蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

文字の大きさ
上 下
179 / 320
第十二章 私の名は

12ー11 ナギサイド

しおりを挟む
 運命のあの日。そう、仲間のヒスイが、同じ仲間のバルンクに殺された、あの日。



「どうして?」

 私とティアの目の前には、血塗れのバルンクの姿があった。そして、その隣には首がない死体があった。

「ティア! どうしてだ? どうして、こんな男と?」

 バルンクとの間には、生首があった。その素顔は、私達がよく知る者だった。
 
「ヒスイ!」

 その生首はヒスイのだった。

 ヒスイの死体へ駆け寄ろうとした、ティアを制止。

「ティア! ヒスイはもう……」
「そんな!」
「……何で、ヒスイを殺した!?」

 殺した張本人のバルンクに問いただす。

「俺よりも、力がないくせに、俺の手に入れなかったものを、手に入れやがって。だが、ヒスイは死んだ。これで、ティアは俺のものだ」

 バルンクが一歩ずつティアに近づくたび、ティアは反対方向へ一歩ずつ下がっていく。

「ティア、君は幸せにする。だから、ヒスイのことは……」
「いやあああ!!! 来ないで!!」
「ティア?」
「あなたは、自分が、思い通りにならなきゃ、邪魔の人を殺すの? そんな人と、恋人になるのは無理よ!」

 バルンクは下を向いた。そして。

「……何でだよ?」
「え?」
「何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、何で、あいつばかり!!!」

 発狂し始めた。

「なんで、お前は俺のものに、ならないんだよ! この世界を救ったのは俺なんだ!」

 自分勝手の振る舞いをするバルンクに対し、私は。

「一人で、世界を救った気になるな! お前は、確かに、厄災を倒した。いや、トドメを刺しただけだ! ヒスイのサポーターがなければ、あんたは死んでいたんだ!」
「るぅせぇよよよ!!!    こうなったら、俺のものになるまで、いた振って、やるよぉぉぉぉ!!!」
「させるかぁ!!! ティアに指一本触れさせない!」

 私は勇能力の最終技、覚醒を使用した。

「サリナちゃん待って! あなたは、具合悪い見たいだわ! そんな、あなたを戦わせたくないわ!」

 やはり、気づかれていたか。確かに、私の体には、異常がある。だが、それでも……。

「ティア、ごめん。どうか……あなただけでも」

 こうして、私は、勝っても負けても、人として生きられなくなる戦いに挑んだ。

「やめて―――!!!」



第十二章 私の名は 完

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

病んでる僕は、

BL / 連載中 24h.ポイント:1,249pt お気に入り:453

ノー・ウォリーズ

BL / 完結 24h.ポイント:873pt お気に入り:5

妹に婚約者を奪われましたが今は幸せです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:51,355pt お気に入り:2,074

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:2,808

純愛パズル

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:844pt お気に入り:0

【完結】レイの弾丸

BL / 連載中 24h.ポイント:2,009pt お気に入り:344

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

BL / 連載中 24h.ポイント:22,414pt お気に入り:2,774

救国の勇者は末の亡霊姫をご所望です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:34

「君は保留だった」らしいです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,724

処理中です...