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ランチタイムのありふれた日常2
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「子供には厳しい時間です」
「おう、はっきり言って、キツイと思うぞ。うちは待ち時間が長いから、子供には相当辛いと思う」
「その通りです。しかし、そのために屋上の植物園やカフェなどがあります」
その桐生さんの言葉にかぶさるように、放送が流れた。
――患者様のお呼び出しを致します……
受付に来るようにとの呼び出しだ。
待合ホールから離れたところにいても、時間になれば放送で呼んでもらえる。
看護師にあらかじめ言っておけばスムーズだが、中待合に呼ばれる時点でいなければ、即座に全館放送が入るのだから移動していても問題はない。
「待ち時間が長く、子供が飽きてしまうのならいくつかの場所を回ればよいではないでしょうか。いつも来ているのであればそのくらいの機転はきいてもおかしくはありません」
それどころか、小さな子供がいるのだから看護師や受付クラークから時間をつぶしに行くことを勧められそうだ。
「それと、これもよくクレームになりますが、診察時間は短いです」
その一方で、患者の話をよく聞くドクターは一人当たりの対応が長すぎるというクレームもある。
「検査や何らかの処置が必要な場合はもう少し長くなりますが、それでも、子供が建物の外に出て中庭に入り込んで折り紙を置いてから戻る――などと言う事をしても気づかれないほどの長さにはならないのではないでしょうか」
「結構距離あるもんなあ……一番近い耳鼻科からでも100メートル以上あるだろ」
「一度ならまだしも、毎日ですから、気付かれないはずがありません。総合受付付近には看護師長もいます」
「早く戻ろうとして子供が走ったりしたら、とっ捕まって怒られるよな」
「そうです。であるならば、外来より、病棟から出てきたと考える方が自然ではないでしょうか」
「病棟……」
「入院患者は病院の周りをよく散歩しているではありませんか」
危うく通報されかけた私としては、非常に苦い言葉だ。
「それから、先ほどの子供は入院していたのですから『患者のための散歩コース』を知っていてもおかしくはありませんし、たとえ出入り口で師長に会ってもすでに顔見知りであいさつすら交わしていましたよ」
「え。マジで」
「わたしたちはあの子供の名前も知らない状態でした。当然、その親御さんのことも知りません。しかし、院内に戻ってきたとき、受付にいた師長に『この子の親御さんにお知らせしておいてください』と友利さんが言っただけで通じたではありませんか」
「そうだっけ」
犯罪者にされてはたまったものではないと焦っていたため、自分がどういう対応をしていたか、全く覚えていない。
「師長は、あの子をご存知だった為、スムーズに連絡が取れたと考えるべきでしょう」
「……桐生さん、それを師長に聞きに行ったとか」
「先ほど、真っすぐ病棟に向かった旨をお話したかと思いますが」
「だよなー。ごめん。で、毎日だからNICUだと思ったわけね」
「そうです。子供の年齢が低いことをかんがみれば、下に兄弟がいてもおかしくはありません。NICUであれば、母親が毎日面会に訪れても自然です」
「だよなー。母乳とか届けないといけないだろうし。お母さんは大変だ。でも、子供と生花は病棟に入れないもんな」
なるほどなあと思いながら、温めなおしてもらったパスタ口に運ぶ。
少し伸びてしまっているがソースが美味しい。
「もちろん、違う病棟や、母親自身が通院している可能性もありました。しかし先日ここでお会いした親子を思い出し……」
「もしかしてって思ったわけね」
「はい。NICUに伺ったところ、正解でしたので、少しお話をしてきた次第です」
そういう事だったのかと思いながらパスタを平らげる。もともと食べかけだったせいで量が少ないからあっという間だ。
「でもよかったな」
「はい。無事に済みました」
「いや、桐生さんが」
先日は、カフェの前でかばった子供に泣かれてしまったが、今日は違う。
「カッコいいってさ。今度から、ゆーと君が折り紙の中に書くのは、わんわんヒーローじゃなくて桐生さんだったりして」
「丸の中に三つの丸が書かれると?」
目と口で三つの丸か。
桐生さんは相変わらず無表情だが、すぐにラテを飲んだのは照れ隠しだということくらいはすぐにわかる。
