿のロジェを見るのは初めてだった。
私はどうして良いか分からず、何も答えられなくなってしまう。
(どうしよう……)
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