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第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
45.私を変えたもの①-sideエルネスト-
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暫く前から、私はある女性に心を強く惹かれている。
こんな感情を自分が抱くことになるなんて思いもしなかった。
私の名前はエルネスト・ル・ブラン。
ブラン大国の第一王子であり、現在は貴族学園に通っている。
最上級学年になり最後の学園生活を謳歌しようと思っていた矢先に、陛下から姉上の監視を命じられた。
私は姉上の事を心底軽蔑している。
双子として生まれたことを嫌悪する程に。
そしていつかあの女をこの王家から追放する。
父上に出来ないのであれば、私の手で必ず――。
幼い頃から姉上の事は苦手だった。
いつも私のことを鋭い目で威嚇し、憎まれ口ばかり漏らしていた。
性別が男という理由だけで、優位な立場にいる私のことが許せないそうだ。
だけどそれを決めたのは私ではない。
生まれる前からこうなることは決まっていて、私はただそれに従っているに過ぎない。
強いて言えば第一王子として生まれた者の義務なのだろう。
毎日厳しい教育を受け、自由に遊べる時間は殆どない。
日々課題に追われ、気付けば一日が終わっている。
いつしかそれが日常になり、慣れていくと苦痛すら感じなくなっていった。
私にとっては当たり前のことであるという認識になっていたからだろう。
淡々と日課を熟すだけの日々が私の幼少期の記憶だ。
そして以前、何者かに毒を盛られそうになったことがある。
その頃の私は既に毒の知識と耐性を持っていたため、直前で違和感を覚えて危機を免れた。
犯人としてメイドが捕らえられたが、企てたのは恐らく姉上だ。
人の弱みにつけ込んで、そうさせるように命じたのだろう。
結局姉上がやったという証拠は見つからず、メイドが自白したことで事件は幕を閉じた。
しかし後日、処罰されたメイドの同僚が泣きながらメイド長に真実を語ったそうだ。
病気の妹を助けるために姉上の悪事に荷担したのだと。
その後私達は証拠を押さえようとしたが、彼女が行動した痕跡しか見つけることが出来なかった。
姉上は彼女との約束を破り、悪人だと罵った。
その時の姉上は薄笑みを浮かべ、勝ち誇ったような顔に見えた。
歪んだ顔を見て、はっきりと分かった。
この女の醜い本性が。
それを見た瞬間、激しく憎悪した。
私は感情が希薄なのだと思っていたが、この時ばかりは強い怒りに震えた。
それと同時に姉上に対して恐怖心を持った。
今後私の脅威になることは明らかだ。
陛下は姉上の行動には手を焼いているが、口だけで甘い処分しか下さない。
それならば私がどうにかするしかない。
姉上は気まぐれで傲慢な女だ。
私が強気で出れば、また何か仕掛けてくる可能性がある。
今は大人しくし、悪事の証拠を集めることに徹することにした。
証拠を集め真実を突きつけることが出来れば、父上も動かざるを得なくなるはずだ。
悔しいが、今の私の力ではそれくらいしかやれる事はない。
そんな時に出会ったのがフェリシアだった。
こんな感情を自分が抱くことになるなんて思いもしなかった。
私の名前はエルネスト・ル・ブラン。
ブラン大国の第一王子であり、現在は貴族学園に通っている。
最上級学年になり最後の学園生活を謳歌しようと思っていた矢先に、陛下から姉上の監視を命じられた。
私は姉上の事を心底軽蔑している。
双子として生まれたことを嫌悪する程に。
そしていつかあの女をこの王家から追放する。
父上に出来ないのであれば、私の手で必ず――。
幼い頃から姉上の事は苦手だった。
いつも私のことを鋭い目で威嚇し、憎まれ口ばかり漏らしていた。
性別が男という理由だけで、優位な立場にいる私のことが許せないそうだ。
だけどそれを決めたのは私ではない。
生まれる前からこうなることは決まっていて、私はただそれに従っているに過ぎない。
強いて言えば第一王子として生まれた者の義務なのだろう。
毎日厳しい教育を受け、自由に遊べる時間は殆どない。
日々課題に追われ、気付けば一日が終わっている。
いつしかそれが日常になり、慣れていくと苦痛すら感じなくなっていった。
私にとっては当たり前のことであるという認識になっていたからだろう。
淡々と日課を熟すだけの日々が私の幼少期の記憶だ。
そして以前、何者かに毒を盛られそうになったことがある。
その頃の私は既に毒の知識と耐性を持っていたため、直前で違和感を覚えて危機を免れた。
犯人としてメイドが捕らえられたが、企てたのは恐らく姉上だ。
人の弱みにつけ込んで、そうさせるように命じたのだろう。
結局姉上がやったという証拠は見つからず、メイドが自白したことで事件は幕を閉じた。
しかし後日、処罰されたメイドの同僚が泣きながらメイド長に真実を語ったそうだ。
病気の妹を助けるために姉上の悪事に荷担したのだと。
その後私達は証拠を押さえようとしたが、彼女が行動した痕跡しか見つけることが出来なかった。
姉上は彼女との約束を破り、悪人だと罵った。
その時の姉上は薄笑みを浮かべ、勝ち誇ったような顔に見えた。
歪んだ顔を見て、はっきりと分かった。
この女の醜い本性が。
それを見た瞬間、激しく憎悪した。
私は感情が希薄なのだと思っていたが、この時ばかりは強い怒りに震えた。
それと同時に姉上に対して恐怖心を持った。
今後私の脅威になることは明らかだ。
陛下は姉上の行動には手を焼いているが、口だけで甘い処分しか下さない。
それならば私がどうにかするしかない。
姉上は気まぐれで傲慢な女だ。
私が強気で出れば、また何か仕掛けてくる可能性がある。
今は大人しくし、悪事の証拠を集めることに徹することにした。
証拠を集め真実を突きつけることが出来れば、父上も動かざるを得なくなるはずだ。
悔しいが、今の私の力ではそれくらいしかやれる事はない。
そんな時に出会ったのがフェリシアだった。
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