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第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
57.告白②
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「その表情が答えだと思ってもいい?」
「え?」
「フェリシア、私の婚約者になって欲しい。絶対に君のことを大切にする」
「婚約者って、いきなり過ぎますっ!」
私は思わず本音を漏らしてしまう。
「そうだな。驚かせてしまったことは謝るよ。だけど私は本気だ。本気でフェリシアが欲しい。こんな気持ちを誰かに抱くのは初めてで自分でも驚いているくらいだ。信じられないかもしれないけど、今の私は感情をコントロール出来ないくらい、君のことしか考えられなくなってる」
「……っ」
「君が本気で私のことを嫌っていない限り、諦めるつもりはないよ」
「で、でもっ……」
エルネストが、私のことを好きだと思っていてくれることはすごく嬉しい。
私もきっと彼のことを好きになりかけている。
しかし、素直に頷けない理由はいくつもあって、私はそれをちゃんと言葉にして伝えなければいけない。
それなのに、頭の中がぐちゃぐちゃになり、すぐに言葉が出てこなかった。
「姉上のことなら何も気にする心配は無いよ。私は陛下のような甘い考えは持っていないし、今までして来たことの報いは必ず受けさせる」
「でも王女殿下はロジェと婚約するって……」
「ああ、そうらしいな。だけど、姉上が考えたシナリオ通りに事が進むとも限らない」
「何か企んでいるんですか?」
エルネストは口角を上げて含み笑いを見せる。
その姿を見て、ゾクッと背筋に鳥肌が立った。
(そういえば、エルネスト様は腹黒かったわ。ずっと王女殿下のことを憎んでいるようだったし、許してはいないのね)
「どうだろうね」
「…………」
「だけど、フェリシアが王宮で心地よく生活出来るように準備は整えておくから。そこらへんは何も不安に思うことはないよ」
エルネストは笑顔で答えると、小声で「フェリシアが来る頃には、姉上はこの国からはいなくなっているだろうな」と呟いた。
その言葉は私の耳には届かなかった。
「私まだエルネスト様と婚約するなんて……。そもそも私なんかがエルネスト様の婚約者になんて無理があるかと思います」
「どうしてそう思うのか聞いてもいい?」
「だって、私は……頭が良いわけでもないし、イルメラ様のように高い爵位の娘ではないです」
「そんなこと、大した問題にはならないよ。どうして、そこでイルメラ嬢の名前が出てくるのかが気になるな」
「それはっ……!でもエルネスト様が気にしなくても、周りが気にします」
自分で言ったはずなのに、現実を突きつけられている気がして胸の奥がズキッと痛くなった。
するとエルネストの手がスッと顔の方へと伸びてきて、頬に優しく添えられる。
「フェリシア、私は君の気持ちが知りたい。私が欲しいのはイルメラ嬢でも他の令嬢でもない。フェリシアだけだ」
「……っ」
エルネストの言葉を聞いて、私は唾を呑み込んだ。
きっとこの人は私がちゃんと答えない限り、離してはくれないだろう。
この瞳の真っ直ぐさを見ていれば分かる。
「私は……」
「うん」
「エルネスト様のことを好きになりかけているのだと思います。だけど、自分の気持ちに自信がなくて……。本当に好きなのか、まだ良くわからなくて。でもすごく気になるのも事実で……、だからっ」
全く纏まりのない言葉だった。
口に出そうとすると何かの感情が溢れてきて、考えを呑み込まれてしまう。
私は本当に不器用で、今まで人に頼ってばかりいたせいで、いざという時に上手く喋れない。
こんな私がエルネストの隣に立つなど、どう考えても相応しくない。
だけど離れたくないという感情もあり、曖昧な言葉でしか伝えられなかった。
「ごめんなさい。何言っているのか分からないですよね」
言ってる私自身が良く分からないのだから、聞いてるエルネストに伝わるはずがない。
私は「あはは」と乾いた笑いを漏らした。
「そんなことはない。フェリシアの気持ち、ちゃんと伝わったよ」
「え……」
