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第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
43.胸のざわめき①
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「フェリシア」
「……は、はい」
私が目を逸らしていると、名前を呼ばれて再びエルネストの方に視線を向けた。
優しい瞳に捉えられ、再びバクバクと鼓動が早くなるのを感じる。
「大丈夫か?」
「え?」
「君の元婚約者も学園にいるし、周りの目も気になるよな。無理はしていないか?」
「それなら大丈夫です。今日同じクラスの子に話かけられて、流れで友達になっちゃいました。その子のおかげでロジェから逃げることも出来たし」
私がへらっとした顔で答えると、エルネストは僅かに目を細めた。
「まだ付き纏われているのか?」
「それは……。でも多分大丈夫だと思います」
「本当に大丈夫だと言い切れるのか?また君が辛い目に遭うのであれば、私が傍に……」
「だめです!これ以上エルネスト様には迷惑はかけられません。それに、クラスの子から聞いたんですが……」
これ以上エルネストにばかり頼ってはいけない気がする。
イリアから聞いた公爵令嬢の事を思い出し咄嗟に口から出そうになったが、言葉にしようとすると胸の奥がチクッとするのを感じた。
「私はフェリシアのことを迷惑だとは思っていないよ。寧ろ迷惑をかけているのはこちらの方だからな。それに君の傍にいたいと思っているのも私の意思だ。迷惑か?」
「そ、そんなことはないですけど。エルネスト様には婚約者が……」
エルネストに『傍にいたい』と言われて、私は目を泳がせてしまう。
先程から煩いほどに鳴っている鼓動は収まる気配は無いし、頬も僅かに熱くなっているのを感じる。
「婚約者……?私には婚約者などいないぞ。もしかしてイルメラ・エルデン公爵令嬢のことを言っている?彼女とはその様な関係ではないよ。私に婚約者がいないから、周りが好き勝手に噂をしているだけだ」
「そ、そうなんですか!?」
「ああ。だから余計な心配などしなくていい。そういえば、フェリシアは彼女と同じクラスだったな」
「はい。今日は色々あってどんな方か見るのを忘れちゃいましたが」
今日はロジェのことがあり、他の所に気を向ける余裕が無かった。
そしてエルネストの口から婚約者では無いとはっきりと聞くことが出来て、胸の底にあったもやもやが無くなっていくのを感じる。
(エルネスト様の婚約者じゃないんだ……)
今の言葉を聞いて私の表情も次第に緩んでいく。
そんな私の姿をエルネストは優しい顔で見つめていることに気付き、再びドキドキしてしまう。
(なんでさっきから私は、こんなにもドキドキしているんだろう)
「どうした?今日のフェリシアはころころと表情が変わって面白いな」
「……っ!」
私一人が動揺していて、エルネストは楽しげに話している。
ロジェとの事が解決して、もうエルネストに関わる理由がなくなってしまうのではないかと思っていたが、以前と変わらない姿を見ることが出来て私はどこか安心しているのかも知れない。
(これからも一緒にいて良いのかな。そうだったら嬉しいな)
「今度は怒ったか?」
「ち、違いますっ!そんなに笑わないでください。恥ずかしいので……」
私がムッとした顔を向けると、エルネストは『悪いな』と謝ってきたが、そこに反省の表情は一切無い。
以前と同じように、からかわれているみたいだ。
だけどそれが居心地が良いと思えてしまうのは何故だろう。
「照れていたのか。たしかにフェリシアは照れると睨む癖があるよな。照れ隠しのつもりか?本当に君と一緒にいると飽きないな。だからかな。暫くの間だったけど、会えない時間がすごく寂しく思えたし、時間があれば君のことばかり考えていたよ」
「……っ!!また、そんなことを言って。私のことをからかわないでくださいっ!」
「別にからかってるつもりはないんだけどな。なんていうか、フェリシアは本当に鈍感だな。ここまで言っても気付かないのは相当なものだな」
「……?」
私が不思議そうな顔で眉を顰めていると、エルネストは席から立ち上がり私の座るソファーの隣へと腰を下ろした。
突然距離が近くなりドキドキしてしまう。
(え?なんで隣に座るの……!?)
