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幼少期編
関係進展
しおりを挟むその日は、襲撃の騒動で面倒なことが色々とあったため、屋敷に泊まった。
そして翌日の今日。
俺、リリナ、カレン、クルスさんの四人は一室に集まっていた。
別に部屋は何処でも良いのだが、リリナとカレンの意見で俺が泊まっていた部屋になっている。
クルスさんが、俺に対して切り出した。
「それで、リュウ殿。これは貴族としての質問であり、ただの興味本意では済まされないことだ。そして、これを拒否した場合には、貴族としての保護は望めなくなる」
「はい」
俺は、ただ一言、そう返した。
「では聞こう。リュウ殿、貴方は何者だ?」
「ただの村人ですよ」
「貴方が”ただの”村人ではないことは知っている。前から思っていたのだ。貴方が使う魔法は多彩過ぎる」
まあ、魔法を使うことに関しては自重なんてしないからな。
なにせ、そんなことをして俺の人生を費やすわけにはいかない。
一瞬で終わらせて、片付けて、快適な暮らしをするのだ。
「・・・・・・・では、質問を変えよう。貴方の魔力適正は何だ?」
「・・・・・・・・複製です」
俺の返答に、クルスさんは眉を潜めた。
しかし、俺の返答は何一つ間違っていない。
”俺”の適正は複製であり、ほかのものはそれによって齎されたものでしかないのだ。
それと同様に、神力は”前世”の俺のものだ。
今の俺とは違うものである。
まあ、かなり無理矢理な解釈だが、少しは辻褄も合う。
「複製という魔法の効果は?」
「・・・・・・・・これを知るという事は、王国、いや、世界に対する危険性を知ることになりますよ?」
「それ程重いとは思わなかったのだが・・・・・・・・まあ良い。どちらにしろ、貴方は私の義息子なのだ」
「はぁ・・・・・・・・では、説明しますよ?複製の効果は<対象を読み取り、自身に与える>です」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!!?」
暫く考えていたようだが、ある可能性に至ったクルスさんは驚いた顔をした。
まあ、確かにこの能力は規格外だろう。
「それは、魔力適正、しいてはスキルも、なのか?」
「ええ」
「「!?」」
今まで黙っていたカレンも、驚愕したように目を見開いた。
リリナは、既に知っているために驚きは少ない。
何よりも、俺の自慢がしたいのか、逆に威張っているようにも見える。
「・・・・・・・・・そう、か。確かに、それは世界に対する危険性だ」
「分かりましたか?」
「ああ。だが、貴方はカレンの婚約者だ。王国に裏切ることはしないでしょう?」
「もちろん」
そう俺が答えると、クルスさんは満足そうに頷いた。
信頼されていると感じると、どこか気恥ずかしいものを感じるな。
そう考えながら、俺は笑みを浮かべた。
若干、リリナがカレンに嫉妬している気がするのは何故だろうか。
まあ、きっとそれも何時かは分かるはずだ。
俺は、クルスさんを見ながらそう思った。
「そういえばリュウ殿。貴方は明日、王宮に呼ばれてますから」
「・・・・・・・・・・はあああぁぁぁぁ!?」
クルスさんの爆弾発言を最後に、この集まりは終わった。
最後には、全員が笑顔を浮かべており、それが最も幸せな時間であった。
◇◆◇◆◇◆◇
「やだよ~」
「子供みたいに言わない!!リュウの所為で私も王宮に招かれてるんだからね!?」
「カレンは良いじゃないか!!俺なんて国王と対談するんだよ!?」
「分かってる!?私は義姉上と一緒にお茶会なのよ!?」
「「そっちの方が楽だ(よ)!!」」
翌朝、俺とカレンは庭で戯れていた。
カレンは本気で言っているようだが、俺にとっては戯れだ。
なにより、何だかカレンも嬉しそうなのである。
「リュウ殿、カレン、行くぞ」
「わかりました」
「わかったわよ!!」
そこへ、クルスさんの声が掛かったので、王宮に向けての馬車に出発だ。
今回は、リリナはお留守番だが、なんとか頑張ってもらうしかない。
せめて、泣いたりしないことを祈るばかりだ。
