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第六章 皇帝の血筋
6-10 ナギサイド
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翌朝の宿屋。
ルナはカチュアが壊した大剣を見ながらため息をついた。
「で! また、剣を壊したんですね」
「今回も、私の力で壊していないんだからね~」
「隠し持っていたナイフが何本か、あなたの、バカ力で壊しているんだけど」
壊れた大剣の横には、使い物にならなくなった、ナイフが何十本も置かれていた。
幾ら、カチュアの胸が大きいからって、何十本を胸の谷間に隠していたなんて。どんだけ、入るんだよ! その谷間に!
「しかし、暗殺ですか。誰の仕業なんでしょう?」
「おおよそだが、予想はできるが、それはこっちで、調べておこう」
マリンを連れ帰った、アルヴスが部屋に入ってきた。
「それにしても、まさか、闘技が使えるとは予想外でしたね」
「ルナはカチュアがヴァルキュリア族と言う亜種だってことに気づいていたのか?」
カチュアではなく、私がルナに尋ねた。
「始めはカチュアさんの、魔術と勇能力を使わない戦いを、見ていたら何かしらの亜種だと思いました。しかし、戦っている姿や、カチュアさんの容姿と比べたら、伝説の存在とも言える、ヴァルキュリア族の可能性が出てきました」
「容姿?」
「翼や獣の耳など外見的な特徴を持つ亜種とは違い、ヴァルキュリア族は人間とは見分けが付けない。ただ、ヴァルキュリア族は人間と比べ戦闘力が高く、髪と瞳の色が同じという特徴を持つとも言えます」
確かに、カチュアの髪と瞳の色は同じ蒼色か……。
「ヴァルキュリア族は女性しかいないと言われています。子孫を残すには他種の交際で子を産みますが、ヴァルキュリア族からはヴァルキュリア族の女の子しか生まれないのです」
「ヴァルキュリア族の戦闘力の高さは子を守るためと言われているんだ。彼女たちは戦いを好まないだから、本来は人里離れたところで暮らすんだ」
一見、人間と容姿が似ていて、人里から離れて暮らす。ある意味、伝説の存在か。
「確か、ヴァルキュリア族は負の気を嫌っていて、負の気に侵されると死ぬと言われています」
「ん~。よく、分からないんだよ」
「まあ、負の概念は難しいな」
「ルナはヴァルキュリア族のことよりも、蒼い炎のことがきになります」
「ルナやシグマ様から聞かされた時は驚いたな。嬢ちゃんが蒼い炎を纏うなんて」
「カチュア、カッコよかったんだよ!」
「どのような効果なのかは、まだ断言できないですが、魔物の体を通したり、魔術を打ち消すことができますのよ」
「そう……」
ルナが黙り込んだ。
「どうしたんですか?」
エドナが声を掛けると、ルナがハッとして。
「なんでもないです。ヴァルキュリア族や蒼い炎の話はここまでにして、ナギさんのことね」
何か、歯切れが悪かったような。……気のせいかな?
「何か、手かがりを見つけたのか?」
「まだ、そこまでは。ただ、蒼炎伝説時代を調べてみたら色々ありました」
歴史の授業が始まりそうな勢いだ。
「その時代は魔物化が頻繁にあったそうです」
魔物化。ヴァルダンが使っていた、まるで生き物亡骸で作られたような武器を使っていた連中が、魔物になった現象か。
「でも、魔石を魔道具として、使わなかったら、魔物化のリスクはあるのでは? 魔石は直接触れると毒ですのよ」
「だけど、その魔石を使わなくっても、魔物化していたそうです。その進行防止を努めたのが、メリオダスです」
メリオダス。元は魔術研究員だっけ? のちに厄災と呼ばれる存在になった。
「魔物化する前は、もがいたりと症状はあったようです。後は仮に魔物化しでも、人としての自覚が残ったりと、個々に症状は異なったりします」
「メリオダスは始め、コールドスリープさせて魔物化進行を止めようとしましたが、魔物化してしまいました。次の対処方法が重要です」
「体から魂を抜く方法です」
何か、オカルトが混ざった、生物の授業見たいだ。
……オカルトって、何?
「仮に体が魔物化しても、別の体に移せば、本体は魔物化しても、別体では、魔物としての体ではなくなります。魂の器となる人形を開発も進めていました。当時、まだ、未完成だったため、動物の死骸に魂を入れていたそうです」
「ただ、問題があった。それは仮の器に移転しても、魔物化してしまったんです」
「でも、どうしてなんでしょう?」
「メリオダスが言うには、魔物化進行の原因となるものが身体ではなく、魂に刻まれるのではないかと」
「じゃあ、別の器に移しても」
「魔物化は防げない。次の手段としては、封印術」
「封印術は確か、対処を閉じ込め、時間を止めるもの」
「そう、時間を止めれば、魔物化進行を止められる。それで時間稼ぎにはなりました」
「なるほど、時間を止めている間に、魔物化進行の原因の追求か」
「つまり、ナギさんはその魂を抜く術を使ったのね」
「もしかしたら、目覚める前までは封印術で眠らされていたかもしれない」
「じゃあ、カチュアから引き離すにはその魂を抜く術をしないとか。どうやるの?」
「それはまだ……」
「それに、カチュアさんから抜け出したとして、器はどうするんですか?」
そうだよね。そもそも、私の体って、あるの? もう、腐敗しているんじゃ。
「さっき、話に出ていた人形を使うのはどお~?」
さっきまで、会話に入らず、ウトウトしていた、カチュアが提案を出したよ。
「普通の人形じゃダメですね。そんな人形が作れるとしたら、小人族だろうな」
「その人たちはどこにいるんですか?」
「わからない。過去に彼らの国が存在していたみたいだけど、今はないわ。ヴァルキュリア族同様に人里離れたところで暮らしているわ」
「じゃあ、探す?」
「手かがりはないですよ。それに見つかったとしても、器代わりの人形を作れる保証はないですよ」
「でも~、合うだけあってみましょ~」
まあ、できないという断言はないからな。
「それもそうですが、ルナはまだ調べ物しないとだから、今すぐ行けません」
「ソフィアさんも先程手紙が来て、しばらく、セシル王国にいないと行けなくなりました」
「ユミル様は帰らないのですか?」
「わたくしはまだカチュアさんと居たいので。それに、ソフィアさんから王宮はしばらく、赤く染まりそうだからとセシル王国に戻らない方がいいと言われましたわ」
あのー。ソフィアさん、貴方、セシル王国に何しに戻るんですか?
となると、ルナとソフィア抜きの小人族探しか。比較的常識人のルナがいないのは不安だな。ソフィアは姫さまに使用人ということだけあって、面倒見はいい。正直、カチュアに、エドナに、ユミルの三人で大丈夫なのか?
「なら、妾が付いて行こう」
王宮に戻ったはずの、マリンが窓から入ってきた。
死に関わる毒を受けたにも関わらず、ピンピンとしている。
てか、ここ、大きな宿屋のことだけあって、階もそれなりにある。今いる部屋だって、四階もあるよ。どうやって、登ったんだ?
「出たな! ストーカー皇女!」
「連絡のやり取りはポッポを使うといい」
警戒している、ルナをスルーして話を進めているよ。
「聞けよ!」
「ポッポって~?」
「連絡鳥だ。手紙など、届けたい相手のところまで、飛んで届ける不思議な鳥だ」
都合いい鳥もいたものだ。
「あの~、皇女様。あなたが、王宮から離れたら皇帝様が心配するのではありませんですか?」
「案ずるな、妾が一か月居なくなって、気づかなかっし」
仮にも父親だよね? その人。てか、あんた、存在を忘れられてたみたいで、それでいいのか? てか、さっきまで、暗殺者に命狙われていなかったけ?
「と言うわけで、妾はしばらくカチュアたちに同行しよう」
強引だな。
「皇女様はご自身の家へ帰ったら」
「良いじゃ、ねぇか」
二人の言い合いが始まった。
「仲がいいな、二人は」
「そうね~」
「ほんとなんだよ」
ユミルは怯えている一方、呑気に眺めている三人。いや、カチュアとエドナはともかく、アルヴスまで何に呑気にしているんだよ!
「そういえば、マリンはアルヴスを兄として、扱っているみたいだが、あんた自身、兄と呼ばれて、どうなんだ?」
表に出して、アルヴスを尋ねる。
「まあ、兄と言われるほど、信頼されているってことですか?」
「あーそー」
マリンが「満更でもない」と言っていたが、確かにそうだ。
「それに、寂しさを紛らませているかもしれないな。自分の家族はかなり問題がある。温かな家族を夢見ているかもな」
ルナはカチュアが壊した大剣を見ながらため息をついた。
「で! また、剣を壊したんですね」
「今回も、私の力で壊していないんだからね~」
「隠し持っていたナイフが何本か、あなたの、バカ力で壊しているんだけど」
壊れた大剣の横には、使い物にならなくなった、ナイフが何十本も置かれていた。
幾ら、カチュアの胸が大きいからって、何十本を胸の谷間に隠していたなんて。どんだけ、入るんだよ! その谷間に!
「しかし、暗殺ですか。誰の仕業なんでしょう?」
「おおよそだが、予想はできるが、それはこっちで、調べておこう」
マリンを連れ帰った、アルヴスが部屋に入ってきた。
「それにしても、まさか、闘技が使えるとは予想外でしたね」
「ルナはカチュアがヴァルキュリア族と言う亜種だってことに気づいていたのか?」
カチュアではなく、私がルナに尋ねた。
「始めはカチュアさんの、魔術と勇能力を使わない戦いを、見ていたら何かしらの亜種だと思いました。しかし、戦っている姿や、カチュアさんの容姿と比べたら、伝説の存在とも言える、ヴァルキュリア族の可能性が出てきました」
「容姿?」
「翼や獣の耳など外見的な特徴を持つ亜種とは違い、ヴァルキュリア族は人間とは見分けが付けない。ただ、ヴァルキュリア族は人間と比べ戦闘力が高く、髪と瞳の色が同じという特徴を持つとも言えます」
確かに、カチュアの髪と瞳の色は同じ蒼色か……。
「ヴァルキュリア族は女性しかいないと言われています。子孫を残すには他種の交際で子を産みますが、ヴァルキュリア族からはヴァルキュリア族の女の子しか生まれないのです」
「ヴァルキュリア族の戦闘力の高さは子を守るためと言われているんだ。彼女たちは戦いを好まないだから、本来は人里離れたところで暮らすんだ」
一見、人間と容姿が似ていて、人里から離れて暮らす。ある意味、伝説の存在か。
「確か、ヴァルキュリア族は負の気を嫌っていて、負の気に侵されると死ぬと言われています」
「ん~。よく、分からないんだよ」
「まあ、負の概念は難しいな」
「ルナはヴァルキュリア族のことよりも、蒼い炎のことがきになります」
「ルナやシグマ様から聞かされた時は驚いたな。嬢ちゃんが蒼い炎を纏うなんて」
「カチュア、カッコよかったんだよ!」
「どのような効果なのかは、まだ断言できないですが、魔物の体を通したり、魔術を打ち消すことができますのよ」
「そう……」
ルナが黙り込んだ。
「どうしたんですか?」
エドナが声を掛けると、ルナがハッとして。
「なんでもないです。ヴァルキュリア族や蒼い炎の話はここまでにして、ナギさんのことね」
何か、歯切れが悪かったような。……気のせいかな?
「何か、手かがりを見つけたのか?」
「まだ、そこまでは。ただ、蒼炎伝説時代を調べてみたら色々ありました」
歴史の授業が始まりそうな勢いだ。
「その時代は魔物化が頻繁にあったそうです」
魔物化。ヴァルダンが使っていた、まるで生き物亡骸で作られたような武器を使っていた連中が、魔物になった現象か。
「でも、魔石を魔道具として、使わなかったら、魔物化のリスクはあるのでは? 魔石は直接触れると毒ですのよ」
「だけど、その魔石を使わなくっても、魔物化していたそうです。その進行防止を努めたのが、メリオダスです」
メリオダス。元は魔術研究員だっけ? のちに厄災と呼ばれる存在になった。
「魔物化する前は、もがいたりと症状はあったようです。後は仮に魔物化しでも、人としての自覚が残ったりと、個々に症状は異なったりします」
「メリオダスは始め、コールドスリープさせて魔物化進行を止めようとしましたが、魔物化してしまいました。次の対処方法が重要です」
「体から魂を抜く方法です」
何か、オカルトが混ざった、生物の授業見たいだ。
……オカルトって、何?
「仮に体が魔物化しても、別の体に移せば、本体は魔物化しても、別体では、魔物としての体ではなくなります。魂の器となる人形を開発も進めていました。当時、まだ、未完成だったため、動物の死骸に魂を入れていたそうです」
「ただ、問題があった。それは仮の器に移転しても、魔物化してしまったんです」
「でも、どうしてなんでしょう?」
「メリオダスが言うには、魔物化進行の原因となるものが身体ではなく、魂に刻まれるのではないかと」
「じゃあ、別の器に移しても」
「魔物化は防げない。次の手段としては、封印術」
「封印術は確か、対処を閉じ込め、時間を止めるもの」
「そう、時間を止めれば、魔物化進行を止められる。それで時間稼ぎにはなりました」
「なるほど、時間を止めている間に、魔物化進行の原因の追求か」
「つまり、ナギさんはその魂を抜く術を使ったのね」
「もしかしたら、目覚める前までは封印術で眠らされていたかもしれない」
「じゃあ、カチュアから引き離すにはその魂を抜く術をしないとか。どうやるの?」
「それはまだ……」
「それに、カチュアさんから抜け出したとして、器はどうするんですか?」
そうだよね。そもそも、私の体って、あるの? もう、腐敗しているんじゃ。
「さっき、話に出ていた人形を使うのはどお~?」
さっきまで、会話に入らず、ウトウトしていた、カチュアが提案を出したよ。
「普通の人形じゃダメですね。そんな人形が作れるとしたら、小人族だろうな」
「その人たちはどこにいるんですか?」
「わからない。過去に彼らの国が存在していたみたいだけど、今はないわ。ヴァルキュリア族同様に人里離れたところで暮らしているわ」
「じゃあ、探す?」
「手かがりはないですよ。それに見つかったとしても、器代わりの人形を作れる保証はないですよ」
「でも~、合うだけあってみましょ~」
まあ、できないという断言はないからな。
「それもそうですが、ルナはまだ調べ物しないとだから、今すぐ行けません」
「ソフィアさんも先程手紙が来て、しばらく、セシル王国にいないと行けなくなりました」
「ユミル様は帰らないのですか?」
「わたくしはまだカチュアさんと居たいので。それに、ソフィアさんから王宮はしばらく、赤く染まりそうだからとセシル王国に戻らない方がいいと言われましたわ」
あのー。ソフィアさん、貴方、セシル王国に何しに戻るんですか?
となると、ルナとソフィア抜きの小人族探しか。比較的常識人のルナがいないのは不安だな。ソフィアは姫さまに使用人ということだけあって、面倒見はいい。正直、カチュアに、エドナに、ユミルの三人で大丈夫なのか?
「なら、妾が付いて行こう」
王宮に戻ったはずの、マリンが窓から入ってきた。
死に関わる毒を受けたにも関わらず、ピンピンとしている。
てか、ここ、大きな宿屋のことだけあって、階もそれなりにある。今いる部屋だって、四階もあるよ。どうやって、登ったんだ?
「出たな! ストーカー皇女!」
「連絡のやり取りはポッポを使うといい」
警戒している、ルナをスルーして話を進めているよ。
「聞けよ!」
「ポッポって~?」
「連絡鳥だ。手紙など、届けたい相手のところまで、飛んで届ける不思議な鳥だ」
都合いい鳥もいたものだ。
「あの~、皇女様。あなたが、王宮から離れたら皇帝様が心配するのではありませんですか?」
「案ずるな、妾が一か月居なくなって、気づかなかっし」
仮にも父親だよね? その人。てか、あんた、存在を忘れられてたみたいで、それでいいのか? てか、さっきまで、暗殺者に命狙われていなかったけ?
「と言うわけで、妾はしばらくカチュアたちに同行しよう」
強引だな。
「皇女様はご自身の家へ帰ったら」
「良いじゃ、ねぇか」
二人の言い合いが始まった。
「仲がいいな、二人は」
「そうね~」
「ほんとなんだよ」
ユミルは怯えている一方、呑気に眺めている三人。いや、カチュアとエドナはともかく、アルヴスまで何に呑気にしているんだよ!
「そういえば、マリンはアルヴスを兄として、扱っているみたいだが、あんた自身、兄と呼ばれて、どうなんだ?」
表に出して、アルヴスを尋ねる。
「まあ、兄と言われるほど、信頼されているってことですか?」
「あーそー」
マリンが「満更でもない」と言っていたが、確かにそうだ。
「それに、寂しさを紛らませているかもしれないな。自分の家族はかなり問題がある。温かな家族を夢見ているかもな」
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