「……は、はい」
私が目を逸らしていると、名前を呼ばれて再びエルネストの方に視線を向けた。
優しい瞳に捉えられ、再びバクバクと鼓動が早くなるのを感じる。
「大丈夫か?」
「え?」
「君の元婚約者も学園にいるし、周りの目も気になるよな。無理はしていないか?」
「それなら大丈夫です。今日同じクラスの子に話かけられて、流れで友達になっちゃいました。その子のおかげでロジェから逃げることも出来たし」
私がへらっとした顔で答えると、エルネストは僅かに目を細めた。
「まだ付き纏われているのか?」
「それは……。でも多分大丈夫だと思います」
「本当に大丈夫だと言い切れるのか?また君が辛い目に遭うのであれば、私が傍に……」
「だめです!これ以上エルネスト様には迷惑はかけられません。それに、クラスの子から聞いたんですが……」
これ以上エルネストにばかり頼ってはいけない気がする。
イリアから聞いた公爵令嬢の事を思い出し咄嗟に口から出そうになったが、言葉にしようとすると胸の奥がチクッとするのを感じた。
「私はフェリシアのことを迷惑だとは思っていないよ。寧ろ迷惑をかけているのはこちらの方だからな。それに君の傍にいたいと思っているのも私の意思だ。迷惑か?」
「そ、そんなことはないですけど。エルネスト様には婚約者が……」
エルネストに『傍にいたい』と言われて、私は目を泳がせてしまう。
先程から煩いほどに鳴っている鼓動は収まる気配は無いし、頬も僅かに熱くなっているのを感じる。
「婚約者……?私には婚約者などいないぞ。もしかしてイルメラ・エルデン公爵令嬢のことを言っている?彼女とはその様な関係ではないよ。私に婚約者がいないから、周りが好き勝手に噂をしているだけだ」
「そ、そうなんですか!?」
「ああ。だから余計な心配などしなくていい。そういえば、フェリシアは彼女と同じクラスだったな」
「はい。今日は色々あってどんな方か見るのを忘れちゃいましたが」
今日はロジェのことがあり、他の所に気を向ける余裕が無かった。
そしてエルネストの口から婚約者では無いとはっきりと聞くことが出来て、胸の底にあったもやもやが無くなっていくのを感じる。
(エルネスト様の婚約者じゃないんだ……)
今の言葉を聞いて私の表情も次第に緩んでいく。
そんな私の姿をエルネストは優しい顔で見つめていることに気付き、再びドキドキしてしまう。
(なんでさっきから私は、こんなにもドキドキしているんだろう)
「どうした?今日のフェリシアはころころと表情が変わって面白いな」
「……っ!」
私一人が動揺していて、エルネストは楽しげに話している。
ロジェとの事が解決して、もうエルネストに関わる理由がなくなってしまうのではないかと思っていたが、以前と変わらない姿を見ることが出来て私はどこか安心しているのかも知れない。
(これからも一緒にいて良いのかな。そうだったら嬉しいな)
「今度は怒ったか?」
「ち、違いますっ!そんなに笑わないでください。恥ずかしいので……」
私がムッとした顔を向けると、エルネストは『悪いな』と謝ってきたが、そこに反省の表情は一切無い。
以前と同じように、からかわれているみたいだ。
だけどそれが居心地が良いと思えてしまうのは何故だろう。
「照れていたのか。たしかにフェリシアは照れると睨む癖があるよな。照れ隠しのつもりか?本当に君と一緒にいると飽きないな。だからかな。暫くの間だったけど、会えない時間がすごく寂しく思えたし、時間があれば君のことばかり考えていたよ」
「……っ!!また、そんなことを言って。私のことをからかわないでくださいっ!」
「別にからかってるつもりはないんだけどな。なんていうか、フェリシアは本当に鈍感だな。ここまで言っても気付かないのは相当なものだな」
「……?」
私が不思議そうな顔で眉を顰めていると、エルネストは席から立ち上がり私の座るソファーの隣へと腰を下ろした。
突然距離が近くなりドキドキしてしまう。
(え?なんで隣に座るの……!?)
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