蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

文字の大きさ
上 下
213 / 316
第十五章 軍神

15-2 ナギサイド

しおりを挟む
 逃走劇から翌朝。

 疲れ切った私達は、ダグザに着いて、すぐにレオの部屋で一晩過ごした。

 それにしても、レオの部屋広いな。七人が寝ても、まだ余裕あるぐらいだ。しかも、本棚もあるし。本棚に置いてあるのは歌劇とか、歌に関する書物ばかりだな。

 レオは面倒臭がり屋だけど、歌を歌うのが好きらしい。よく歌っているが、レオの歌う歌はやる気が失われてしまう。

 ぐぅ~~~。

「お腹すいたわ」

 腹の虫がなると、ようやく起きたカチュア。もう、お昼ごろなんだけどね。

「ダグザ王に謁見する前に、寝てしまった。レオ、取り敢えずダグザ王に会いたいんだが」
「それはいいけど、いい加減耳を触るのはやめてくれないか?」

 メリアがレオの耳を揉んでいた。指摘されてすぐに手を離した

「あ! ごめん、可愛い耳だったから、つい!」
「はぁ~。全く! 暑苦しい、スキンシップはあたしの家族だけにでも、メンドクセーのに」

 そう言えば、メリアって動物好きなんだっけ? 獣の特徴を持った、獣人族も対象なのか。

「それよりも、この国の王に、まだ挨拶していなから、会いたいのだが」

 マリンが申し出ると。

「あぁ……」

 滅茶苦茶、嫌な顔しているよ。この国の王ということは、レオの親だろ? それなのに、そんな嫌な顔するなんて。

「何の音かしら~」

 カチュアが耳を立てた。特に、音何て聴こえないんだが。カチュアが聴力がいいから、遠くの音まで聴こえることがある。まさか、城の外から聴こえたものではないよね?

 ドドドドドドドドド!!!

 段々の聞こえてきた。これがカチュアの聴きとれた音かな? でも、この音って、走った時に、足場に着くたびに響いてくる音だな。誰か駆け足でこっちに来るのか? 
 
 バーーーン!!!

「レオォォォォォ! 戻っきかあああ!!!」

 突然、部屋の扉が開いた。入ってきたのは、顔を隠した不審者だった。まあ、隠しているのは、覆面とかではない。

「親父! つい此間、帰ってきた、ばかりだろ! 後、毛が口に入るから、くっつくな! 暑苦しいだろ! くっついたら、熱中症になるだろ! 毛を切れ!」
「いや~。切っても、翌日になると元に戻るから、切るのが面倒なんだ」

 顔を隠した不審はどうやら、レオの父親みたいだで、部屋に入ってくるなり、レオを抱きかかえた。ダグザは暑い国だから、レオが暑苦しそうだ。

 にしても、毛が伸びすぎだな。髪の毛、髭、眉毛と、あらゆる、毛が伸びすぎて、顔が全く見えない。長老キャラよりも伸びているんじゃないのか? レオは獅子の獣人族なら、その父親も獅子の獣人族か。雄の大人獅子はたてがみがある。獣人族も例外ではないから、同じようにたてがみが伸びている……レベルじゃないなこれ。

 にしても、滅茶苦茶、嫌顔しているなレオ。

「父上! 客人もいるのですから、突然入るのは失礼ではありませんか!」

 また誰か入ってきた。

「兄貴か! 取り敢えず、この色違いの毬藻まりも親父をどうにかしてくれよ」

 兄貴って呼んでいた、この人がレオの兄か。確か、次期王になるんだよな。次期獣人族の王になることあって、ガタイはいいな。体つきだけなら。問題は顔なんだ、何その顔のパーツは? どこかのマスコットキャラですか? 完全にその顔で、王の威厳がなくなっているんだよ。

「全く、父上はデリカシーがないのですから。レオの部屋に断りもなく入るなんて」

 お前も人のこと言えないんだけどな。

「全く、スキンシップなら父上ではなく、私がやって置きますので」

 こちはこっちはシスコンかよ。いや、兄の方も、顔はマスコット見ないな顔つきだけど、体つきは筋肉だるまだから、暑苦しいのに変わりないから。

「嫌じゃ! 誰にもレオは渡さんのじゃ!」

 駄々をこねる始めたよ。

「いい年下おっさんが、乙女の部屋で駄々をこねるんじゃありませんよ!!!」

 また、誰か入ってきたよ。しかも、飛び蹴りしながら。

 ドーーーン!!!

「ぐほぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 レオの父親に命中した。

 今度は女性のようだが。この女性は恐らく。

「母さんか。面倒な人が入ってきたな」

 やはり、レオの母親か。

 背丈だけなら、このガタイのいい王と王子よりかは、高い。というよりか、足長い! 体の三分の二が足で、できているのでは? ……でも、胸元は寂しいんだよな。レオは割とあるのに。父親側の遺伝か?

 てか、こんなガタイのいい家族の中、レオだけ、小さいな。

「おいおい、カイ! 蹴りはやめてくれよ! お前が本気で蹴りなんてしたら対象を粉砕してしまうじゃないか!?」

 シャレにならないね。てか、そんな可能性もある蹴りを喰らっても、無事でいられる、レオの父親もただ物じゃないってことかよ。

「何邪魔しているんだ。折角戻ってくれたレオと親交」
「何を言っているのですか? わたくしだって、レオの母親ですよ」
「溺愛するのは、私の使命ですよ」

 何か、言い争っているな。そう言えば、レオの取り合いで、国全体を巻き込んだ家族喧嘩をしていたんだっけ?

 あれ? 気のせいか? この部屋、暑くなってきているような。

「あああああああ」

 レオが不気味な唸り声を出し始めた。それに、全身から、燃えているものが出ているような。レオ手には本を持っていた。表示が若干敗れている。それは本棚に置いてあった本だ。よく見たら、本棚が倒れている。さっき、レオの父親を吹き飛ばしたときに、本棚に当たって倒したみたいだ。その時に、本の表紙が破れたみたいだ。ということは……。

「テメェーら、争うなら、外でしやがれーーーーーー!!!」

 ボボボボボボボボボボ!!!

 レオの両手をくっつけ、その間から、直線に炎の光線を放った。

「のわわわわわわ!!!」「ぐわわわわわわ!!!」「ぎゃああああああ!!!」

 炎の光線は三人を飲み込み、部屋の扉ごと壊した。

「わわわわわわわ!!!」

 怒り狂った、レオを見て、マリンとメリアとミラが怯えている。私も、もう啞然としている。

 これが、大切な本を破かれた恨みか。

「ところで、お腹すいたわ~」
「あたしもなんだよ! 昨日から何も食べていないから、お腹すいたんだよ!」

 この状況で呑気なこと言っている場合か! 全く、ブレないな! この二人は。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:788pt お気に入り:1

あなたの世界で、僕は。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,698pt お気に入り:54

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,678pt お気に入り:1,465

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,396pt お気に入り:1,713

【本編完結】旦那様、離婚してくださいませ!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:915pt お気に入り:5,427

処理中です...