エルネストはひどく優しい顔を見せて微笑んだ。
それから間もなくして、唇に温かい何かがそっと重なった。
それは一瞬のようにも、すごく長い時間のようにも感じた。
ゆっくりと剥がされていくと、再びエルネストと視線が絡む。
「今はそれで充分だ。フェリシアの心が私に向いているのだと分かったからな」
「……っ!!」
その時漸く、その感触の意味を理解した。
私はエルネストに口付けられた。
「君は驚くタイミングが少しずれているな。そういう所、面白くて、可愛くて、フェリシアらしい。好きだよ」
「……っ」
「顔が真っ赤だな。もう一度口付けたら、次はどんな反応を見せてくれるんだろうな」
エルネストは意地悪そうに笑っていた。
私はその顔を見た瞬間、一気に恥ずかしくなり、慌てるように手で口元を塞いだ。
「私に口付けられて嫌だったか?」
その質問に私は眉を顰める。
嫌だなんて絶対に思っていないが、答えにくい質問を敢えてしてくるところがエルネストらしい。
私は口元を抑えたまま首を何度か横に振った。
「フェリシア、その手を退けて。ちゃんと言葉に出して言ってくれないと分からないよ?」
エルネストの声は優しいのに、とても意地悪な顔で私は困惑していた。
だけど、エルネストはちゃんと私に気持ちを伝えてくれた。
それなのに、私はまだはっきりと答えを出したわけではない。
(誤解されたくない……)
恥ずかしさはまだ残っていたが、私はゆっくりと口元を覆っている掌を剥がした。
「私、嫌じゃないです。意地悪なエルネスト様も、嫌いじゃない」
私が口元を揺らすと、エルネストは満足そうに微笑んでいた。
そしてそのまま抱きしめられ、気付けばエルネストの腕の中にすっぽり包まれていた。
「嫌いじゃ無いか。素直に『好き』とはまだ言ってくれないのだな。焦らすね」
「それはっ……!」
「まあいいか。これからフェリシアに『好き』だと言わせればいいだけの話だからな。私は絶対にフェリシアのことを諦めないから。婚約すると誓って貰えるまで、何度でも気持ちを伝えることにするよ」
エルネストは楽しげに話していた。
その言葉を聞いて私ドキドキしていたが、いつの間にか緊張は解けていた。
抱きしめられているので、エルネストの体温がとても心地よく感じているからなのかもしれない。
「え?」
「フェリシア、私の婚約者になって欲しい。絶対に君のことを大切にする」
「婚約者って、いきなり過ぎますっ!」
私は思わず本音を漏らしてしまう。
「そうだな。驚かせてしまったことは謝るよ。だけど私は本気だ。本気でフェリシアが欲しい。こんな気持ちを誰かに抱くのは初めてで自分でも驚いているくらいだ。信じられないかもしれないけど、今の私は感情をコントロール出来ないくらい、君のことしか考えられなくなってる」
「……っ」
「君が本気で私のことを嫌っていない限り、諦めるつもりはないよ」
「で、でもっ……」
エルネストが、私のことを好きだと思っていてくれることはすごく嬉しい。
私もきっと彼のことを好きになりかけている。
しかし、素直に頷けない理由はいくつもあって、私はそれをちゃんと言葉にして伝えなければいけない。
それなのに、頭の中がぐちゃぐちゃになり、すぐに言葉が出てこなかった。
「姉上のことなら何も気にする心配は無いよ。私は陛下のような甘い考えは持っていないし、今までして来たことの報いは必ず受けさせる」
「でも王女殿下はロジェと婚約するって……」
「ああ、そうらしいな。だけど、姉上が考えたシナリオ通りに事が進むとも限らない」
「何か企んでいるんですか?」
エルネストは口角を上げて含み笑いを見せる。
その姿を見て、ゾクッと背筋に鳥肌が立った。
(そういえば、エルネスト様は腹黒かったわ。ずっと王女殿下のことを憎んでいるようだったし、許してはいないのね)
「どうだろうね」
「…………」
「だけど、フェリシアが王宮で心地よく生活出来るように準備は整えておくから。そこらへんは何も不安に思うことはないよ」
エルネストは笑顔で答えると、小声で「フェリシアが来る頃には、姉上はこの国からはいなくなっているだろうな」と呟いた。
その言葉は私の耳には届かなかった。
「私まだエルネスト様と婚約するなんて……。そもそも私なんかがエルネスト様の婚約者になんて無理があるかと思います」
