39 / 66
第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
39.信じられない事実
しおりを挟む
「隣国も強引に押し付けられたような結婚だったから、あっさり辞退したそうよ。小国だから最初から強くは言えなかったんじゃないかな。まあ、噂だけどね」
「そう、なんだ」
「王女殿下が身籠ったことと、ロジェ・オクレールとの婚約が決まったのは本当よ」
以前毎日ロジェがミレーユの私室に通っていると言っていた。
だからあり得ない話ではないのかもしれない。
(やっぱりそういう関係だったんだ。だけど、もうロジェのことは私には関係ないよ)
心の奥底がもやもやして、嫌な気分になった。
必死に考えないようにしようとしても、この嫌な気分が取り除かれることは無かった。
そんな時だった。
「シア……!」
扉の方から聞き覚えのある声が響き、思わず顔を向けてしまう。
するとそこには今話題に出ていたロジェの姿があり、戸惑いから私は固まっていた。
周りはロジェの姿を見るなりヒソヒソと話している様子だったが、当の本人は顔色を変えることなく私の座る席へと近づいてきた。
「シアが登校して来てるって聞いて、居ても立ってもいられなくて。少し話せないかな?」
「…………」
先程から私は驚いてばかりだ。
今の状況にもついて行けず、私は言葉を発する事すら出来ないでいた。
「シア、驚かせてしまったよな。本当にごめん。だけどシアが学園に戻ってきてくれて嬉しいよ。今はここでしかシアに会うことが出来ないから」
「……それって、王女殿下と婚約したから?」
ロジェの白々しい台詞を聞いて思わず不満そうに答えてしまう。
私の言葉を聞くと、ロジェは一瞬驚いた顔をした後に表情を歪ませた。
だけど否定はしてこなかった。
「全てあの女に嵌められたんだ。僕は噂にあるようなことは一切していない。僕が今でも心から思っているのはシアだけだ」
ロジェは唇を噛みしめて、悔しそうに声を殺しながら呟いていた。
だけどそんな言葉を聞かされても、信じる気にはなれなかった。
そもそも私達はもう婚約者ではないし、ロジェがミレーユと婚約したことも、深い関係であることもどうでもいいことだ。
私はもうロジェに振り回されたくは無かった。
それだけははっきりとしている。
「もう、私には関係のないことだよ。だから会いに来ないでっ!」
「シア……、そんなこと言わないでくれ」
ロジェは懇願するような顔で見つめてきた。
しかもクラス中の視線が私達に向けられていて、すごく居心地が悪い。
私が戸惑っていると、隣に座っているイリアが立ち上がった。
「アルシェさん、ちょっと!」
「え?」
突然イリアは私の手を掴んだ。
反射的に立ち上がり、それを見計らうようにしてイリアは歩き出し教室から出て行った。
ロジェも驚いている様子で、背後から「シア!」と名前を呼ばれたが無視して連れられるがままに付いていった。
向かった先は女子トイレだった。
「そう、なんだ」
「王女殿下が身籠ったことと、ロジェ・オクレールとの婚約が決まったのは本当よ」
以前毎日ロジェがミレーユの私室に通っていると言っていた。
だからあり得ない話ではないのかもしれない。
(やっぱりそういう関係だったんだ。だけど、もうロジェのことは私には関係ないよ)
心の奥底がもやもやして、嫌な気分になった。
必死に考えないようにしようとしても、この嫌な気分が取り除かれることは無かった。
そんな時だった。
「シア……!」
扉の方から聞き覚えのある声が響き、思わず顔を向けてしまう。
するとそこには今話題に出ていたロジェの姿があり、戸惑いから私は固まっていた。
周りはロジェの姿を見るなりヒソヒソと話している様子だったが、当の本人は顔色を変えることなく私の座る席へと近づいてきた。
「シアが登校して来てるって聞いて、居ても立ってもいられなくて。少し話せないかな?」
「…………」
先程から私は驚いてばかりだ。
今の状況にもついて行けず、私は言葉を発する事すら出来ないでいた。
「シア、驚かせてしまったよな。本当にごめん。だけどシアが学園に戻ってきてくれて嬉しいよ。今はここでしかシアに会うことが出来ないから」
「……それって、王女殿下と婚約したから?」
ロジェの白々しい台詞を聞いて思わず不満そうに答えてしまう。
私の言葉を聞くと、ロジェは一瞬驚いた顔をした後に表情を歪ませた。
だけど否定はしてこなかった。
「全てあの女に嵌められたんだ。僕は噂にあるようなことは一切していない。僕が今でも心から思っているのはシアだけだ」
ロジェは唇を噛みしめて、悔しそうに声を殺しながら呟いていた。
だけどそんな言葉を聞かされても、信じる気にはなれなかった。
そもそも私達はもう婚約者ではないし、ロジェがミレーユと婚約したことも、深い関係であることもどうでもいいことだ。
私はもうロジェに振り回されたくは無かった。
それだけははっきりとしている。
「もう、私には関係のないことだよ。だから会いに来ないでっ!」
「シア……、そんなこと言わないでくれ」
ロジェは懇願するような顔で見つめてきた。
しかもクラス中の視線が私達に向けられていて、すごく居心地が悪い。
私が戸惑っていると、隣に座っているイリアが立ち上がった。
「アルシェさん、ちょっと!」
「え?」
突然イリアは私の手を掴んだ。
反射的に立ち上がり、それを見計らうようにしてイリアは歩き出し教室から出て行った。
ロジェも驚いている様子で、背後から「シア!」と名前を呼ばれたが無視して連れられるがままに付いていった。
向かった先は女子トイレだった。
11
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
勇者様がお望みなのはどうやら王女様ではないようです
ララ
恋愛
大好きな幼馴染で恋人のアレン。
彼は5年ほど前に神託によって勇者に選ばれた。
先日、ようやく魔王討伐を終えて帰ってきた。
帰還を祝うパーティーで見た彼は以前よりもさらにかっこよく、魅力的になっていた。
ずっと待ってた。
帰ってくるって言った言葉を信じて。
あの日のプロポーズを信じて。
でも帰ってきた彼からはなんの連絡もない。
それどころか街中勇者と王女の密やかな恋の話で大盛り上がり。
なんで‥‥どうして?
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる