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怪我人たちの静かならざる日常6
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並木エリアには小さな柵があり、立ち入りが禁止されている。
ここには球根や花の種が植えてあるからだ。毎年、春にはたくさんの花が咲く。がん患者サロンのボランティアの皆さんが植えてくれたチューリップを踏むわけにはいかない。
幅1メートルほどの植え込みエリアを飛び越える。
しだれサクラの枝は避けきれない。
枯れ枝が頬を割いた。
痛いと思うより先に足を動かす。
桐生さんの前には歩道と駐車場を隔てるツツジの植え込みがあった。
もうすぐ追いつく。
「友利さんっ!」
桐生さんが振り返った。
「友利さんっ、そっち……お願いしますっ!」
そっちって、どっちのことだ?
混乱する私をよそに、桐生さんはツツジを囲っているブロックに飛び乗り、そのまま飛び越えた。その向こう側は歩道だ。
なるほど、私の位置からは見えないが、桐生さんは男の子を追い越していたらしい。
挟み撃ちというわけだ。
だが待ってくれ。
ブロックの高さは80センチくらいある。
これに、桐生さんのように華麗に飛び乗れと?
無理で無茶で無謀すぎないか?
「ばかやろうっ! できねえじゃねえっ!」
出来ると思って言ってきた桐生さんの信頼に応えてやろうじゃないか。
というか、できないなんて思ってないだろう?
止まってしまったら勢いも止まる。
全力で走るこのスピードを、そのまま跳躍に乗せる。
無理だど思ったが飛び乗れた。
「すげえ、やればできんじゃん!」
自分を褒めてツツジを飛び越える。
というかアスファルト!
飛び越えた後の高さを考えていなかった。
バンッと恥ずかしいくらい大きな音を立てて、思いっきり両足の裏全体で着地した。
ビリビリ衝撃が伝わってくる。
「いっってえええええ!」
もう、涙目になりそうな痛さだ。
この前の杖で打たれた時の比ではない。
膝と腰!
私のライフはもうゼロよーなどと、ガキの頃に流行ったセリフを心の中で言いながら、見ると、桐生さんを見てビビったのか、男の子がこっちに向かって走ってくる。
うん、まあ……今度はあれだな。
桐生さんの顔が怖いってより、目の前にいきなり飛び出てきたにいちゃんにびっくりしたっててところだろうなあ。
本人、たいして悪いことしたつもりないだろうし。
素知らぬ顔で男の子に道を譲るふりをして、油断を誘って手を伸ばす。
「うわっ!」
男の子が悲鳴をあげるが、はい、残念。
「俺、昔バスケ部だったんだよねえ。フェイクかますの、割と得意でさ」
はい、確保。
ニッコリ笑いかけて抱き上げる。
おうおう、軽いなあ、ガキ。
「さて、と。んじゃ、病院にーー」
ーーウィンウィンウィン!!!
唐突に爆音が響いた。
見れば、男の子が首から下げた卵のような形のものを握っている。
言わずと知れた、防犯ブザーだ。
「待って待って、俺たち、怪しいもんじゃねえって。病院の人!!」
病院の周りはリハビリを兼ねて散歩をする入院患者が沢山いる。
音を聞きつけて人々が集まってきた。
「桐生さん、助けて! 事案になるっ!」
あああ、お願いです患者様。スマホで写真とか勘弁してください。
不審者じゃねえってば。
私たちは、しがない下っ端の事務員です!!
ここには球根や花の種が植えてあるからだ。毎年、春にはたくさんの花が咲く。がん患者サロンのボランティアの皆さんが植えてくれたチューリップを踏むわけにはいかない。
幅1メートルほどの植え込みエリアを飛び越える。
しだれサクラの枝は避けきれない。
枯れ枝が頬を割いた。
痛いと思うより先に足を動かす。
桐生さんの前には歩道と駐車場を隔てるツツジの植え込みがあった。
もうすぐ追いつく。
「友利さんっ!」
桐生さんが振り返った。
「友利さんっ、そっち……お願いしますっ!」
そっちって、どっちのことだ?
混乱する私をよそに、桐生さんはツツジを囲っているブロックに飛び乗り、そのまま飛び越えた。その向こう側は歩道だ。
なるほど、私の位置からは見えないが、桐生さんは男の子を追い越していたらしい。
挟み撃ちというわけだ。
だが待ってくれ。
ブロックの高さは80センチくらいある。
これに、桐生さんのように華麗に飛び乗れと?
無理で無茶で無謀すぎないか?
「ばかやろうっ! できねえじゃねえっ!」
出来ると思って言ってきた桐生さんの信頼に応えてやろうじゃないか。
というか、できないなんて思ってないだろう?
止まってしまったら勢いも止まる。
全力で走るこのスピードを、そのまま跳躍に乗せる。
無理だど思ったが飛び乗れた。
「すげえ、やればできんじゃん!」
自分を褒めてツツジを飛び越える。
というかアスファルト!
飛び越えた後の高さを考えていなかった。
バンッと恥ずかしいくらい大きな音を立てて、思いっきり両足の裏全体で着地した。
ビリビリ衝撃が伝わってくる。
「いっってえええええ!」
もう、涙目になりそうな痛さだ。
この前の杖で打たれた時の比ではない。
膝と腰!
私のライフはもうゼロよーなどと、ガキの頃に流行ったセリフを心の中で言いながら、見ると、桐生さんを見てビビったのか、男の子がこっちに向かって走ってくる。
うん、まあ……今度はあれだな。
桐生さんの顔が怖いってより、目の前にいきなり飛び出てきたにいちゃんにびっくりしたっててところだろうなあ。
本人、たいして悪いことしたつもりないだろうし。
素知らぬ顔で男の子に道を譲るふりをして、油断を誘って手を伸ばす。
「うわっ!」
男の子が悲鳴をあげるが、はい、残念。
「俺、昔バスケ部だったんだよねえ。フェイクかますの、割と得意でさ」
はい、確保。
ニッコリ笑いかけて抱き上げる。
おうおう、軽いなあ、ガキ。
「さて、と。んじゃ、病院にーー」
ーーウィンウィンウィン!!!
唐突に爆音が響いた。
見れば、男の子が首から下げた卵のような形のものを握っている。
言わずと知れた、防犯ブザーだ。
「待って待って、俺たち、怪しいもんじゃねえって。病院の人!!」
病院の周りはリハビリを兼ねて散歩をする入院患者が沢山いる。
音を聞きつけて人々が集まってきた。
「桐生さん、助けて! 事案になるっ!」
あああ、お願いです患者様。スマホで写真とか勘弁してください。
不審者じゃねえってば。
私たちは、しがない下っ端の事務員です!!
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