そうだな、これは桐生さん通訳検定3級以下の問題だ。
「おう、はっきり言って、キツイと思うぞ。うちは待ち時間が長いから、子供には相当辛いと思う」
「その通りです。しかし、そのために屋上の植物園やカフェなどがあります」
その桐生さんの言葉にかぶさるように、放送が流れた。
――患者様のお呼び出しを致します……
受付に来るようにとの呼び出しだ。
待合ホールから離れたところにいても、時間になれば放送で呼んでもらえる。
看護師にあらかじめ言っておけばスムーズだが、中待合に呼ばれる時点でいなければ、即座に全館放送が入るのだから移動していても問題はない。
「待ち時間が長く、子供が飽きてしまうのならいくつかの場所を回ればよいではないでしょうか。いつも来ているのであればそのくらいの機転はきいてもおかしくはありません」
それどころか、小さな子供がいるのだから看護師や受付クラークから時間をつぶしに行くことを勧められそうだ。
「それと、これもよくクレームになりますが、診察時間は短いです」
その一方で、患者の話をよく聞くドクターは一人当たりの対応が長すぎるというクレームもある。
「検査や何らかの処置が必要な場合はもう少し長くなりますが、それでも、子供が建物の外に出て中庭に入り込んで折り紙を置いてから戻る――などと言う事をしても気づかれないほどの長さにはならないのではないでしょうか」
「結構距離あるもんなあ……一番近い耳鼻科からでも100メートル以上あるだろ」
「一度ならまだしも、毎日ですから、気付かれないはずがありません。総合受付付近には看護師長もいます」
「早く戻ろうとして子供が走ったりしたら、とっ捕まって怒られるよな」
「そうです。であるならば、外来より、病棟から出てきたと考える方が自然ではないでしょうか」
「病棟……」
「入院患者は病院の周りをよく散歩しているではありませんか」
危うく通報されかけた私としては、非常に苦い言葉だ。
「それから、先ほどの子供は入院していたのですから『患者のための散歩コース』を知っていてもおかしくはありませんし、たとえ出入り口で師長に会ってもすでに顔見知りであいさつすら交わしていましたよ」
「え。マジで」
「わたしたちはあの子供の名前も知らない状態でした。当然、その親御さんのことも知りません。しかし、院内に戻ってきたとき、受付にいた師長に『この子の親御さんにお知らせしておいてください』と友利さんが言っただけで通じたではありませんか」
「そうだっけ」
犯罪者にされてはたまったものではないと焦っていたため、自分がどういう対応をしていたか、全く覚えていない。
「師長は、あの子をご存知だった為、スムーズに連絡が取れたと考えるべきでしょう」
「……桐生さん、それを師長に聞きに行ったとか」
「先ほど、真っすぐ病棟に向かった旨をお話したかと思いますが」
「だよなー。ごめん。で、毎日だからNICUだと思ったわけね」
「そうです。子供の年齢が低いことをかんがみれば、下に兄弟がいてもおかしくはありません。NICUであれば、母親が毎日面会に訪れても自然です」
「だよなー。母乳とか届けないといけないだろうし。お母さんは大変だ。でも、子供と生花は病棟に入れないもんな」
なるほどなあと思いながら、温めなおしてもらったパスタ口に運ぶ。
少し伸びてしまっているがソースが美味しい。
「もちろん、違う病棟や、母親自身が通院している可能性もありました。しかし先日ここでお会いした親子を思い出し……」
「もしかしてって思ったわけね」
「はい。NICUに伺ったところ、正解でしたので、少しお話をしてきた次第です」
そういう事だったのかと思いながらパスタを平らげる。もともと食べかけだったせいで量が少ないからあっという間だ。
「でもよかったな」
「はい。無事に済みました」
「いや、桐生さんが」
先日は、カフェの前でかばった子供に泣かれてしまったが、今日は違う。
「カッコいいってさ。今度から、ゆーと君が折り紙の中に書くのは、わんわんヒーローじゃなくて桐生さんだったりして」
「丸の中に三つの丸が書かれると?」
目と口で三つの丸か。
桐生さんは相変わらず無表情だが、すぐにラテを飲んだのは照れ隠しだということくらいはすぐにわかる。
そうだな、これは桐生さん通訳検定3級以下の問題だ。
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