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ひび割れそうになる日常 1
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脳神経外科も整形外科も、目が回るような忙しさの中、追加の仕事を作った私たちには非常に厳しかった。
いや、もちろん優しくはしてくれる。
白衣の天使なんて言われるのがよくわかるレベルで、忙しいにもかかわらず笑顔で対応してくれるのだが、その状況が、非常に厳しいのだ。私たちにとって。
「相談員さん守って怪我したと思ったら、今度は院外に脱走した子供を追いかけたんだって? 体を張って頑張るのもいいけど、こっちがやれることにも限界があるから、程々にね」
脳神経外科の絹井先生からはそう呆れられ、
「傷、開いても入院まで行かなくてよかったですね。今、病棟満室だからウッカリしたら他院に行かないといけなくなってましたよ」
などと、包帯を巻いてくれた看護師から言われ、
「こんなに血がにじんでるのに痛いと思わなかったの? ――あらやだ、血圧182じゃない。精神的なテンションはあげてもいいけど、血圧的なテンションはあげないでよ」
と、ベテランの看護師からは医療ギャグを言われた。
高血圧のことを、英語でハイパーテンションとも言うからだ。
それよりも待て。
182はあまりにも高すぎないか?
健診で140以上になると、再検診のお便りが入る。明らかに、はるかにオーバーした数字だぞ。
数字を見たとたんに目が回りそうになった。
「あー友利君、心配しなくていいから」
「こんなに血圧高くて、死なないんですか」
「職業病みたいなものよ。人の命を預かる仕事だからね。どのポジションにいても精神的な負担は大きくなるのよ。わりと200くらいまでは普通じゃない?」
「それ、大丈夫なんですか?」
「リラックスしてる時に低ければ大丈夫よ」
それにしても……と、時計を横目で見た。
現時刻は20時を回っている。
私の症状は急を要しないと判断されたので、学校の事故関係者の診察の後に続けて行われた。
パートの看護師も事務員もみな帰宅している。
通常の外来対応時間は終了し、現在は当直時間帯だ。にもかかわらず、事故対応のために多くのスタッフがのこっている。
救急の受付にも、委託職員のエリアマネージャーがフォローに入るなど、通常の倍の人員で対応しているが、それでも回らないところもある。
特に今日一日、事故の一時対応をしていた救命センターは完全にキャパシティをオーバーしていたように思う。
「あの……もう、詫びはいらないと言われましたけど……お手数をお掛けして申し訳ありませんでした。こんなに遅い時間まで残っていただいて……」
対数時間前までは蜂の巣をつついたような慌ただしさだった処置室は、今はすっかり静かだ。
「このくらいなら大丈夫よ。重症者はいなかったから重い手術なんかもなかったしね」
首を回しながら絹井先生が笑った。
「こっちはどんどん外来に割り振りができたから、人数の割には楽だったかしら。重症患者の手術の方がよっぽど疲れるわ。あ、言っておくけど、友利君の頭の手術だってね、なんだかんだで3時間だから」
「……申し訳ありません」
「いいのよ。これに懲りて、ちょっとは大人しくしててちょうだい」
ひとえに私の不徳といたすところではあります。ごめんなさい。
いや、もちろん優しくはしてくれる。
白衣の天使なんて言われるのがよくわかるレベルで、忙しいにもかかわらず笑顔で対応してくれるのだが、その状況が、非常に厳しいのだ。私たちにとって。
「相談員さん守って怪我したと思ったら、今度は院外に脱走した子供を追いかけたんだって? 体を張って頑張るのもいいけど、こっちがやれることにも限界があるから、程々にね」
脳神経外科の絹井先生からはそう呆れられ、
「傷、開いても入院まで行かなくてよかったですね。今、病棟満室だからウッカリしたら他院に行かないといけなくなってましたよ」
などと、包帯を巻いてくれた看護師から言われ、
「こんなに血がにじんでるのに痛いと思わなかったの? ――あらやだ、血圧182じゃない。精神的なテンションはあげてもいいけど、血圧的なテンションはあげないでよ」
と、ベテランの看護師からは医療ギャグを言われた。
高血圧のことを、英語でハイパーテンションとも言うからだ。
それよりも待て。
182はあまりにも高すぎないか?
健診で140以上になると、再検診のお便りが入る。明らかに、はるかにオーバーした数字だぞ。
数字を見たとたんに目が回りそうになった。
「あー友利君、心配しなくていいから」
「こんなに血圧高くて、死なないんですか」
「職業病みたいなものよ。人の命を預かる仕事だからね。どのポジションにいても精神的な負担は大きくなるのよ。わりと200くらいまでは普通じゃない?」
「それ、大丈夫なんですか?」
「リラックスしてる時に低ければ大丈夫よ」
それにしても……と、時計を横目で見た。
現時刻は20時を回っている。
私の症状は急を要しないと判断されたので、学校の事故関係者の診察の後に続けて行われた。
パートの看護師も事務員もみな帰宅している。
通常の外来対応時間は終了し、現在は当直時間帯だ。にもかかわらず、事故対応のために多くのスタッフがのこっている。
救急の受付にも、委託職員のエリアマネージャーがフォローに入るなど、通常の倍の人員で対応しているが、それでも回らないところもある。
特に今日一日、事故の一時対応をしていた救命センターは完全にキャパシティをオーバーしていたように思う。
「あの……もう、詫びはいらないと言われましたけど……お手数をお掛けして申し訳ありませんでした。こんなに遅い時間まで残っていただいて……」
対数時間前までは蜂の巣をつついたような慌ただしさだった処置室は、今はすっかり静かだ。
「このくらいなら大丈夫よ。重症者はいなかったから重い手術なんかもなかったしね」
首を回しながら絹井先生が笑った。
「こっちはどんどん外来に割り振りができたから、人数の割には楽だったかしら。重症患者の手術の方がよっぽど疲れるわ。あ、言っておくけど、友利君の頭の手術だってね、なんだかんだで3時間だから」
「……申し訳ありません」
「いいのよ。これに懲りて、ちょっとは大人しくしててちょうだい」
ひとえに私の不徳といたすところではあります。ごめんなさい。
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