頬を膨らませるカレンの手を握り、俺は歩き始めた。
「なっ!?」
一瞬驚いた様子のカレンだが、次第に大人しくなった。
頬を赤らめてそっぽを向いている姿は可愛い。
「ふん!貴方は気楽そうね!?」
恥ずかしいのか、カレンはそう言ってきた。
しかし、俺には本心の秘策があるのだ。
俺は、満面の笑みで、本心から告げた。
「まあね。だって、カレンと一緒なんだから」
「はぅっ!!・・・・・・・・・」
真っ赤になったカレンに対して、俺の頬も少し赤くなった。
やっぱり、こう言うのは恥ずかしい。
しかし、カレンは俺の手を握り返してくれた。
その事に顔をさらに赤くする俺だが、それでも嬉しいものだ。
「二人とも。流石のラブラブさだな」
「「!!??」」
急に背後からそう言われて、俺とカレンは一瞬で手を離した。
振り返ると、クルスさんがニヤリと笑いながら立っている。
真っ赤になった俺とカレンは、無言で馬車に乗り込んだ。
そこへクルスさんも乗り、馬車は走り出す。
王宮は案外近くにあるので向かうのは楽だ。
馬車に揺られる中、俺とカレンは真っ赤なまま俯いたままだった。
やがて、耐えられなくなったカレンと俺は、同時に顔を上げた。
そして、視線が合った。
一瞬驚いた俺だが、カレンも驚いたようで、目を見開いている。
しかし、二人でフッ、と笑みを浮かべた。
なんだか、少し馬鹿らしく思ったのだ。
「なんだ。何時の間にこんなに甘い空間をつくれるようになったのだ?」
なんだか、酷く愉快そうな顔で、クルスさんがそう告げた。
まあ、俺自身も此処までカレンを愛おしく思うとは思ってもいなかったよ。
暫く進むと、遠目に大きな城が見えてきた。
____王宮だ。
この場所の近くは、貴族街となっており、クルスさんが管轄しているらしい。
ちなみに、昨日知ったのだが、クルスさんは公爵様らしい。
俺は、その娘と婚約することになったのだ。
なんだか少し恐々とするが、まあでも地位に恋は関係無いだろう。
王宮の前の門に辿り着くと、兵士がやって来たが、クルスさんが何かを渡した。
それを確認した兵士はその場を退き、馬車は進み始める。
門の中は、屋敷に負けないくらいの広大な庭があり、そこで騎士や兵士が訓練をしていた。
立派な鎧を着込んだ騎士達は、統一された動きで剣を振り、槍で突き刺している。
やはり、王宮ともなれば訓練も洗練された動きになるようだ。
しかし、それでも弱く感じる五歳児は俺だけだろう。
騎士達の中から、有用そうな魔力適正を探すと、一つだけあったので貰った。
【複製により、”雷剣”を取得しました】
複製したのは、相手に気付かれないのは本当に嬉しい。
馬車はそのまま庭を進み、王宮の扉の前で止まった。
立派な扉はかなり大きく、俺が何人手を繋いで通れるか分からない。
その扉が、ゆっくりと開いた。
馬車から降りた俺達は、そのまま扉を通った。
すると、勝手に扉は閉まり、俺を驚愕させた。
中の造りは長い廊下とその両端に扉、とシンプルになっている。
そんな中を、クルスさんは一直線に進む。
目的の場所は謁見の間、そこで、国王と対談するのだ。
カレンは、途中の道を曲がって行った。
確か、お茶会の予定だったはずだ。
俺とクルスさんは暫く進むと一つの扉の前で止まった。
「公爵家当主クルストフィアと、リュウ・シルバー二名、国王陛下の招待により参上いたしました」
「入れ」
「失礼します!」
何時もと雰囲気が反転したクルスさんは慣れた手付きで扉を開けて中に入った。
俺も続くと、そこは大きな広間に似ていた。
かなり前の方に階段があり、その上に椅子があり、そして男性が座っている。
その隣に女性が一人立っていて、それから俺を囲むように大人、恐らく貴族だろう者達が並んでいる。
その全員が、俺に視線を向けている。
そこから感じられる感情は様々だ。
嫉妬、疑惑、困惑、驚愕、軽蔑、その中でも、国王陛下により嬉々とした感情が強い。
何故、と思うのは俺だけのようで、他の者や気にしていないようだ。
こうして、謁見の間にて謁見が始まろうとしていた。
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