「どうしてそう思うのか聞いてもいい?」
「だって、私は……頭が良いわけでもないし、イルメラ様のように高い爵位の娘ではないです」
「そんなこと、大した問題にはならないよ。どうして、そこでイルメラ嬢の名前が出てくるのかが気になるな」
「それはっ……!でもエルネスト様が気にしなくても、周りが気にします」
自分で言ったはずなのに、現実を突きつけられている気がして胸の奥がズキッと痛くなった。
するとエルネストの手がスッと顔の方へと伸びてきて、頬に優しく添えられる。
「フェリシア、私は君の気持ちが知りたい。私が欲しいのはイルメラ嬢でも他の令嬢でもない。フェリシアだけだ」
「……っ」
エルネストの言葉を聞いて、私は唾を呑み込んだ。
きっとこの人は私がちゃんと答えない限り、離してはくれないだろう。
この瞳の真っ直ぐさを見ていれば分かる。
「私は……」
「うん」
「エルネスト様のことを好きになりかけているのだと思います。だけど、自分の気持ちに自信がなくて……。本当に好きなのか、まだ良くわからなくて。でもすごく気になるのも事実で……、だからっ」
全く纏まりのない言葉だった。
口に出そうとすると何かの感情が溢れてきて、考えを呑み込まれてしまう。
私は本当に不器用で、今まで人に頼ってばかりいたせいで、いざという時に上手く喋れない。
こんな私がエルネストの隣に立つなど、どう考えても相応しくない。
だけど離れたくないという感情もあり、曖昧な言葉でしか伝えられなかった。
「ごめんなさい。何言っているのか分からないですよね」
言ってる私自身が良く分からないのだから、聞いてるエルネストに伝わるはずがない。
私は「あはは」と乾いた笑いを漏らした。
「そんなことはない。フェリシアの気持ち、ちゃんと伝わったよ」
「え……」
エルネストはひどく優しい顔を見せて微笑んだ。
それから間もなくして、唇に温かい何かがそっと重なった。
それは一瞬のようにも、すごく長い時間のようにも感じた。
ゆっくりと剥がされていくと、再びエルネストと視線が絡む。
「今はそれで充分だ。フェリシアの心が私に向いているのだと分かったからな」
「……っ!!」
その時漸く、その感触の意味を理解した。
私はエルネストに口付けられた。
「君は驚くタイミングが少しずれているな。そういう所、面白くて、可愛くて、フェリシアらしい。好きだよ」
「……っ」
「顔が真っ赤だな。もう一度口付けたら、次はどんな反応を見せてくれるんだろうな」
エルネストは意地悪そうに笑っていた。
私はその顔を見た瞬間、一気に恥ずかしくなり、慌てるように手で口元を塞いだ。
「私に口付けられて嫌だったか?」
その質問に私は眉を顰める。
嫌だなんて絶対に思っていないが、答えにくい質問を敢えてしてくるところがエルネストらしい。
私は口元を抑えたまま首を何度か横に振った。
「フェリシア、その手を退けて。ちゃんと言葉に出して言ってくれないと分からないよ?」
エルネストの声は優しいのに、とても意地悪な顔で私は困惑していた。
だけど、エルネストはちゃんと私に気持ちを伝えてくれた。
それなのに、私はまだはっきりと答えを出したわけではない。
(誤解されたくない……)
恥ずかしさはまだ残っていたが、私はゆっくりと口元を覆っている掌を剥がした。
「私、嫌じゃないです。意地悪なエルネスト様も、嫌いじゃない」
私が口元を揺らすと、エルネストは満足そうに微笑んでいた。
そしてそのまま抱きしめられ、気付けばエルネストの腕の中にすっぽり包まれていた。
「嫌いじゃ無いか。素直に『好き』とはまだ言ってくれないのだな。焦らすね」
「それはっ……!」
「まあいいか。これからフェリシアに『好き』だと言わせればいいだけの話だからな。私は絶対にフェリシアのことを諦めないから。婚約すると誓って貰えるまで、何度でも気持ちを伝えることにするよ」
エルネストは楽しげに話していた。
その言葉を聞いて私ドキドキしていたが、いつの間にか緊張は解けていた。
抱きしめられているので、エルネストの体温がとても心地よく感じているからなのかもしれない。
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